#87 残り物に福はなかった
第一試合は、茂木と井寄チームVS堂島と九条チームだ。いきなり下剋上がかかった一戦となる。
「夕夏―、タイマーお願いねー!」
「任せてー」
夕夏は手元のスマホで、制限時間である九十秒(一分半)にタイマーを設定する。試合時間は短い。どちらも対戦する相手だから、俺達としては有益な情報になる試合だ。目を離すことはできない。
「それじゃ、いくよー! よーい、スタート!」
井寄から借りたホイッスルで、夕夏が試合の開始を宣言する。それに合わせて、水鉄砲を持った四人が一斉に動き出した。
「うおおおおっ!!」
開幕早々、魂のこもった声を上げて前進する堂島。残り物には福があると言っていた彼が手にしているのは、細長い棒状の水鉄砲だ。空気入れのようにレバーを押し込むことで水を発射できる機構となっているが、肝心の水の貯め方が見ていても分からない。
「ふんっ!」
堂島の構えた水鉄砲から、勢いよく水が噴射される。見かけによらない威力に、銃口を向けられた茂木は一瞬焦りを見せる。そんな茂木が持っているのは、コンパクトな小銃。パッケージには、ノズルを変えることで水流を変えられるとあったらしいが、別売りのため強みは活かしきれていない。
「やるね、薫……!」
この試合では、額に装着したポイ以外が濡れても問題ない。だから茂木は全力で顔を逸らし、胸の辺りで堂島の攻撃を受ける。
続けて茂木に圧力をかけようとした堂島が、「はっ!」と何かに気付いたように大きな声を出した。
「こいつ、吸い上げ式か……!」
備え付けられたタンクに水を入れ、それを発射するものと違い、堂島の水鉄砲は都度水場から発射分を吸い上げてこないといけないようだ。
スポイトのような給水方式は、現在のフィールド――砂浜では痛手となる。給水のために離れれば、旗が狙われるのは確実だ。
しかし、チームは堂島一人ではない。
「もらい!」
堂島に気を取られていた前線を抜けて、九条が静かに旗に迫っていた。旗を取った時点で試合は終了。相手チームを撃破できずとも、勝利かつ三ポイントを手に入れることができる。思わぬアクシデントに対して、最短で試合を終わらせるつもりだ。
旗が手に触れる直前、一瞬の気の緩みが勝敗を左右した。
「きゃっ……!」
勝利を目前にして、九条の顔に水がかかる。そして、付けていたポイは見事に破れていた。
「ふふーん、桃ちゃんのことを忘れてもらっちゃ困るぞー?」
大容量タンクを背中に背負い、先ほど九条を倒した銃を構えるのは、得意げな様子の井寄。
「さて、観念してもらおうか」
「くっ……!」
じわりじわりと海に向かって後ずさっていた堂島に、茂木の水鉄砲が牙を剥いた。
結果は、残り時間が二十秒、敵チームの全撃破と旗の獲得で六ポイント。茂木達は、合計で八十秒を手に入れた。
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