表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/121

#84 手加減なしのバトル

ユニーク1400PV、ありがとうございます。

「じゃあ、準備はいい?」


 井寄の問いかけに、俺は夕夏と顔を見合わせて頷く。俺達は今、足元を海に浸からせていた。


「それでは、第一回バレー対決を始めまーす! ルールは簡単! 一チーム二人で、先にボールを三回落とした方が負け! ちゃんと戦うために、ボールは相手に打つこと!」


 ルール説明を聞きながら、俺は最初の対戦相手に目を向ける。眼前には、堂島と九条。運動能力では、堂島一人で百人力といったところだろう。


「四人とも頑張れー」


 待機中の茂木が、激励の声を掛ける。パラソルの下で優雅にくつろぐ姿は、さながらテレビ中継を自宅で観戦しているようだ。


「頑張ろうね、友哉君」


「ああ」


「友哉、彼女の手前いいところを見せたいだろうが、先に謝っておく。俺は、勝負で手を抜くことはできない!」


「……その堂島に勝てば、もっと格好いいな」


 俺は、苦し紛れに虚勢を張る。

 とはいえ、足場を海に置いている現状は、足腰に自信がある堂島といえど初体験のはずだ。水を掻き分けて進む重さが、どれだけ勝利の助けになるか。


「ねぇ、桃。全部勝ったら何かあるの?」


「何かっていうと?」


「例えば、お昼奢ってもらえるとか」


 勝敗に価値をもたらすには、何かを賭ける必要がある。勝利の先が見えると、俄然やる気が湧いてくるものだ。


「瑠璃、やる気だねー」


「別に……勝てそうなゲームだから、景品が欲しいと思っただけだから」


 九条は、濡れて艶っぽくなった黒髪に触れて答える。

 男女混合というペア組みの時点で、俺と組むよりも茂木と組むよりも、堂島と組む方が安泰なのは間違いない。


「手加減はいらない。二人とも全力でかかってこい!」


「それじゃあ、最下位の二人は優勝者にお昼を奢ること! よーい、スタート!」


 どこから用意したのか分からないホイッスルを井寄が吹き、戦いの火蓋が切って落とされた。第一投は、審判(兼賑やかし)の井寄から放たれる。

 宙を舞ったボールに、誰よりも先に反応したのは堂島だった。


「ふんっ!」


 いきなり、腕を振りかぶったスパイク。手加減なしの一撃だ。ゆるやかに飛んでいたボールが、鋭角に俺へと打ち込まれる。


 だが、ルール上ボールは必ず人に向けて打たれる。つまり、剛速球であれば待っているだけでいいのだ。俺は記憶を頼りに、バレーの受けの姿勢を取る。


「くっ……!」


 衝撃を受けた両腕に、ピリピリとした痛みが走る。ボールは俺の腕で跳ね返り、無事に九条の上空に飛来する。


「んっ」


 それを九条は容易く打ち返した。そして、それは夕夏の方向。俺にできることは見守ることだけだった。


「えいっ!」


 浮いたボールを、夕夏は気合いの入った声でスパイクする。ジャンプしての一撃だ、打点は高い。

 ボールは加速し、堂島のもとへと向かった。ただ、その軌道には一つ問題があった。


「ぶはっ……!」


 それはちょうど、堂島の顔の高さだったのだ。本来のバレーボールと違い、チーム間の距離は狭い。そのせいで、顔に飛んできたボールに堂島が反応するのも間に合わなかった。


「やるな、明海……」


 そう言って、堂島は仰向けに倒れる。顔で返したボールは、俺に決めろと言わんばかりの好球だ。

 勝負の世界に慈悲はない。俺の打ったボールは、倒れた堂島の横で海面に波紋を作り出した。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

面白い、続きを読みたいと思ったら、☆評価や感想などを頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ