貪欲の砂漠とお楽しみ
熱い日差しと熱砂が俺を迎えた。じりじりと鎧が熱くなっている。これは長時間はいられないな。真っ直ぐボスのところに向かおう。道中トカゲや蛇やサソリがでてくる。一撃一撃を丁寧に回避して攻撃を入れていくと、2、3発入れたら倒れる。
やってやれないことはないな。
そういえば、いままで一撃も受けたことがないな。このままボス戦で初ダメージは怖い。試しにトカゲの突進で一撃貰ってみるか。俺は軽く2発入れたトカゲを突進攻撃が来るまで回避して待った。ようやくきた攻撃は、俺に擦り傷を与えるに過ぎない。この時期の主人公なら半分くらいはライフを持っていかれるだろう。
「あはははは。これがダメージか」
これはボス仕様のHPだ。ちょっとやそっとでは負けない自信になった。俺は突進してきたトカゲに返礼の一撃を加えて瘴気に還した。ドロップしたトカゲの尻尾をアイテム袋に入れる。こういったドロップアイテム対象に学内掲示板に依頼が出たりするから、普段から集めておくに越したことはないだろう。
30分ほど歩いていると、体長が20mほどありそうなムカデが飛び出してきた。ここのボス。カラザリスセンチピードだ。ここまでくると、雄大ささえ感じさせる。早速とばかりに牙を剝いてきた。横ダッシュ回避をすると、余裕を持ってよけられた。やはりこの身体の性能は癖になる。
ムカデの通り道に火柱を設置してやる。ムカデは身体をくねらせて嫌がる。ふはは、極端な熱さには弱いだろう。遠くからは火矢を打ち込み、近づいたら回避して火柱を設置する。そうやって戦うこと15分、次第に足枝の動きが鈍くなっていく。
こいつときたら、最後の最後に牙を剥いて襲い掛かってきたから、カウンターでその頭蓋を叩き割ってやった。
ようやく瘴気に還っていき、カラザリスセンチピードの牙をドロップする。俺はそれをアイテム袋に入れる。これで、全部ゲットしたぞっと。あとは禁書庫に行くだけだ。
俺はいい気分で、帰還門をくぐった。
転移門から出てくると、空は夕暮れだった。寮に帰っている最中の上級生の話し声が聞こえてくる。
俺も帰るか。身体に着いた砂を落としつつ、寮に帰った。
砂だらけの俺を見て、シャーリーに怒られた。
「貪欲の砂漠は死にますよっていったでしょう。何故いったんですか?」
「能力的に行けるなって思って、ほら怪我もこれだけ」
トカゲに傷つけられた箇所をみせる。
「これだけですか、貪欲の砂漠で?カラザリスセンチピードは?」
「攻撃を貰わず倒せたよ」
「なんと、ディーベルド様は私の想像以上にお強いようです。しかし、無理はしてはいけませんよ。私も死にたくありませんから」
「絶対死なないようにするから。安心してくれ」
「なんか安心できないです。それ」
いいながら、ポーションを使って擦り傷を治してくれる。この程度の怪我に使わなくたっていいのに。
「なんにせよ。そんな砂だらけでいられては侯爵家の恥です。さっさと浴場にいってください。私は装備の手入れをします」
「浴場ってどこなの?」
「……1階に降りて右の端です」
呆れたようにいうシャーリー。俺は装備を脱いで、下着と用意してもらったシャツとズボンを持って浴場に行った。浴場にはシャンプーとリンスとボディソープがあった。なんちゃってファンタジー万歳。この世界には中世風とは思えないものがそこらかしこにある。たとえば、ヒロインの下着とかも現代風だ。あくまでも例えばだが。
俺は身体を洗ってさっぱりとした。
ゆっくりと湯船につかる。風呂はどこもかしこも金で装飾されており、趣味が悪いもので不満だが。湯はいいものだ。今日の疲れが取れる。これでも1日で3つもダンジョンをクリアしたんだな。せっかくだから最強を目指してみるか。この身体にはそれくらいの可能性が秘められているはずだ。
それにしても、夢かと思っていたが、結局現実っぽいな。直前まで蒼剣のラグセスナで遊んでいた記憶しかないんだが。まあ、いいか。なってしまったものは仕方がない。せっかくのゲームの異世界だ。最大限楽しんでいこう。殺されないようにな。
俺が風呂の隅っこの方でぼーっとしていると、風呂の中心にある邪魔なオブジェの向こうで何やら話しているようだ。
「これがかわいいんだ。…民でいつも邪魔な…………それを……」
「いいじゃねえか。俺も……………にはむしゃくしゃしていたんだ。一矢で二羽射るとは…………」
片方の声には聞き覚えがある。マルコ・コーザとかいう雑魚だ。
なんかイベントあったか?なかったはずだ。
俺はひっそりと近づく。
「じゃあ、俺がレイドの野郎にリーゼインがディーベルドに絡まれているっていって引き剥がすから、その間にクラリスをやってやろう」
「その様子を魔メラで撮って、おもちゃにしてやろうぜ」
なるほど、おおよその事情はつかめた。でもまあ、主人公なんだからうまくやるだろ。それができるからこそ、ハーレムを築くわけだし。
今は偉業を成してないから、周りに恐れられていないんだな。いずれあいつは手を出すとヤバいやつ分類に入るはずだ。
俺は2人に見つからないように、風呂に潜伏し続けた。のぼせそうになった頃。ようやく2人は風呂から出て行った。
「随分と長風呂でしたね」
「急に内緒話を風呂でする奴がいてな。出るに出られなかった」
「そうなんですか。装備も新品同然にしておきましたよ。褒めてください」
「シャーリーは万能メイドだなあ。そんなメイドがいてくれて助かるよ」
「……本当にディーベルド様は変わられましたね」
「そう?多分だけど元々はこんな感じだったんじゃない?記憶がなくなるくらいでこうなるんだから」
「でしょうか?」
「多分。そういえば俺って侯爵家の人間だけど将来って決まっているの?兄とかいるの?」
「はい。ディーベルド様にはお兄様がおられますよ。将来は領地を分けてもらってそこを治めるか、自由にしていいとおもいますよ」
「そっかー」
俺はベッドに転がる。
シャーリーもベッドに腰を掛けた。なんで?
「シャーリーは部屋に帰らないの?」
「夜伽はかまわないのですか?」
まじかあ。シャーリーはディーベルドのお手付きだったらしい。そりゃあこんな美人さんがいたら、傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、怠惰と暴食以外をもっているディーベルドは手を出さずにはいられないだろう。俺は起き上がって聞いた。
「シャーリーは嫌ではないの?」
「嫌でした。でもお仕事なので我慢するつもりでした。けれど、今日のディーベルド様になら抱かれてもいいです」
「じゃあお願いします」
俺は服を脱ぎ捨てた。シャーリーはにっこりと笑って両手を広げた。
脱がせろってことか、俺は手間取りつつシャーリーの服を脱がせた。シャーリーはくすくすと笑っている。確かに俺には経験がないけど。シャーリーの豊かな胸が飛び出した。
俺は領の手のひらでその豊かなふくらみを揉んだ。おお、手からはみ出る。シャーリーは俺を抱きしめると、唇を重ねた。胸が俺の胸板でつぶれる。
舌が口内に忍び込んできた。おおっ!こんな感じなのか。流れを合わせるように舌と舌を絡める。
「なんか今日のディーベルド様かわいいです」
「そんなこと、いえなくしてやるわ」
「いやん」
俺はシャーリーのパンツに手を掛けた。