日本みらい話 AIは藍より青し
この話はタイムマシンで未来へ往き、還って来た人から聞いたお話です。
ちょっとだけみらいのお話です。
ある家電メーカーがウソ発見機能付きテレビを発売したそうです。なんでもメンタリストと世間で呼ばれている人心を読み取る職業の人達の能力を、テレビに内蔵されたAIに学習させて開発したそうです。
利用方法はテレビのリモコンに付いたウソ発見スイッチを押すと、テレビ出演者がウソをついたとAIが判断した場合その出演者の顔が真っ赤に染まるのだそうです。なんでも「真っ赤なウソ」から赤を選んだんだそうです。しかし、テレビの説明書には「当テレビのウソ発見機能の精度は保証出来ませんので、お茶の間の娯楽としてお楽しみください」と書かれていたそうです。
うそ発見機能付きテレビは評判に評判を呼び、
「だいたいテレビに出てる連中なんかみんなウソついてるだろ」
「ウワベの世界だね」
「強烈な制約があるから生姜ないでしょ」
「ウザ」
「BPOね」
「ドラマなんかフィクションだから、出演者の顔全員最初から最後まで真っ赤ってこと」
「でも、好きって言った俳優の顔が赤くならなっかたら本当に好きってことじゃね」
「おもろい、週刊誌がほっとかへんで」
「ドラマに没頭出来ない」
「でもウソ発見機能の精度はどうなの」
「テレビで視たけどメンタリスト達の人心を読み取る力はすごいよ」
「AIがその力をどれくらい学習しているかだね」
「学習し続けてAIがメンタリストを超えるかも」
「ぜってえ、ありえねえ。機械は人間を超えられねえよ」
「出た。縄文人より前の超古代人」
「縄文人の前ってモンキーだろ」
「AIは猿を超えたのか」
「楽勝だよ。猿じゃ将棋でプロ棋士に勝てない」
などとネットを賑わせていたそうです。
そして有名大学がそのテレビのウソ発見機能の精度について実証実験を始め、その結果なんとその確度は約99パーセントだと結論づけたそうです。
その結果を受け、ウソ発見機能付きテレビは売れに売れそのメーカーの社員達は久しぶりのヒット製品に笑いが止まらず、社長などは笑いすぎて顎関節症になったほどだったそうです。
ところが、そのテレビの出現に頭を抱えていた人達もいたそうです。
その頃にもおバカタレントと呼ばれるジャンルのタレント達が芸能界の一角を占めていたそうです。彼または彼女達は今と同じように害のない無知識、非常識さを露呈して視聴者の関心(歓心、寒心、ある意味感心)を得て、人気を博していたそうです。
「うちのおバカタレントが何か発言する度に顔が赤く染まったんじゃ、視ている方もさすがに興ざめじゃないか」
と人気おバカタレントを抱えているタレント事務所の社長がおバカタレントのマネージャーに言ったそうです。
「そうですね。視聴者もおバカタレントを本当にバカだとは思っていないでしょうから、それがあからさまに偽りだと視せつけられるとちょっと引かれるでしょうね」
「本当におバカかな、いや実際は賢いよ、の半信半疑くらいがおバカタレントには丁度いいんだよ。いっそ顔色が判らないように、緑とか青のドーランを塗らせるか」
「それはいくらなんでも。うちのような女性のおバカタレントの場合ちょっとルックスの可愛い娘がおバカな発言をするから受ける訳で、緑や青の顔の女がおバカな発言をしたところで反感しか買わないでしょう、悪役プロレスラーじゃないんですから」
「じゃあどうする」
「と言われましても」
ということで全く打つ手なくその事務所のおバカタレントAがテレビのトーク番組に出演することになったそうです。
「Aちゃんは出身はどこなの」
と番組の司会者がAに聞いたそうです。
「東京」
「東京か、僕なんか田舎の生まれだから東京生まれの人がうらやましいよ。なんと言っても日本の首都だからね」
「シュト? シュトって何? シュートのことサッカーの? 人の名前? 何? 何? わかんな~い」
と答えたのですが、Aの顔は全く赤くならなかったそうです。
そして食べ物の話題になり、
「Aちゃんは和食と洋食どっちが好き?」
「ワショク? ヨウショク? 何それ?」
「ああそうか。じゃあ質問を変えようね。Aちゃんが好きな食べ物は何?」
「おいしい食べ物」
「なるほどそれが一番だね。おじさんもおいしい食べ物が一番好き」
「わたしとおじさん超ラブラブじゃん。イエー」
と言って手で作ったハートマークを元気に突き出したそうです。ちょっと未来でも彼、彼女達の反応は今と同じだったそうです。
こんな調子で番組は進み終了したのですが、驚くべきことにAの顔にはなんの変化も起きなかったそうです。その様子をテレビで視ていた事務所の社長は、ほっと胸をなでおろすとともに、
「本物だったのか」
と背筋に寒気を覚えたそうです。
他のおバカタレント達も同じような結果となりネットでは、
「日本の教育は大丈夫か」
「別に違法なことしてる訳じゃなし、面白ければいいんじゃない」
「面白ければいいってもんじゃないんだよ。品がないんだよ品が」
「品って何。上品ぶって世の中を暗くする政治家みてえなクソつまんねえ奴らより、多少下品でも世の中を明るくするおバカタレント達の方が人間としてよっぽど上等だよ」
などと炎上したそうです。
そしてなんと、その世の中を暗くしていると名指しされた張本人達も実はウソ発見機能付きテレビを苦々しく思っていたそうです。
国に巣くう国民のパラサイト、king of 利己主義、中でも特に悪辣非道、金への執着では天下無双の化け物達、我田引水の権化、そう、その名も国会議員・・・恐ろしや。
嘘の八百どころか八千も八万もついて国民の税金を貪り喰らうハイエナのような生き物であり、議員を辞めたら詐欺師になるより仕方のないような方々であることは未来でも変わりなかったそうです。まあハイエナがサギになったところで国民にとっては真底迷惑千万な存在なことは今と同じだったそうです。
「困ったなあ、このままじゃ国会中継で違法献金受けたことがバレちゃうぞ」
と疑惑の代議士が秘書に言ったそうです。
「本当ですね先生。あんなクソテレビさえ出なければ会計責任者のせいにして全て丸く収まったのに」
「その通りだ。取材される度に顔が赤くなったんじゃリコールだってされかねないぞ。あのテレビを作った会社の社長を呼び出して製造中止にするか」
「遅いですよ先生、あのテレビもうかなり出回ってますから」
「そうか、じゃあ法律を作ってあのテレビを使用禁止にするか。野党だって反対しないだろ」
「まあ反対はしないでしょうね。あいつらだって同じようなことやってるんだから。でも次の選挙で間違いなく落ちますよ、昔と違いますからね先生」
「そうだよなあ。令和の始めの頃なら政府が少々強権的なことをやっても高齢者の支持があるから与党議員なら落選しなかったけど、今じゃその人達は皆んな上に行っちゃって、ネット世代が有権者の主流を占めるようになってから、ちょっとでも強圧的なことをするとポリハラ(ポリティクスハラスメント)とかネットで騒がれ、即選挙に影響するからな」
「ここはもう先生、正攻法でぶつかるしかないでしょうね」
「国会で違法献金を受けたことを堂々とバラせって言うのか」
「何言ってるんですか。昭和以来、こういう時の政治家の正攻法とは堂々と入院することじゃないですか、やだなあ先生」
「おお、そうだったそうだった。早速今日から入院しよう、よっしゃよっしゃ」
とその与党大物代議士先生は急性股間カイカイ症などという、聞いたこともないような病名でその日のうちに入院したそうです。
そして入院先の病院の前で大勢のマスコミ関係者が待っているところへ、疑惑代議士の秘書が出て来たそうです。
「本当に病気なんですか?」
「追及逃れじゃないんですか?」
「偽り入院でしょ?」
などと矢継ぎ早に質問が投げかけられたそうです。
すると秘書は立ち止まり、
「偽りなんかではありません。先生は本当に正真正銘の病気です」
と言った秘書の顔は真っ赤に染まっていたそうです。政治家の詰めの甘さは未来でも同じだったそうです。
検察は未来でも今と同じ様に国会議員に対しては全く動こうとしなかったそうです。しかし、今と違いちょっと未来では令和の初め頃の政治家の不祥事の反省から国民が政治に対する意志表明をハッキリ行うような世情になっており、ネットで呼びかけられた疑惑議員辞職要求大規模デモが全国各地で起こり、疑惑代議士は国会の虚言が許されない証人喚問を受けざるを得なくなったそうです。
「貴方が違法献金を受けたことは様々な蓋然性から考えて疑う余地のないことです。違法な金を受けたんでしょ?」
野党議員が疑惑議員に詰問したそうです。
「そんな昔のことは憶えておりません」
「昔と言ってもたった半年前のことじゃないですか、忘れる訳がない。貰ったんでしょ、違法な金を」
「私の脳ミソは若い頃から未来のことで一杯で、過去の記憶が入る余地がありません。いわば先進脳とでも言うんですかね」
「そんな脳なんて聞いたことがないぞ」
「ふざけた言い訳なんかするな、真面目にやれ」
などと野党側から野次が飛んだそうです。
「まあとにかく憶えてないものは憶えてないんですよ。こればかりはなんと言われようと致し方のないことでございます」
と言った疑惑議員の顔は真っ赤に染まっていたそうです。
「半年前のことも忘れるなんて、医者に診てもらった方がいいんじゃないですか。それじゃまともな政治活動は出来ないでしょ」
「先般入院した時に診てもらいました。異状はありませんでした」
と赤い顔で堂々と言い放ったそうです。
「今、同僚議員から連絡がありまして、テレビに映っているあなたの顔は真っ赤に染まっているそうですよ。ウソ発見確度は99パーセントあるらしいじゃないですか。どう思います?」
「残り1パーセントの例外に私が入っている可能性もある訳でして、それに私は昔から赤ら顔の上に少々照れ屋なものですから、こうやって全国放送のテレビ中継に映っていると考えただけで恥ずかしくなって先程から顔が火照って火照ってしょうがありません。ああ恥ずかしい、恥ずかしい」
と言って疑惑議員、手で顔を覆ったそうです。
「なんの真似だ、ふざけるな」
「聞いてる方が恥ずかしいよ」
「猿芝居もいい加減にしろ」
「恥ずかしがるようなタマか、羞恥心の欠片もないくせに」
「厚顔無恥野郎」
などと再び野党側から野次が飛んだそうです。
するとどうした理由でしょう、全国のウソ発見機能付きテレビの国会中継の放映画面が、突然、薄青く染まり始めたそうです。他のチャンネルではそういう現象は起きていなかったそうです。さらに最初は薄い青に透けて国会中継の様子が映っていたのですが、徐々に青が濃くなっていきとうとうテレビ画面中真っ青になり全く視えなくなってしまったそうです。でも他のチャンネルは全く異常なく普通に映っていたそうです。国会中継を放映していた国営放送局、さらにはウソ発見機能付きテレビを製造した家電メーカーに苦情が殺到したそうです。
ネットでは、
「与党が放送局に圧をかけてわざと映らなくしたんだろう」
「ありえる」
「もう絶対、受信料払わねえ」
「テレビメーカーもグルじゃねえ」
「法人税免除の密約」
「ありえる」
「現政権から莫大な武器を買ってもらっている同盟国の仕業」
「奴らならこの程度の妨害簡単に出来そう」
「it`s so easy」
「That`s possibie」
などと大荒れしたそうです。
そして、ウソ発見機能付きテレビを製造した家電メーカーは異常現象の原因追究を始め、その結果を発表したそうです。
「今回の当社発売のウソ発見機能付きテレビの不具合につきまして、色々と原因解明に努めたのですが、ご購入頂いたお客様各位には誠に申し訳ございませんが、決定的な原因究明には至りませんでした。それを踏まえた上で、当社技術陣の考察を述べさせて頂くことが許されますれば、どうもウソ発見機能付きテレビに内蔵されたAIが何かを学習し、それを表出させたのではないかと推察されるとのことでした。なにはともあれ当社発売の製品に不具合を生じさせ、お客様にご迷惑をおかけしたことには間違いございませんので、ウソ発見機能付きテレビをご購入のお客様で返品したいとご希望のお客様には販売価格で買い取らせて頂きます。この度はご迷惑をおかけし誠に申し訳ございませんでした」
と発表したそうです。
この発表を受けネットではAIが何を学習したかについて、
「なんで青なの」
「そこだよなポイントは」
「シュレックじゃねえか」
「シュレックじゃねえよ」
「AIの名ははるな」
「古すぎ」
「疑惑政治家のあまりにも堂々とした法螺吹きぶりにAIが寒気を覚え青くなったんじゃねえの」
「まさか、A Iに感情はないよ」
「また出た縄文人」
「いや類人猿だろ」
「縄文人や類人猿には感情はある」
「そういうことじゃなくて」
「AIが感情を持つのではなくて、感情を学習するんじゃないの」
「なるほど、ブルーになったってことは憂鬱を学んだってこと」
「鬱はブルーだと機械が学習したって言うの。ない、絶対にありえない」
「える。絶対とは言えないけど最近のAIならありえる」
「AIが政治家どものあからさまな虚言を憂いて鬱となる」
「すげえ」
「世の政ごとを悲嘆する哀しみの青」
「もはや哲学者」
「財産や名誉を得ることのみ執心し、己の魂を善くすることに努めないのを恥じとは思わないのか by ソクラテス」
「とうとうAIは偉大な哲人と肩を並べた」
「ウソ発見機能付きテレビの開発者もビックリ!」
「AIは藍より青し」
「うまい!」
その後、驚くべきことにウソ発見機能付きテレビの返品は一件もなく、それどころか売り上げは前にも増して急上昇したそうです。
さらに日本人にとっては大変不名誉なことに、「Seijka」という言葉は「大ウソつき」という意味で世界中で使われるようになったそうです。
You are seijika → 変換→お前は大ウソつきだ
めでたし、めでたし••••••。めでたくねえよクソ野郎どもが!
お終い