#85 これで終わりと思ったか
「というわけで、結果発表! 優勝は、全勝の薫君&瑠璃チーム!」
「ふっ、最初こそ遅れを取ったが、完璧な勝利だ」
悦に入った堂島は、実際それだけの活躍をしてみせた。唯一の運動部所属というアドバンテージは、想像以上に大きかった。水中でも地上と同じように動けるなんて、反則だ。
「堂島君のおかげで、お昼はタダだよ」
「む、そうか。優勝者はそんな特典があったんだったな」
「え、もしかして忘れてたの?」
「そうだな。俺は勝つ為に勝負をしてただけだ! 報酬に興味はない!」
ここまでの勝負意識が、勝ちを引き寄せているのかもしれない。今度の大会でもレギュラーに選ばれている、どんな活躍をするのか楽しみだ。
「そして、最下位は……?」
ドラムロールでも鳴りそうな雰囲気と共に、井寄の視線が俺達の間を駆け巡る。だが、もったいぶっても仕方ないだろう。なぜなら、たった三チームしかないのだ。勝敗計算に苦戦することもない。
「じゃん! 私と颯斗君チームです! わーん、全敗だよー!」
ぺたんと座り込んだ井寄は、声を上げる。さすがに全敗は応えたのか、茂木も肩を落としていた。
「薫、瑠璃、昼食はほどほどに頼むよ」
「善処する、と言いたいところだが、運動すると腹が空くからな」
「私は、元々そんなに食べないし」
九条が少食な分、堂島がたくさん食べるだろうから、茂木チーム的には痛手になりそうだ。
「でもさ、お昼にはまだ早いよね」
夕夏の言葉通り、海の家に設置されている時計は十時半を示していた。
「休みの日とかはこれくらいに朝食だもんな」
「ダメだよ、ちゃんと起きなきゃ。あ、そうだ! 私が毎朝電話で起こしてあげようか?」
「ま、毎日……」
「何? 彼女と毎日電話できるんだよ? 嬉しくないの?」
詰め寄ってくる夕夏に、俺はたじたじだ。もちろん、夕夏と毎日電話できるのは、結構嬉しい。しかし、休日の過眠というのは気持ちのいいものだ。それを引き換えに差し出すのは惜しい。
「毎日なら、寝る前にしないか? ほら、カップルはそういうことするって聞いたし」
俺は、逃げることを選択した。
目的は俺を起こすことだから、夜に通話しても意味がない。それどころか、夜更かしして起きられない可能性すら発生する。
本末転倒だと、一蹴されるものだと思っていたのだが、夕夏の様子がどうにもおかしい。黙ったまま、悩む素振りを見せている。
「……それ、いいかも」
「そ、そうか?」
「なんかすごい恋人っぽくない?」
「そ、そうだな……!」
なんと、説得に成功してしまった。夕夏の天秤からは、もう俺を起こすことなんて消えたようだ。恋は盲目と言うが、これは相手の印象に限らず、物事の判断全般に言えるのかもしれない。
「二人とも、イチャつくにはまだ早いよ! 優勝も、最下位も決定じゃないんだから!」
突然、掟破りの宣言をした井寄は、どこからか水鉄砲を取り出した。ずらっと並ぶそれは、人数分用意されている。
「次は、水鉄砲で勝負だよ!」
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