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イレギュラーダンジョン

 今日の放課後、ノッド先生に何やら話があるとのことで、パーティーメンバー全員を集めて指定された教室に向かった。


 普段は使われていないような空き教室だ。一体何の要件なのか。


 教室を開けると、一瞬入室を躊躇った。そこにはレイドに、クラリス、リーゼインがいたのである。お互い挨拶するような関係ではない。教室に入っては見たものの、気まずい雰囲気になっていた。


 パーティーメンバーの子たちはそういった関係でもないので気軽に挨拶していた。


 俺も何かいったほうがよいのではないかと考えていた矢先に、ノッド先生が入ってきた。ノッド先生が言い放つ。


「大いなる流れが、レイド君とディーベルド君には死んでもらいたいと―――」


 気配がする方に殴りかかった。教室の隅からノッド先生が現れる。遅まきながらレイドがいった。


「ノッド先生が邪教徒だったなんて」


 本当だよ。ゲームでも明らかになってない情報をぶちまけてくるのはやめてほしい。


「流石だ。ディーベルド君。でももう遅―――」


 何かされても困るので確実に意識を絶った。


 直後である。教室中に紫色の血管に似た紋様が現れて光りはじめている。


 教室の出入り口を蹴飛ばす。レイドも窓が割れないか試しているらしい。……だめだ。開かないし壊れない。これと似た展開はゲームにもあった。


「強制転移だ。ダンジョンに飛ばされるぞ!全員近くの奴と手を繋げ!」


 俺はパーティーメンバーと手を繋ごうとした瞬間、光があふれて俺たちを包み込んだ。


 そこは巨大な生物の体内のような場所だった。足元には薄っすらと体液のようなものが流れている。……最悪だ。七大ボスの1人がいるダンジョン。退行のレアラがいるダンジョンだ。


 とりあえずは、全員が向かっているだろう入り口の転移門を目指してみるか。ここがどこだか、まだ脳内マップと一致していないけれど。


 俺はアイテム袋から装備を取り出して身につけて、行動を始めた。


 大丈夫だ。最後見た瞬間アリエルがステラとミューザと手を繋いでいた。クラリスとリーゼインも咄嗟に手を繋いでいたように見えた。後は男組が上手く合流できればいい。


 こうなってくると、昨日装備の更新をしておいて本当に良かった。あの装備なら適正レベルでなくても何撃かは耐えられるだろう。


 退行のダンジョンは不気味なダンジョンだ。体内のような風景は不気味だし、出てくる敵も赤子を連想させる。


 俺が今出会った敵もそうだ。巨大なゴーレムの赤子のような存在だ。顔は両手が合わさった中に目玉があり、巨大な身体をしているが、対してその手足は小さい。生まれたての赤子のように。……こいつやたらと固いんだよな。


 俺ひとりなら追われ続けてもいいが、その先でパーティーメンバーと合流しては危険だ。倒しておくか。顔に着いた両手で掴みかかろうとしてくるのを身体の脇に避けて斬りかかる。浅くしか斬れない。レベル不足だ。


 直後、巨躯がゴロゴロと寝返りを打って俺を潰そうとしてくる。足の方にダッシュ回避をしてジャスト回避を決めて、反撃。お尻で潰そうとしてくるのをまた脇の方へ回避する。斬りかかる。


 繰り返すこと5分ほど。ようやく瘴気に還っていく。ゴーレムの目玉をドロップした。学内掲示板で依頼票もないだろうが回収はしておくか。


 俺は先へと進んだ。


 俺の視線の先には天使の輪がついている赤子が浮遊している。見つかるとマシンガンみたいに光属性の魔法を撃ちこんでくる奴だ。見つからずには通れそうにない。


 俺は姿を現すと、光線のようなものが俺を狙い抜いてくる。隼の靴のお陰もあって、少し余裕を持って避けることができている。回り込むように近づいていって、その首を刎ねる。光輪がドロップする。回収っと。


 そろそろダンジョンのどこら辺にいるのかは想像がついてきた。ダンジョンの入り口の転移門に向かっていくとしよう。


 その時である。俺の耳に戦闘音が聞こえてきた。


 ゴーレムの赤子と戦っている。その巨躯が邪魔でうまく見えない。とりあえず隙だらけの首に剣を突き刺して、力ずくで払う。幸いなことに致命打となったらしく瘴気に還っていく。


 そこにいたのはクラリスとリーゼインだった。……おおう。気まずい。


 ◇


 レイドを探していたけれど、合流したのはディーベルドだった。リーゼインは話しづらそうにしていたので、私が積極的にディーベルドと会話した。


 ディーベルドはおおよその場所が分かっているので入り口の転移門へ向かっているらしい。また、私たちには前衛がいないことを気にして、同行を申し出てくれた。


 ありがたいことだ。さきほども不気味な石の赤子のような怪物もリーゼインの魔法攻撃を気にする様子もなく、近づいてきて、もう少しであの不気味な頭の両手に掴まれるところだった。


 ディーベルドはちらちらとこちらの様子をうかがいながら進んでいく。どうやら私たちを心配している様子だ。ディーベルドは変わった。昔のディーベルドなら、平民の私を鉱山のカナリアのように使っていただろう。今は自らその役割をしているし、わたしたちのことを心配してくれている様子だ。


 光の輪がついた2人赤子が視界の先にいる。ディーベルドは私たちにここに隠れているように指示をすると、すさまじい速さで放たれる光線を避けつつ、赤子に近づいてその首を刎ねた。


 その勢いを殺すことなく、反対側にいる赤子に近づいていってその首を刎ねる。


 ディーベルドはドロップアイテムを回収するとこちらに合図する。相変わらずこちらの持っている印象と乖離した行動をとる人だ。


 その時だった。ぼーっとディーベルドを見ていたリーゼインの背後から不気味な石の赤子が近づいてきていた。咄嗟に魔力弾を打つが気にした様子がない。リーゼインがあの両手に掴まれる。そう思った瞬間、ディーベルドがリーゼインを押しのけた。


 不気味な石の赤子の両手に捕まれるディーベルド、不気味に何かを砕く音が辺りに響く。私は必死に治癒(ヒーリング)を唱えていた。不気味な石の赤子が瘴気に還る。掴まれていたディーベルドがなんとかしたらしい。血まみれだ。


「クラリス、治癒(ヒーリング)をありがとう。大分痛みがマシになってうごきやすかったよ」


 私にお礼をいった。それからリーゼインに向き合った。


「危険な場所にいるからぼーっとしていると危ない。敵に気がついたら声を掛けてくれ」


 そう注意した。


 以前までのディーベルドとはやはり別人のようだ。わたしはダンジョンを通じて、改めてその印象を強くした。


 ディーベルドがほっとしたようにいう。


「もうすぐ転移門が見えるはずだ。みんなが先についていてくれたらいいんだけどね」

「うん。レイドもステラさんもアリエルさんもミューザさんも無事でいてくれたらいいね」

「ステラ達ならこのダンジョンでも大丈夫だよ。最悪敵に見つからないように隠れることになっているかもしれないけど。レイドもまあ大丈夫だろう」

「うん、レイドなら大丈夫だと思う」


 レイドにはどんな状況でも何とかしてしまいそうな頼もしさがある。不思議と今のディーベルドにもその頼もしさを感じているけれど。


 そうやって話していると転移門に到着した。私たちは失望した。転移門が起動していなかったからだ。


「クラリスやリーゼインは転移門のこととか分かる人?」

「わかりません」


 リーゼインも首を横に振った。


「そっか俺も分からないから、ステラが頼りだな」


 一瞬、何かを考え込むような仕草をすると、いった。


「クラリスとリーゼインはここで待機していてくれ。レイドとステラたちを探してくる」

「え、一緒に……」

「ここならモンスターも来ないし、1人の方が身軽だから。待っていてくれ」


 そういってダンジョンに引き返していくディーベルドの背中は大きく見えた。

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