#78 こういう身銭の切り方もある
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食堂から教室までの道中、体を揺らす振動を感じて明海の方へと向く。見ると、明海が俺を肘で小突いていた。
「どうかしたか?」
そう尋ねた直後、明海の顔がぐっと迫ってきた。反射で後ずさらなかったのは、動くよりも先に硬直がきたからだ。互いの息が届きそうなほどの近さで、明海は俺に囁きかけてくる。
「旅行の話、結局どうするつもりなの?」
明海の気がかりは、さっきの食堂での件だった。俺がさりげなく(ということにしている)行動を取ったのもあって、明海は気を遣い小声で話しかけてくれている。
真意を伝えず、俺は明海を誘導した。一体何を考えているのか、そこを問おうとしているのだろう。
明海と共に集団から距離を取り、彼らに聞こえない程度の声量で話始めた。
「旅行って結構金かかるだろ? 行くってなったら、明海はどうやって金を用意する?」
「今までのお年玉とか、期末テスト頑張るとかかな。それでもダメなら、夏休みだけバイトするかもだけど」
「けど、部活がある堂島と九条が、同じようにバイトできるとは限らない。それに、成績的に茂木はテストで稼ぐことはできないと思う」
井寄だって、バイトしているとはいえ、余裕があるとは考えにくい。女子のオシャレには、相当な金がかかると聞いたことがある。
じゃあどうするんだ、という困惑を見せる明海に、俺は自信満々に言った。
「そこで俺の出番だ。俺なら、財布に与えるダメージはほとんどない」
「もしかして……」
「俺がみんなを旅行に連れていく」
これが、俺なりに辿り着いた結論だ。パシリをさせられて焼きそばパンを買いに行かされたり、友達という繋がりを盾に食事を奢らされるような惨めさはない。対等に接してくれる彼らにだからこそ、俺は自分の持つ長所を使いたいと思った。
「明海は知ってるだろ? 俺にどれだけ余裕があるか」
「それは知ってるけど……」
関係を継続するために貢ぐのではなく、よりみんなで楽しめるように投資をする。
青春を謳歌するためなら、これくらい安いものだ。
「そんな行き方で、みんな納得してくれるかな?」
たしかに、突然俺が「みんなの分の旅行費を出すから安心してくれ」なんて言おうものなら、全力で止められる未来が想像できてしまう。
だが、問題はない。俺の考えは、この閃きありきで生まれたものなのだ。
「来週にでもチケットを買ってこようと思ってるんだ。福引で当たったってことにして」
六人分というのはさすがに都合が良すぎる気もするが、そこは明海と協力してどうにか誤魔化そうと思っている。
「うーん……ちゃんと納得したわけじゃないけど、一応そこまで考えてたんだったら止めないよ」
「ありがとう」
「その代わり、新宮君が一番楽しむこと。休む暇なんて、絶対にあげないからね」
悪戯っぽく笑う明海は、それだけ言うと俺の手を取って駆け出した。俺の、俺達の友達のもとへ。
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