表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/121

#93 夏でもはっきりとした温もり

ユニーク1800PV、ありがとうございます。

「ねぇ、瑠璃の出番って何時くらいなの?」


「えーっとね……」


 人ごみでひしめく参道を歩く途中、井寄がスマホを手に取った。おそらく、あらかじめ九条に聞いていたのだろう。それにしても、こんな歩きづらい中でスマホを触れるとはな。ぶつからないか不安で仕方がない。


「桃、まずはこの人ごみを抜けてからだ」


「あっ、うん……!」


 誘導も兼ねて、茂木は井寄の手を掴む。その行動に、井寄の瞳はときめきを宿していた。

 境内へと上がっていく二人の背中を見ていると、後ろから引かれる感覚がする。


 振り返った俺は、夕夏と目が合う。

 この状況で何を求められているか。それが分からないほど、俺も鈍くない。


「手、繋ぐか」


「……うん」


 思えば、海にいる時は動いてばかりだったから、ほとんど手は繋いでいない。だから、こうして手の温度を重ねるのは、意外にも久しぶりのことだった。

 離れないようにしっかりと、互い違いに指を絡めて、俺達は茂木と井寄を追った。


「うわぁ、すごい……」


 日が沈んだ暗い空を、提灯の群れがほんのり照らしている。その仄かな灯りが、温かな光景を作り出していた。


「参道の方もだけど、こっちも出店で賑わってるな」


 とはいえ、空間が広い分、境内の方が開放的だ。夜風の冷たさも、蒸し暑さの残るこの時間には気持ちいい。


「一旦落ち着こうかと思ってここまで上がってきちゃったけど、どこから回ろうか」


「夕夏とトモちんは、食べたい物とかある?」


「私は、チョコバナナが食べたいかな」


「俺は焼きそばが食べたいな。さっき移動中に見つけて、美味しそうだったんだ」


「あははっ、トモちんってもしかして食いしん坊?」


「い、いいだろ! 昼から何も食べてないんだよ!」


 集合時間の都合上、何かしら軽食を食べておこうという話だったのだが、どうせ出店で買うだろうと横着した結果がこれだ。

 恥ずかしながら、夏祭りに来て間もないというのに、もう空腹感を覚えていた。


「ちょうどいい場所があるじゃないか」


 辺りを見渡していた茂木が何かを見つけたようだ。


「二人一組で出店を巡って、ある程度物を買ったらあそこに集合っていうのはどうだい?」


 茂木の視線の先、境内にテント張りの一角があった。近づいてみると、ベンチを並べた仮設の休憩スペースのようだ。付近の掲示物を見ても、飲食禁止という表示はない。

 各々購入した物を持ち寄って、ここで晩餐会をするということか。


「いいんじゃないか。俺は賛成だ」


「私も私もー!」


「うん、いいと思うよ」


「それなら善は急げだ。売り切れや満席になってからじゃ遅いからね」


 集合を約四十分後に定めて、俺達は再び夏祭りに赴いた。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

面白い、続きを読みたいと思ったら、☆評価や感想などを頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ