5. 検証
本日から1話投稿でお願いします。
ストックが大して用意できていないという現実を全身で感じ取ったので、1日1話投稿でしばらく頑張りたいと思います。
「なんでまた“Connect”なんです?」
「いや、単にいろいろと思ってみた中でそれがヒットしたってだけで、根拠なんかないよ」
“ボール” 、“球”だとか“ダークネス”、“闇”だとか“エリア”、“空間”だとかいろいろと試してみたさ。で、ふと次元の裂け目ってことで“クラック”だとか“リップ”だとか“裂け目”だとか言ってみて、その次は“つなげる”とか“リンク”とか言ったんだよな。
で、“Connect”だ。なんでこれだけアルファベットか?そんなもの、14歳の俺に聞いてくれ。
雰囲気は大事なんだ。
「じゃあまあ、とりあえず偶然見つけたってことでいいとしましょう。たいていの発見は偶然ですからね。で、あれを呼び出した?ことで小川さんは何か影響あります?MPごっそり持ってかれたとかw」
「をい、草生えてんじゃねーか。ステータスオープンとか言わないし言っても出てこないし」
「言ってみたんだ、やっぱり」
「そりゃーだってさ、こういうラノベ展開しててステータスと魔法とスキルとエルフのおねーさんは外せないでしょーが」
「エルフのおねーさんはツンデレスレンダーっすよ。ボンキュッボンじゃなくていいんっすか?」
「あー、それなー、そこが難しいところだよなあ。そう考えたらやっぱり外せないのはサキュバスか」
「オスという生き物はシンプルでいいっすね」
「ご理解に感謝する」
「理解してないし感謝されてもうれしくないですー。いいからどうなんです?何か変化あります?」
「うーん、無さそう」
そうなのだ、明らかに明確に目の前に謎球体を出現させたにもかかわらず、俺自身には何も変化がなさそうなのだ。
疲れたとか、命削ったとか(あえてHPとは言わない)、禿げたとか、太ったとか、そういうのがないのだ。
「これ、ノーリスクであんなもの呼び出せるようになっちゃってるんじゃないっすか?なんかすごくないっすか?」
「うん?あれ呼び出せたら何か得かなあ?10秒程度だぜ?」
何言ってんですがバカですか寝てるんですか、と村主にディスられてからかみ砕くように説明された。
「いいですか?ちょっとしたパスワードであんなもの呼び出すって、もうそれだけで既存物理法則を全無視ですよ。しかもノーリスクっぽい。これうまくしたら大儲けできそうじゃないです?」
「えーーー。なんかめんどくさいことはやだなあ。でもちょっとすごそうな気がしてきてはいるよ。あと村主さん、口調がちょっと変わってる」
「そんなのはどうでもいいんですって。しかし、めんどくさいって。。。まあ小川さんっぽいけど、でもあの球体がなんなのか、どういう性質なのかって調べたくなるでしょ?」
「それはめちゃくちゃあるね。純粋に面白そうだなとは思っている。どうだ、いっしょ咬んでみる気はないか?」
「何言ってんですか、私が主管研究担当ですよ」
「・・・そですか、ええ、わかってましたとも・・・」
こうして俺たちは、暗い球体を研究することにした。残念ながらどこの学会にも発表できない、もちろん会社の業績にもあげられない、非常に個人的な研究に過ぎないのだが。
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いろいろと試してみて、わかったことがいくつか。まず球体を呼び出すのに何のリスクもなさそうだということ。
これは最初にそれっぽいというところから開始したから、確認しただけなんだが。
で、10秒程度の時間だけど、これは結構練習したけど変わらなかった。
ただ、連続して呼び出すことも可能だったから、疑似的に球体をずっと出し続けることはできるということだ。
まあ、10秒ごとに"Connect“って念じないといけないから、結構ストレスではあるけど。
あと、同時に複数を並列させることはできなかった。
球体のサイズと形はよくよく見てると毎回微妙に違っていて、とはいえサイズは概ね直径30センチほどを中心にばらついてる感じではあった。
形はひずんでたりすることがちょいちょいあったから、もしかすると形をコントロールできたりする未来があるかもしれない。
ちなみに呼び出せる場所は自分の視界に入っている範囲なら20メートル程度先でも任意の空間に出せた。
それ以上の距離は確認してない。
部屋の端から端ってことだ。
で、もう一つの重要な点、呼び出した時に表面があるところは、もともとそこにあったものをスパッとキレイに切断してしまった。
キジよ、君の犠牲は今ここに原因が特定されたぞ。
で、内部にあったものは特に影響を受けていないようだった。
ちなみに、球体の外側からステンレスのスパーテルでつんつんしてみたら、明確に壁があった。で、スパーテルは特に影響を受けなかった。
切れたり消えたりってことがなかったわけだ。で、球体は動かなかった。
そう、まさにビクともしなかった。
「小川さん、これなんかすごいっすね。何がすごいかうまく言えないけど、なんかすごいっす」
「おー、村主がちょっとバカっぽい言い方になってるし、口調が戻ってる」
「いや、だってうまく言えないじゃないっすか。錬金術なんで吹っ飛ぶとんでも現象ですよ。でも何がすごいのかうまく言えない」
「まあそうだよね。でもさ、それこそラノベの世界なら、無敵の盾として、とか敵を表面部分で切断とか、なんかいろいろ強そうじゃん」
「いや、そんなことしたら現代社会じゃ即タイーホっすよ」
「あー、まあ切っちゃったらヤバいかもだけどさ、盾になるのはいいんじゃない?」
「タイミングと場所を間違わないようにかなりの訓練が必要っすよ、きっと」
「うーん、格闘技の訓練するようなレベル感になるか・・・」
「考えの浅はかさが14歳から成長してなさそうなのがまたいいところっすね」
ぜーったいディスられてるとわかってるけど、まあいいかと話を続けて、大まかな検証が終わった。
「さて、あとはなんで小川さんがこんなことできるのかっていうのと、この話を表に出すかってことっすね」
「出さねーし。ってか出したら人類から村八分にされない?」
「下手したら国に確保されるか、新興宗教に取り込まれるか、過激なテロリストに消されるか」
「だよねえ・・・あのさ、村主さん、とりあえず口止め料ってことで何がいい?」
「・・・何もいりませんよ。私ってそんな感じに見えてます?まあどうしてもっていうなら、今ならアイナメの昆布〆とかかな」
「渋すぎるな。。。ヒラメじゃなく?」
「好みの問題ですけど、アイナメの程よく脂ののった、それでいてさっぱりした感じが好きなんっすよ。味も濃いし」
「おけ、じゃ今度釣ってきてさばいたやつで作るよ」
村主は元気にあざーっすと言って喜んでいた。
やけに明るく接してくれている気もして、ちょっと人外っぽくなった俺に対する気遣いなんかもあるのかな、なんて思ったりもした。
もう薄っすらと滲んできてますが、このお話にはダンジョンもモンスターも勇者も賢者も出てきませんし、魔法っぽい何かはあるけど、特にバリエーションがあるわけでもなく、ほんのちょっとのことでも工夫次第ではチートっぽいよね、っていう視点になってます。普通の世界の普通の人たちの日常+αくらいの世界観です。