表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/121

#64 それぞれの対面

ユニーク1200PV、ありがとうございます

「いつからなの……?」


 堂島に続いて、井寄がそう聞いた。井寄は、茂木が付き合い始めた(と嘘を吐きだした)初めの頃から知っているのだ。その関係が、実は以前に解消されていたと聞いて驚いているのだろう。

 九条とほどの長さがなくとも、茂木と井寄も中学時代からの仲だ。このまま幸せでいてほしかったという気持ちが、他より湧いていてもおかしくない。


 井寄がこの話題を早々に流すかもしれないという心配は、杞憂だったようだ。


 井寄に問われ、茂木は一度目を閉じてからゆっくりと答える。


「中学卒業の少し前かな。彼女の方から、別れを告げられてね」


「……そっか。じゃあ、高校入ってからデートに行くって言ってたのは?」


「あれは……別れたって言い出しづらくて。嘘を吐いてたんだ、ごめん」


 そう言って、茂木は井寄に頭を下げる。事情を知る俺には、この謝罪が額面通りのものには感じられなかった。


「ねぇ、聞いてもいい?」


 九条は、前に座る茂木を真っ直ぐと見据える。ここで九条が名乗りを上げたのは、俺にとっては意外なことだった。元々、口挟まないよう頼んでいたこともある。まぁ、これに関してはもう目的を達したから問題はない。それよりも、茂木の恋愛事情に九条が関心を示すとは思っていなかったのだ。


 たしかに、他の友達と比べても、九条のことはまだまだ分からない。俺の察しが悪いだけで、九条も腐れ縁として思うところがあるのだろうか。


「なんだい?」


「その彼女さんのこと、好きだった?」


「当時はそう思ってたけど、今振り返ってみると……どうだろうな。あれが恋だったとは、言えないかもしれないね」


 茂木の答えに、九条は「そう」と短く返すだけで、それ以上を尋ねることはしなかった。果たして、九条の真意がどこにあったのか。俺は計りかねていた。


 そうして、作戦は無事に成功し、放課後を迎えた。ここから先、恋愛素人の俺が茂木に助力できることはほとんどない(はずだ)。とはいえ、俺にできることであれば全力で力になる。

 だが、今日に限っては俺の仕事は終わりのようだ。人が疎らになってきた教室で、井寄に声をかける茂木を見ながら思う。


「桃、一緒に帰らないか?」


「うん……あ、そうだ」


 井寄は何かを思い立ったように辺りを見渡し、九条に手を振った。


「瑠璃、今日部活ないでしょ? 一緒に帰らない?」


「私はいい、残ってやることがあるから。桃はモテ男君と帰ってて」


「はーい」


 間延びした返事をして、井寄は茂木と教室を後にする。廊下に出る直前、軽く振り向いた茂木が俺にウィンクをしてきた。俺はその背中を見送り、胸中でエールを飛ばした。


(……俺も、向き合わないとだよな)


 席で帰り支度をしている明海を、横目で確認して息を吐く。茂木と井寄の恋路に、俺が干渉することは少なくなるだろう。それなら、もう意固地にならず明海と話をするべきだ。


「あ――」


 決心を固め、明海の名前を呼ぼうとした時のことだった。


「新宮君、ちょっといい?」


 それに先んじて、九条が俺を呼び止めた。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

面白い、続きを読みたいと思ったら、☆評価や感想などを頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ