装備更新
水曜日の放課後である。今日も今日とてダンジョン攻略と行きたいところだったが、今日はやることがある。
装備の更新である。先日アルティメのお陰で大量に手に入れることができたレッドドラゴンの素材でパーティーメンバー全体の強化をしておかなければならない。
俺のヒロインたちがダンジョンで命を落とすようなことがあってはならない。出来る用意はしておかなければならない。
というわけで集合場所にて装備の更新をする旨を伝えた。
「今日は全員の装備を更新して全体の戦闘力を上げるぞ」
「ええ、お金がないですぅ」
ミューザがそんなことをいう。ミューザのことだから、今までに稼いだお金も家族のために貯めているんだろうな。
「ディーベルド。装備更新というが当てはあるのか。そこらのものではさして変わらないぞ」
アリエルがそんなことをいう。勿論当てがあってのことだ。
「ある。これだ」
俺はレッドドラゴンの素材を一通り出した。
「ディーベルド……これは」
「レッドドラゴンの素材だ。ステラに作ってもらった剣の試し切りで倒してきた」
「ディーベルド。私は、そんな危険なことをさせるために錬金したわけじゃない」
ステラが怒っている。普段怒らない人が怒ると迫力があるな。
「結構余裕があったよ。逃げる算段もついていた。問題はない」
「うーん。ディーベルドはときどきばか」
大体常時こんなものである。つまり大体ばかだということだ。
「それはともかく、ディーベルド以外のパーティーメンバーの防御力については、私も憂慮していた。せっかくだからディーベルドの好意に甘えて、全員装備を整えるべき」
やはり、ステラも俺以外がダメージを受けたときのことを心配していたらしい。みんな初級ダンジョンの頃から防具が変わっていないからダメージがやはり心配なんだ。
「ディーベルドに甘えているようで気が乗らないが……」
「気にすんな。俺は強いからな。ここは甘えておけ」
「……わかった。ありがとう」
「ありがとうございますぅ」
納得してもらえたようなので、錬金ができる部屋へとみんなで向かう。
大量の薬品が入った瓶が並び、数々の錬金素材が棚分けされている。中央にはどんと錬金釜が置かれている。一言でいうと魔女の部屋みたいだ。
「ステラ、これから4人分の装備を錬金してもらうことになるが、出来そうか?」
「ん。大丈夫」
ステラは余裕そうだ。この間のアルティメの錬金でステラの技量は相当高くなっているのかもしれないな。
ステラは気軽にレッドドラゴンの鱗と皮を入れると、櫂で錬金釜をかき混ぜる。しばらくかき混ぜているとぴかっと光って、レッドドラゴンのスケイルメイルを完成させた。
俺は初めて見る錬金にテンションが上がった。そのままの勢いで、俺、アリエル、ミューザのスケイルメイルを完成させた。
続いては、竜の皮を2枚入れて、錬金窯をかき混ぜて、ドラゴンローブを作成した。これはステラの装備と。
そして武器の制作に入った。竜の牙を入れて、竜素材の剣と短剣を錬金する。これはアリエルとミューザの分と。そして、竜の爪と骨を入れると、自分の杖を錬金した。
これで全員分の装備が整ったな。レッドドラゴンの素材から作った鎧を着ているから仕方がないが、全員の防具が赤い。まるで悪役のようだ。いや、悪役に転生しているのだが。
「流石だ!ステラ。こんな高位の錬金を軽々できるなんて。最高だ」
「ん。頑張った」
俺はステラを持ち上げてくるくると回った。
「ディーベルド。恥ずかしいから下ろして」
ステラを下ろした。残念。アリエルとミューザもなんだか呆れた顔をしている。
「よしっ!せっかく装備を更新したことだし。ダンジョンに行って試してくるか」
◇
ディーベルドは蜥蜴の迷宮というダンジョンを選択した。出てくるのはリザードマンたちらしい。
ダンジョンに入るとディーベルドが今回は見学に回るから3人で戦ってみてくれという。今までにない提案にすこし驚いたが、このダンジョンなら私たち3人で攻略できると考えているのだろう。やってやることにした。
目の前から曲刀を持ったリザードマンが近づいてくる。大振りに振られる剣をパリィして、首を斬った。首を斬ったときほとんど感触がなかったことに驚いた。
杖を持ったリザードマンが現れたときミューザが妨害に向かったが、その短剣で相手を引き裂いてしまった。
凄まじい攻撃力を持った武器だ。慎重に扱おう。
ステラも同じ状態なのか大きな白い杖から放たれる火矢はいつもよりも明らかに激しさを増している。
武器にも驚いたが、もう一つ私が驚いたことがある。私自身だ。
ディーベルドの訓練を通じて、技量が上がったのか、ディーベルドほどではないにしろ、皆の盾と剣となって最前線で戦えている。以前とは大きく違う。
敵の攻撃を避けて、弾き、反撃する。その咄嗟の判断ができるようになっているのだ。
強くなっている。その事実に喜びを隠せない。
大分深部に入ってきた。出てくるリザードマンも集団になってきている。
接敵した場合は、ディーベルドのようにこちらから斬りかかってヘイトをとるようにした。その上で、相手が出してくる安易な反撃は避けたり、弾いたりして致命的な一撃を返した。それからは、無理に攻撃しなくても、隙をついてミューザの短剣が、ステラの魔法が敵を襲う。
敵集団を殲滅することができた。
◇
皆戦い慣れてきているな。アリエルが俺の模倣をして最前線で戦っているうちにミューザが敵をかき乱し、致命的な魔法をステラが打ち込んでいる。
装備の更新もしたし、大丈夫だとは思っていたけれど、これなら大体の中級ダンジョンも俺抜きで攻略していくことができるだろう。
リザードマンの集団を倒していくと、とうとう、ボスモンスターであるリザードマンロードが登場した。石造りの玉座に座っていて、重そうに立ち上がる。
アリエルが速攻で斬りかかる。胴体を斬って、反撃にジャスト回避をして連撃を重ねていく。振り下ろされる錫杖にパリィをした。とどめの一撃を刺そうしたところに、パリィされた錫杖を手放したリザードマンロードの蹴りが入った。
吹き飛ぶアリエル。ミューザが援護に入る。時折差し込まれる火矢もいい援護になっている。ミューザが回避を重視しつつ、短剣でリザードマンロードを傷つけていく。
ポーションを使って回復したアリエルが戦線に復帰する。そこからのアリエルは勝負を急がずに慎重に敵の攻撃を弾き、避け、受けて、反撃しつつ対応していく。
ミューザとステラが隙を狙って攻撃を差し込んでいく。
そうしてとうとう決着の時が来た。逆転するべく大きく振りかぶられた拳をアリエルがパリィした。そして態勢を崩したリザードマンロードの首を刎ねた。リザードマンロードの巨体が瘴気に還っていく。リザードマンロードの王冠がドロップした。
俺は3人に近づいていった。
「みんなお疲れ。みんなちゃんとつよくなっていただろ」
「ああ。武具のお陰でももちろんあるが、ディーベルドの特訓が実を結んでいた」
「わたしも攻撃力が上がって敵を倒せるようになりましたぁ」
「ん。わたしも魔法の威力が上がっていた」
まあ、上級ダンジョンのボス素材から作った装備だからね。これでみんなを安心してみていられるようになった。
この世界はろくでもないことも多いからな。
ヒロインたちの安全ななによりも大切なことなのである。




