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金策と王都の住人達

 放課後になった。今日は金曜日なので、明日、明後日と一日中ダンジョンに行くことができる。


 しかし、金曜日の内にやっておきたいことがある。そのためにまずは金策から始めることにした。それは公式裏技である。俺は初心者の間へ向かう。初心者の洞窟は玄関のすぐ近くにある転移門から行けるダンジョンだ。


 入るときに近くの生徒に笑われた。今更そんなダンジョンに行くの?って感じだろう。現実になるとこういった問題もあるのか。まあ、俺は俺のやりたいようにやるだけだ。細い石造りの通路のダンジョンに転移する。


 その通路を進むとすぐに石造りのドームが広がりゴブリンが一匹いる。さっさと首を刎ねる。そのさらに奥には装飾の施された壁がある。そこを剣で殴り続ける。100回ほど殴った時だろうか。剣が壁を透き通った。これでよしっと。通れるようになった。壁を進むと宝箱が置いてある。その中には1000万(ジール)が入っていた。これでお金の心配はなしと。


 俺はほくほく顔で初心者の間の帰還門から出た。このお金は恐らくだが、1週目で多くのヒロインを攻略しようという欲張りさんをサポートするために公式がわざと残したお宝だろう。ありがたく攻略のために使わせていただこう。


 とはいえ、まだ時間があるな。ついでにシャーリーたちにも協力してもらうか。

 俺は貴族寮に歩いている使用人を捕まえると、我がミッドフィルド家のメイドのシャーリーはどこにいるのか尋ねる。使用人は震えながら、今はキッチンにいるという。そんな怯えなくてもいいじゃないか。キッチンで調理中のシャーリーを発見する。


「シャーリー、悪いんだけど協力してほしいんだ。調理を他の使用人に引き継げないか?」

「ミッドフィルド家の使用人は何人もおりますので可能ですが……また変態ですか?」


 この間の学内掲示板の件を言っているらしい。


「それもあるけど、人手と交渉できる人材も欲しいんだ。シャーリー、手の空いている使用人を連れてきてくれ」

「かしこまりました。引き継いでくるので少々お待ちください」


 しばらくして、戻ってきたシャーリーと使用人たちを連れて学園を出る。


 俺はゲーム内の都市マップを脳裏に描きつつ、商店を目指した。店内の一角にあるカードパック、ヒューマンズ&モンスターズのパックをあるだけ購入する。店の在庫も全て出すように命じる。5ダースくらいは手に入った。シャーリーは呆れた顔で俺のことを見ている。

 商店内のお客様用のテーブルを占拠する。


 俺は使用人たちにパックを開封するように命じた。聖騎士エルトランを引くまで開封を続けるようにと。


 そして俺とシャーリーは中央広間に向かう。


「シャーリー残念なお知らせがある」

「……はい」

「これから解決するのは変態案件だ」

「…………はい」


 すごく嫌そうな顔をするシャーリー。そうだよな。嫌だよな。俺も嫌だが、被害者が出る前に片付けておきたいんだ。


「ちゃんと守ってくださいね。私はディーベルド様の使用人なのですから」


 そんなことをいってくれるシャーリー。かわいいなあ。


「任せておけ」


 俺は中央広場が見渡すことができる中央のグリフォンのモニュメント近くに陣取る。隣に大音量で演奏している人がいたので、それにまぎれて透明多腕魔法を使用しておく。しばらくしてからシャーリーに中央広場を歩いてもらう。すぐに犯人は分かった。鼻息を荒くして、シャーリーのことを見つめている少年だ。俺は少年の靴の上にそっと透明な手を置いた。


 少年はポケットから赤いボタンのついた四角い箱を取り出した。そしてその赤いボタンを押した。演奏が止まる。周りの雑踏が静止する。少年は自らの一物を取り出した。しごきながら、シャーリーに近づこうとする。俺は不意をついてみぞおちパンチをくらわした。


 意識を失う少年。俺は少年のポケットからボタン付きの箱を取り出した。脳裏に説明書きが浮かぶ。


『時間停止ボタンレベル1―――所有者は1週間に1回、10分だけ自分と触れている者以外の時間を止められるぞ!※ダンジョン内使用不可』


 なるほど。こういう仕様なのか。主人公はこのボタンを壊していたが俺は貰っておこう。使い道があるかもしれない。


 俺は透明多腕魔法で少年の衣服をはぎ取ってアイテム袋に入れ、裸の少年をグリフォン像にまたがらせた。よし。


 シャーリーと合流する。シャーリーは動かない。……この時間停止の仕様を確認しておかなければならないから。自分に言い訳をした。

脳内に表示されているタイマーはまだ余裕がある。

 俺はしゃがみこんで、シャーリーのスカートを持ち上げた。衣服は動かせると。シャーリーの手を握る。柔らかい。手の甲をさすってみる。これで、時間が動き出したらどんな反応をするのだろう。

 もうタイマーが0になる。さあ、どうだ。


「きゃっ」


 シャーリーが悲鳴を上げた。俺はすぐに現れる。


「済まない俺だ」

「誰かに手を触られたのですが、ディーベルド様でしたか……驚きましたよ」

「ごめん。代わりに今夜の内容をシャーリーが決めていいから」

「私にメリットが……いえ、ありがとうございます」


 止められていた間の感触はあると。俺はポケットの時間停止スイッチをアイテム袋に移そうとした。そのとき、脳裏に『使用可能』と表示された。所有者が違うからリセットされたのだろうか。中央広場に絶叫が響いた。


 それにしても、シャーリーにも秘めた欲望があったのか。

 シャーリーの要望に従って彼女が満たされる。俺も嬉しい。ウィンウィンである。


 商店に戻る。そこには女の子の使用人が聖騎士エルトランのカードを持っていた。


「褒美に何が欲しい。その聖騎士エルトランは使うからダメだが」

「実家の弟たちがこのカードを集めているので送ってあげたいです」

「分かった」


 俺は快く、開封済みのカードと未開封のボックスを彼女の実家に送る手続きをした。さて、人手はこれで十分なのでシャーリー以外の使用人を学園に帰らせる。


 近くの河原に行く。そこには鼻の垂れた坊主頭のクソガキがいた。クソガキがいう。


「なあなあ、兄ちゃん。俺の宝物を見せてあげようか」


 俺はイラつく気持ちを抑えた。


「うん。見せてほしいなあ」

「えへへ。じゃーん綺麗な石だろ。山で拾ったんだ」

「うわー。綺麗だな。欲しいな」


 すごい棒読みの俺を、不思議な顔をしてシャーリーが遠くから見ている。


「うーん。俺の宝物だからな。そうだな……聖騎士エルトランのカードとなら、交換してやってもいいぜ」

「聖騎士エルトランってこのカードのことかな。偶然持っているよ」

「し、仕方ないから交換してやるよ」

「うわあ、ありがとう」


 俺とクソガキは互いの持ち物を交換した。その途端クソガキは言い放つ。


「へへへ。兄ちゃん馬っ鹿でえ。そんな屑石と貴重なカードを交換するなんて、相場って理解している?勉強した方がいいよ。頭の足りない兄ちゃん!」


 クソガキは逃げて行った。入れ替わりにシャーリーが近づいてくる。


「良かったのですかディーベルド様?」

「シャーリー、この石なんだと思う?」

「?さっきの少年は屑石だといっていましたが」

「アダマンタイトだよ。相場を理解してないのはあっちだ」

「アダマンタイトですかっ!」


 驚きに目を見開くシャーリー。アダマンタイトを利用した武具は大貴族であってもまず手に入れられない。レア中のレアだ。


「さあ、まだ用があるんだ。急ごう」

「まだあるんですか……」


 そこは学園を囲う都市の西地区にあるぼろい家の前である。

 夕暮れの中、1人のおっさんと2人の少女がいた。亜麻色の髪とぱっちりとした茶色の瞳を持つよく似た姉妹だ。

 おっさんはねちっこい話し方で少女たちに話しかける。


「おじさんはね。この借用書に基づいて、君たちを娼館に連れて行かなくちゃいけないんだ」

「待ってください。お金は必ず工面します。それに妹だけは!」

「お姉ちゃん!」

「うーん。もう期限が過ぎちゃっているからただでは、待てないかなあ。でもおじさんを、例えば手で慰めてくれるなら1週間待ってあげてもいいよ」


 そんな話が展開されている。この王都はもうだめだ。変態が多すぎる。

 俺はシャーリーに聞く。


「なあなあ、シャーリー。親が作った借金を子どもが支払わなくちゃいけないものなの?」

「……借用書の内容にもよりますが、大体の場合は子どもにも責任があるとされます」

「そうなのか」


 法律面から助けることはできないらしい。それに親の借金を子どもが支払う必要があるなんてハードモードである。仕方ない、いくか。


「待った」


 俺は姉妹とおっさんの間に割って入った。


「ああん?おじさんはこの子たちと商売の話をしているんだ!邪魔するんじゃねえよガキが!」

「誰に向かってものをいっている。無礼討ちにしてやってもいいんだぞ」

「き、貴族様で!申し訳ありません。申し訳ありません」

「それで、この子らの借金はいくらなの?」

「……300万Zです」

「シャーリー。借用書を改めてくれ。これは有効なものなのか?」


 シャーリーは真剣な顔で借用書を隅から隅まで改める。


「……法外な利子ではありますが有効です」

「そうなんですよ。貴族様。私は商売をしているだけなんです」

「じゃあ、300万Z払うから、この借用書もらうな」


 俺はずしりとした金を支払う。


「いくら貴族様とはいえ、このような横入りは……」

「俺は短気なんだ。これ以上ぐだぐだいうなら相応の覚悟を持っていえよ」


 おっさんは黙って金貨を数える。


「へい。確かに300万Zいただきました。それでは失礼いたします」


 おっさんはこちらを睨んだ。睨んできたのが癪に障ったので剣に触れると、慌てて逃げていく。……ここが時間停止ボタンの使い道か。視界から消えた後にボタンを押す。ダッシュで雑踏の中にいたおっさんに近づいて、300万Zを取り戻した。次に服を透明多腕魔法で奪い取ってアイテム袋に仕舞う。ついでにさっき癪にさわったのでヤクザキックとみぞおちパンチをくらわせた。


 悠然と戻った頃には、人々の絶叫が聞こえてくる。

 うん。大丈夫そうだ。


 気を取り直して、俺は呆然としている姉妹に向き合った。

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