#84 手加減なしのバトル
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「じゃあ、準備はいい?」
井寄の問いかけに、俺は夕夏と顔を見合わせて頷く。俺達は今、足元を海に浸からせていた。
「それでは、第一回バレー対決を始めまーす! ルールは簡単! 一チーム二人で、先にボールを三回落とした方が負け! ちゃんと戦うために、ボールは相手に打つこと!」
ルール説明を聞きながら、俺は最初の対戦相手に目を向ける。眼前には、堂島と九条。運動能力では、堂島一人で百人力といったところだろう。
「四人とも頑張れー」
待機中の茂木が、激励の声を掛ける。パラソルの下で優雅にくつろぐ姿は、さながらテレビ中継を自宅で観戦しているようだ。
「頑張ろうね、友哉君」
「ああ」
「友哉、彼女の手前いいところを見せたいだろうが、先に謝っておく。俺は、勝負で手を抜くことはできない!」
「……その堂島に勝てば、もっと格好いいな」
俺は、苦し紛れに虚勢を張る。
とはいえ、足場を海に置いている現状は、足腰に自信がある堂島といえど初体験のはずだ。水を掻き分けて進む重さが、どれだけ勝利の助けになるか。
「ねぇ、桃。全部勝ったら何かあるの?」
「何かっていうと?」
「例えば、お昼奢ってもらえるとか」
勝敗に価値をもたらすには、何かを賭ける必要がある。勝利の先が見えると、俄然やる気が湧いてくるものだ。
「瑠璃、やる気だねー」
「別に……勝てそうなゲームだから、景品が欲しいと思っただけだから」
九条は、濡れて艶っぽくなった黒髪に触れて答える。
男女混合というペア組みの時点で、俺と組むよりも茂木と組むよりも、堂島と組む方が安泰なのは間違いない。
「手加減はいらない。二人とも全力でかかってこい!」
「それじゃあ、最下位の二人は優勝者にお昼を奢ること! よーい、スタート!」
どこから用意したのか分からないホイッスルを井寄が吹き、戦いの火蓋が切って落とされた。第一投は、審判(兼賑やかし)の井寄から放たれる。
宙を舞ったボールに、誰よりも先に反応したのは堂島だった。
「ふんっ!」
いきなり、腕を振りかぶったスパイク。手加減なしの一撃だ。ゆるやかに飛んでいたボールが、鋭角に俺へと打ち込まれる。
だが、ルール上ボールは必ず人に向けて打たれる。つまり、剛速球であれば待っているだけでいいのだ。俺は記憶を頼りに、バレーの受けの姿勢を取る。
「くっ……!」
衝撃を受けた両腕に、ピリピリとした痛みが走る。ボールは俺の腕で跳ね返り、無事に九条の上空に飛来する。
「んっ」
それを九条は容易く打ち返した。そして、それは夕夏の方向。俺にできることは見守ることだけだった。
「えいっ!」
浮いたボールを、夕夏は気合いの入った声でスパイクする。ジャンプしての一撃だ、打点は高い。
ボールは加速し、堂島のもとへと向かった。ただ、その軌道には一つ問題があった。
「ぶはっ……!」
それはちょうど、堂島の顔の高さだったのだ。本来のバレーボールと違い、チーム間の距離は狭い。そのせいで、顔に飛んできたボールに堂島が反応するのも間に合わなかった。
「やるな、明海……」
そう言って、堂島は仰向けに倒れる。顔で返したボールは、俺に決めろと言わんばかりの好球だ。
勝負の世界に慈悲はない。俺の打ったボールは、倒れた堂島の横で海面に波紋を作り出した。
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