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6. 冬の味覚と命名

本日もよろしくお願いします。

村主との検証のあとで、俺は一人でもいろいろと試したり考えたりしてみた。根拠はないが、なんで俺が球体を出せるのかっていうのは、『俺が偶然にも球体の内部に入ったことがある』ということがトリガーなんだろうなと、かなり強く推測できた。だってほかに原因っぽいものがない以上は、これしか繋がりがイメージできない。


で、もう一つ大事なこと、10秒以内に球体を消す方法があるのかってことを試しに試した。中二病祭り開催のご案内って感じだったが、“Disconnect”がパスワードになっていた。。。いやー、そのまんまじゃん。というかね、なぜ英語?俺のネイティブ言語でもなく、地球上の最大勢力の言語群ではあるけど過半数というわけでもなく。まあいいか、雰囲気ってやつなのかもしれないし。


ここまで来て、結構な回数で球体を出したり消したりしていたら、だんだんコツがわかってきて、かなりのスピードでほぼ思ったところにバシッと出せるようになってきたし、出したり消したりもかなりハイスピードで出来るようになってきた。それになんとなく形も思ったように歪ませることが出来てるような気がする。これはまだ修行と確認が必要だけども。


そんなこんなで球体のことを研究する日々を送っていたら、


「小川さん、アイナメの季節終わっちゃいますよ?」


「・・・すまぬ、週末釣ってくる」


「それ、釣れないフラグじゃないっすか?」


「ば、おまっ、俺の釣り歴どんだけだって話だよ」


「釣り師は大抵そう言いますし、釣り師の話は半分に聞くのが常識っすよ」


「・・・おっしゃる通りでございます」


「じゃ、頑張って釣ってきてくださいよ」


「昆布〆だから、土曜日の早朝に釣って、下処理してから一日寝かせて翌日さばいて昆布で〆るから、日曜の午後くらいなら大丈夫かな」


「じゃあ家まで食べに行きますよ」


「家って俺の?そりゃあんたマズいだろ」


「いやー、アイナメはこの時期絶対美味しいから」


「そーじゃなくてさ、いやーまあいいんだけどさ、あまり誤解されるようなことしてたらめんどくさいよ?」


「いーじゃないっすか、小川さん下心あったとしてもどうせ何もできないっしょ?」


見透かされとる。。。


「あー、じゃあいいよ、ゆっくり目のランチで用意しておくよ」


「あざーっすー」



***********************



「ほんとに釣れたんですね」


「だーから言ったじゃん、俺の釣り歴wo」


「いただきまーす」


「聞けーーー」


まだまだ寒風吹きすさぶなか、アイナメを求めて釣りに行き、しっかり45センチのなかなかの大物をゲットできた。基本的に幸運のなせる業なんだけど、運も実力ってやつだ。土曜日のうちに動画サイトで有名な血抜きをしてから内臓とエラをとって、冷蔵庫で一晩寝かせた。まあ熟成とは根本的に違った状況で、昆布〆にするから新鮮な身のコリコリよりも、味わいを満喫しやすい程よい柔らかさの身に仕上げるという気持ちの一晩だ。どの程度の効果があるのかは非常に心もとないんだけど、そこは気持ちの問題ということで。

寝かせたアイナメをさばいて皮を引いて各所の骨をすいたり抜いたりしてから、酒で戻した利尻昆布で2時間ほど〆た。この時間も好みだ。どうせ素人料理だからいいんだよ。


「あー、これこれ、ちょっとねっとりしててうま味いっぱいのアイナメ、サイコー」


「そりゃ何よりだよ」


クルマで来ている村主は飲めないので、俺は一人でお気に入りの日本酒をグラスに注ぐ。村主がブーたれてるけどいいのだ。魚は肴、日本酒と合わせることは俺にとっての正義だ。今日は〆張鶴の月だ。本醸造で吟醸ではないが雑味もなくやたらと飲みやすい。


「うん、うまく〆ってる。酒と合うね」


「そりゃそうでしょうよ。あーもうお着換え持ってきとけばよかった」


「何言ってんだよ、泊まれるわけないだろが」


「えー、どうせ身の危険なんてないっしょ?」


「ぐぬぬ・・・」


いや、俺はちゃんと健康で健全な男子だよ?そりゃちゃんと欲というものはあるんだけども、なんかやっぱり気が小さいのか、こういうシチュエーションでなかなか無茶なことはできないというか。。。


「まあいいよ、それでさ、球体を出したり消したりできるようになったし、結構上達してきたから、いよいよ実戦でも使えそうになってきたんだよ」


「あのね、実戦ってどこの傭兵っすか?そんなもの、平和なこの国の日常にはないっすよ」


「いやだってさ、チンピラにからまれたりしたら自己防衛できそうじゃん?」


「小川さん今まで生きてきてそんなシーンに遭遇したことあります?」


「あー、ないかも・・・」


この国ではそういうトラブルは避けようと思えばどうにでも避けられてしまうのだ。もっと小さなトラブルならいくらでも転がってるけども。


「まあ、実戦はいいとしてだ、ここまで手馴れてきたらいよいよ球体っていう呼び名を変えてやろうかと思ってさ」


「あー、14歳に戻るんっすね、わかります」


「そういう突き放し方はよくないんだよ、村主さん」


「で、何て呼ぶんっすか?」


「無視かー。ま、いいか。決めてないんだけど、やっぱりちょっと異空間っぽくない?だからさ・・・」


「アナザーディメンジョンとかっすか?」


「そそ、で略してAD」


「なんかずっと家に帰らずにテレビ局で寝起きしてる若者って感じでいいっすね」


「とげとげしいなあ。でもまあ、球体よりはいいんじゃね?」


こうして今日がAD命名の日となった。


冬の時期に書き始めて書き溜めたストックを放出しているのが、文中の季節感にまともに表れているというところが素人丸出しなので、生暖かい目でご覧ください。

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