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生殺し

 掲示板に向かいエーデル平野に関係する1枚残らずはぎ取っていく。やっぱり今日で依頼がなくなってしまうことになったな。明日からは狩場を変えなければならない。


 受付に依頼票と素材を出して処理をしてもらう。今度は報酬を4等分にしてもらうようにお願いした。しばらくして、依頼の達成が確認されたらしく、報酬が渡される。ずっしりと中身の入った金袋。ステラとアリエルとミューザに渡していく。


 ステラとアリエルはこれで装備の更新でもしてくれたら安心できるのだが、ここでそれをいうとじゃあミューザはどうなの、となりかねない。彼女は彼女の家族が暮らす家のためにお金を貯めているので装備更新には回せないだろう。


 ミューザイベントまでは現状の装備のままで行くしかないだろう。


 さてと、まずはステラへの頼み事を済ませるか。


「ステラ、以前言っていた。とっておき装備の錬金をお願いしたいんだが、構わないか」

「ん。大丈夫。素材は?」

「素材はこの2つで剣を錬金してくれ」


 俺は狂騎士の折れた魔剣とアダマンタイトを取り出した。この素材たちには流石のステラも驚いたようだ。


「……ディーベルド、これすごい力を感じる」

「まあな。アダマンタイトとものすごく強い敵がドロップした折れた魔剣だ。これなら俺のとっておきといえる剣が作れるはずだ」

「ん。錬金してみる。素材と語り合いたいから、来週末まで待って」

「頼む」


 錬金は才能のない俺にはどうしようもない。全面的にステラに任せよう。

 ステラが素材を慎重にアイテム袋に仕舞う。


「それじゃあ俺は図書館に行って本を返してくるから、皆解散で。お疲れ様」

「お疲れ様」

「お疲れ様ですぅ」

「ん。お疲れ様」


 俺は図書室に入った。相変わらずの見るものを圧倒させる書籍量と部屋だ。いつかはこの本たちも読んでみたいものだ。今はダンジョンとヒロインが最優先だが。


 以前禁書庫を案内してくれた司書を受付で見つけた。俺はステラがまとめた石化病の治療法についての冊子を受付に差し出した。


「以前いっていたことの証明ができたので持ってきた」

「拝見します」


 ステラが書いた冊子を黙読していく。読み終わったのか顔を上げると、いった。


「こちらの治療法は確かなものなのでしょうか?」

「ああ。著者の母の石化病がその薬で治った」

「そう……ですか」


 ツーっと司書は涙を流した。えっどういうこと。司書はサッとハンカチを取り出して涙を拭った。


「私の祖父も石化病なので、治療法が確立されたことが喜ばしくてつい……」

「それは、よかったです」


 本当に喜ばしいことだ。ステラの研究で救われる人が目の前にいる。


「この冊子は今後どうされるおつもりなのでしょう」

「著者ステラ・サファイの名前で研究機関に送りつけようと思います」

「分かりました。一介の司書が送るよりもミッドフィルド家のディーベルド様が送った方がよろしいでしょう。では例の本をお返し願えますか?」

「どうぞ」


 俺は周りからは見えないようにそっと『石化術の使用と効果』の本を返却した。


「確かに。ディーベルド・ミッドフィルド様。貴方は噂以上に高潔な方でした」

「いや、噂通りの奴だと思いますよ。私はできる人に本を貸しただけですし」

「そういった導きをすることが大事だと思いますよ」

「ですかね」

「はい」


 ここまで褒められるとこそばゆいな。俺は司書に改めて礼をいって図書室を後にした。


 図書室から貴族寮に戻る際のことである。何者かが俺の背後から近づいてきている。俺は獲物を抜こうとして、やめた。知り合いの気配だったからである。


 彼女はぶつかるように俺の背中に抱き着いた。


「……どうしたんだ。ステラ」

「ディーベルド。興奮しない?」


 むしろ暗殺されるんじゃないかと驚いたかな。自分でもそう感じたことには驚いたが。この間の暗殺未遂が意外とこたえているのかもしれない。


「これでは興奮しないかな」

「……そう」


 そっと名残惜しそうに離れるステラ。このままでは良くない気がするな。

 俺はそっとステラの手を握った。


「少し歩こうか?」

「……ん」


 夕暮れの中、俺とステラは手を繋いで歩いた。ステラは少々照れているようだ。いつもよりも口数が少なく、うつむきがちになっている。広場の階段のところにやってきた。


 さて、どうしたものか。俺の(数少ない)女性経験がいっている。ここは攻め時だ。


「ステラ、頼みがあるんだ。俺の女になってくれ」

「……ん。私ディーベルドのことが好き。私を貴方の女にしてください」


 ステラは階段を一段、二段と登ると小鳥がついばむように俺の唇にキスをした。


「よろしくお願いします」

「ああ。よろしく」


 俺と付き合うにあたり、いっておかなければならないことがある。


「ステラ。俺には他にも好きな女がいる。でもステラのこと幸せにしてみせるから」

「ん。私のこともちゃんと見てくれなくちゃ、やだよ」

「任せておけ」


 これでもう。我慢はしなくてもいいということだな。俺はステラをお姫様抱っこした。


「ディーベルド?」

「悪いけど、ステラ。俺はもう我慢できない」

「ディーベルド、私、心の準備が」

「大丈夫、大丈夫」

「大丈夫じゃない」


 そんな会話をしつつ、貴族寮の自分の部屋にステラを連れ去った。


 ベッドの上に顔を真っ赤にしたステラを転がす。中々見られない表情だ。


「ディーベルドぉ」

「大丈夫だよ。力を抜いて、楽にして」


 俺はステラにキスの雨を降らせながら、ゆっくりとステラの服を脱がしていく。小さな身体。なだらかな胸。透き通るんじゃないかと思うくらい細い手足。どれもステラらしくて魅力的だ。


「ディーベルド、私おっぱいがないから」

「ない方がステラらしくて素敵だよ」

「なんだか複雑」


 女心は複雑らしい。ステラの身体は小さい。ゆっくりと全身を撫でていった。同時にキスもしていく。

 さて、ゆっくりと攻めていこうか。


 その時だった。扉がノックされた。

 俺はステラをシーツの中に隠した。


「失礼します」

「どうぞ」

「っ!?」


 ステラが身体をこわばらせる。シャーリーが中に入ってくる。ベッドの中にいる俺を見て既に察しているらしい。大体、脱がしたステラの服がベッド脇に散らばっている。だが、話を続けるらしい。なかなかの攻めである。


 俺も俺で、身体をこわばらせているステラの可愛らしい胸やお尻をソフトに刺激する。


「~っ」

「ディーベルド様。今夜の御夕飯の準備が出来ましたが、お食べになられますか?」

「いや、今は忙しい。あとで食べるから置いておいてくれ」

「かしこまりました」


 シャーリーはそっと扉を閉めた。

 シーツの中からそっとステラが顔を出す。


「絶対バレた」

「まあ、そうだな」


 シャーリーは鋭いからな。まあ、隠すつもりもなかったが。


「ディーベルドのばか」

「うん」


 うん。知っている。


「今日はここまで」

「ええー」


 そんな生殺しである。


「……だって泊まるって言ってない」

「お母さんに心配かけるのはよくないな」


 とはいえ、日も沈み始めているこの時間、ステラひとりで帰らせるのは心配だ。

 ステラと一緒に服を着る。


「送っていくよ。ステラ」

「大丈夫だよ?」

「俺が心配なんだ。大切な女の子に何かがあったらと思うとね」

「ディーベルド……」


 ベッドに腰を掛けている俺に膝立ちになってキスしてくれた。今日のことで慣れたのか、顔は赤くなってない。


「ありがとう」

「いや、こちらこそ幸せな時間をありがとう。行こうか」

「うん」


 茜色の空が、刻々と藍色に変わっていく。そんな空の下をステラと一緒に歩いていく。

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