決闘
「違う。もっと足に魔力を貯めて、爆発させるようにして移動するんだ」
アリエルが近づいていて、斬りかかってくるが俺は容易くパリィをして、木剣で胴に添えた。
「遅い!もう1度!」
アリエルがグッと足に貯めを作ると、俺の前に飛び出てきた。そのままの勢いで剣を振る。これはパリィが間に合わないな。盾で受ける。
「いいぞ!次からはこれをもっと早くできるようにするんだ」
アリエルが繰り返し、繰り返し同じ動作をして最適化していく。
これで基本のダッシュ回避ができるようになったな。
「これからは切り結んで行くぞ。攻撃、回避でうまく使うんだ」
俺が斬りかかると、バックダッシュで回避した。俺はダッシュ回避で追撃を選択する。そこを狙い打ってきた。盾で受ける。
「いいぞ。そうやって相手の攻撃を読んで攻撃していけ」
続く攻撃をパリィした。首に木剣を添える。
「やけくそみたいな攻撃はやめろ。読まれない攻撃か読まれても構わない攻撃をしていけ」
ひたすら、模擬戦を繰り返していった。
アリエルと俺はステラが魔法で桶に貯めた水を浴びた。アリエルはぜえぜえと呼吸が荒れている。俺の方はまだ余裕がある。
「ディーベルドは、どうやって、これほどの力量を、身につけたんだ」
息も絶え絶えに聞いてくるアリエル。
「前もいったが、ひたすらできるまで繰り返したからだ」
ゲームの中でできていたことがこの世界では苦にもならずできるからでもあるが、俺の技術の大本はエロゲのアクション部分で築かれている。
「そうか。努力の差、か」
「努力っていうか、うーん、楽しんでやっているかどうかもあるかもな」
「楽しむ?」
「ああ、モンスターとかを圧倒して倒せたときとか気持ちよくならないか」
「確かにディーベルドはよく笑いながら戦っているな。そうか、楽しむか」
「ああ、この模擬戦を楽しんでやれたらもっと成長するかもな」
苦しいと思いながら、やることはきっと身につきづらいだろう。何事も楽しんで取り組めるほうがいいだろう。
ミューザが果実水を持ってきてくれた。杯を呷る。うん。元気がもっと出てきた。
見れば、アリエルの呼吸も整ってきたようだ。
「そういえば、アリエル。結局決闘になったのか?」
「ああ。兄上もこの件に本気で取り組んでいるらしく、やはり決闘を申し込んできた」
「いつになったんだ?」
「審判となる父上の仕事の都合上で木曜日になった」
「そうか。今週の放課後は模擬戦だな」
「うっ。一度くらいはディーベルドに勝たないとな」
「俺に勝つなんて相当だぞ。お前の兄さんはそんなに強いのか?」
「子ども頃から勝ったことがない……」
年の差とか、男女差とかいろいろ要因があると思うがな。
「さあ、再開しようか」
「ああ」
今日のところはひたすらアリエルをボコボコにぶちのめした。
2日目、時折、こちらの動きを読んでジャスト回避を決めてくるようになってきた。ジャスト回避カウンターをこちらがジャスト回避してさらにカウンターを決めてやったが。
こちらの攻撃も相手の攻撃を良く見てしていかなければパリィされそうは迫力がある。
3日目、互いにジャスト回避を重ねあう。ほとんど体感として周囲の時間が止まったようになる。それでも、勝負に急ぐところがあるのでしっかりパリィを重ねて決着をつける。
こちらの攻撃も確実にパリィするか受けるかの判断ができている。仕上がってきた気がする。普通の騎士ならなんとかなるじゃないかな。
「今日はここまでだ。アリエル」
「まだ、勝てて、いない」
息も絶え絶えにそんなことをいうアリエル。
「俺はいずれ世界最強になる男だ。だから今勝てないのは当然だ。今のアリエルなら中級ダンジョンでもそれなりに通用すると思うぞ。それより明日に疲れを残さないのが肝要だ。今日はここまで」
「う……分かった」
自信がなさそうにしているアリエル。俺は並みの騎士相手なら圧倒出来ると思うのだが、アリエル兄はどれほど強いというのか。
決闘当日。空はからりと晴れており、運命を決める日には丁度いい天気だといえるだろう。レベリングといい、技能値の上昇とできることはしてきたつもりだがさて結果はどうなるのか。アリエル自身のためにも勝ってほしい。
アリエルが決闘場となる石舞台で待っていると、赤髪の軽薄そうな男と巌のような赤髪のおっさんがやってきた。両方似てないな。似ているのは髪と瞳の色だけだ。
「アリエル。あれから強くなったんだろうな?せっかくの決闘だ。何もできないまま負けなんてことはないようにしてくれよ」
「ええ。兄上。私なりに研鑽を積んで参りました。本日はよろしくお願いします」
ごついおっさんというかアリエルの父さんが中央に立つと、二人の騎士は刃を潰した剣を抜剣した。
「始め!」
軽薄なアリエル兄は早々に決着をつけるつもりらしい。駆け寄って剣を思い切り、振るった。あーあ、である。
アリエルは当然パリィをして胴を全力で抜いた。
「そこまで!」
信じられないような顔をしている、アリエル兄。見たところ、アリエルを大分下に見ていたようだが、もうアリエルの方が強いと思うぞ。レベルも技量も上だ。
「父上っ!今のは私が油断していた結果です。もう一度挑ませてください」
「ならぬ。決闘の場で油断していたというのならば、お前が悪い。此度の結婚の話はお前がきちんとなかったことにして、アリエルの将来は自身で決めさせる」
「ありがとうございます。父上」
しっかりと頭を下げるアリエル。反面アリエルの兄は見苦しい。今も悔しそうに顔を歪めている。
それでも父にもう何も言えなかったのだろう。すごすごと引き下がる。
俺達は石舞台の上に上がって、アリエルに祝福の言葉を述べた。
「おめでとうさん。余裕だったな」
「アリエルさん強かったですぅ」
「ん。おめでとう」
ん?アリエル父がこちらにやってくる。俺のことをじーっと見つめる。俺もなんとなしにアリエル父を見る。
「なるほどな。傑物か。これからもアリエルを導いてやってくれ」
「おう」
これで良かったのだろうか。なんか返事してしまったが。アリエル父はそれだけいって去っていった。なんなんだ。
アリエルがなにやら興奮したようにいう。
「すごいぞ。ディーベルド!あの父上に傑物だと認められるなんて」
「そうか」
傑物って普通の人にはやれないことをやる人のことだった気がする。ゲーマーなら俺の立場になったらやりそうな気がする。こんなセリフあったか?
「そうかって、軽いな」
「実感がないからな」
「ちょっと後で時間いいか?」
囁いてくるアリエル。レアな表情だな。これも原作にはなかったな。
今日のところは解散して、誰もいなくなった会場でアリエルを待つ。夕暮れの中、アリエルがやってきた。
「待たせたな」
「構わない」
「ディーベルドに頼みがあるんだ」
「頼み?いってみろよ」
照れたような表情をするアリエル。これはレアな表情だな。
「私をディーベルドの騎士にしてほしいんだ。なんとなくだが、ディーベルドはすごいことをやってのける気がする。私にその手伝いをさせてほしいんだ」
「それは俺の傍に居たいってことか」
「……まあ、そういえないこともない」
そうか。ならそういうことでいいのか。
「それで、どうしてこういうことになるんだ!」
俺はベッドの上で裸にしたアリエルの胸を揉んでいた。小ぶりで反発力のある胸もいいもんだ。
「俺の騎士になるっていうことはこういうことだ」
「そんなわけあるかっ!」
「本当に嫌だったら俺を押しのけて逃げろ。今からお前を抱く」
「……」
本当に嫌だというわけではないらしい。
強張っているアリエルの身体をゆっくりとほぐしていこう。
「わっ!騎士の主人がそんなところに口をつけるんじゃない!」
「でかすぎる。そんなの入るわけがない」
「ディーベルド、いけない主人だ。自分の騎士にこんなことをしてはいけないんだぞ」
本当に充実した時間を過ごさせてもらった。




