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#61 漢の会議

 翌朝、明海が俺の家を訪ねてくることはなかった。昨日、何も言わずに茂木と帰ったのだから、当然の結果とも言える。あらかじめ説明をしておくべきだったとは分かっている。けれど、互いの意見をぶつけた廊下でのやり取りから、どうも話しかけにくく感じるのだ。


 一人で登校し、教室に足を踏み入れると、席にはすでに明海の姿があった。俺はその後ろを通り抜け、自分の席へと座る。挨拶を交わすことはなかった。


 それから、昼休みがやってきた。俺は、茂木と共に堂島の席まで向かう。


「む、どうしたんだ二人とも」


「今日、一緒に昼食べないか?」


「わざわざ言わなくても、大体は一緒に食べてるだろ?」


「そうじゃなくてさ。男だけで、屋上で食べないかって話だよ」


 茂木の誘いを聞くと、堂島の表情が引き締められる。この会話だけで、一体何に勘付いたというのだろうか。

 堂島は静かに立ち上がり、その巨体で俺達を見下ろして言った。


「了解した、すぐに行こう」


 夏に突入してからというもの、太陽は別人のような顔を覗かせていた。春の穏やかな陽気はどこへやら、屋上では燦燦と照る陽光が猛威を振るっている。


「やっぱり、飲み物買い直して正解だったね」


 自販機から出たばかりの飲料(今日も今日とて紅茶だ)が、茂木の喉を音を立てて通っていく。その気持ちいいくらいの飲みっぷりに釣られて、俺も手元のペットボトルを傾けて水分を補給した。


「ぬるい……」


 朝、家から持ってきた緑茶からは、もう清涼飲料としての冷たさを感じない。仕方がないから、教室までの道のりで買い直すとしよう。


「それで、今日はどんな会議をするつもりなんだ」


 そう話を切り出した堂島に、俺は驚きを隠せなかった。まさか、本当に察しがついているとは思わなかったのだ。


「その前に聞いてもいいか? 堂島は、何か知ってるのか?」


「何か、というと?」


「明海から、話を持ちかけられた……とか」


 先に明海から真実を知らされていれば、俺達が堂島に声をかけた理由にも合点がいくのかもしれない。まぁ、明海が茂木の確認も取らずに口外するとも思えないのだが。

 そんな俺の推測を、堂島は間髪入れずに否定した。


「俺は何も聞かされてない。ただ、屋上で話があるというから、てっきり友哉がまた不甲斐ないことでもしたのかと思っただけだ」


「ぐっ……」


 そういえば、前回ここで昼食を取ったのは、俺が告白する日のことだったか。決心したはいいものの、明海に一切話しかけられなかったあの日。屋上で尋問された時の記憶が、鮮明に蘇ってきた。


「こ、今回は、俺じゃなくて茂木の話なんだ」


 実は、現在進行形で不甲斐ないというのは伏せておこう。誤魔化そうとした声が震えたのを無視して、俺は話を続ける。


「堂島には、茂木の秘密を知ってもらいたい。それで、俺達に協力してほしいんだ」


「なんのことかさっぱりだが、話してくれるのなら聞かせてくれ。もちろん、友人のためだ。協力は惜しまない」


 頼りがいのある言葉を、堂島ははっきりと口にする。その発言に、茂木は「ありがとう」と礼を言って、俺に話したように自分の秘密を打ち明けたのだった。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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