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#55.5 叶えたいこと

ユニーク1000PV、ありがとうございます。

 新宮君とモテ男君、二人に見送られて家に帰ってからしばらくして。スマホが着信を知らせたのは、そんな頃のことだった。


「……ってことがあって」


 電話口で、新宮君は男同士の密会で明かされた秘密を私に話した。モテ男君が嘘を吐いていたこと、そしてその理由も。人づてに聞いたからだろうか、全く現実味が湧かなかった。噂……みたいな感覚なんだと思う。

 今後の計画までを聞いてから、私は新宮君に尋ねた。


「その話、私にしちゃって大丈夫なの?」


「茂木にも確認は取ってある。相手は井寄なんだ、明海にも知ってもらってた方が何かといいだろうし」


 たしかに、彼らだけじゃ情報不足かもしれない。現に桃はモテ男君に彼女がいると思っているから、一定以上距離を詰めることをしていなかった。奔放に見えるが、その辺の線引きはできる子なのだ。……まぁ、奔放なこと自体は間違いないんだけど。


 忘れてはいけないのは、彼女には片思いの相手がいるという話だ。誰かは知らない。知っていることは、中学時代から片思いを続けているということだけ。

 桃の恋心は、できるだけデートに誘う前にはっきりさせておきたかった。友達だからモテ男君の恋路に協力はする。でも、桃だって私の大事な友達だ。彼女にも幸せになってもらいたい。


 そして、もう一つ。私にははっきりさせておきたいことがあった。


「ダブルデートっていうのは誰が言い出したの?」


 話の流れ的に新宮君なんだろうけど、一応の確認だ。念のため、彼の口から聞いておきたい。

 向こう側で逡巡があった後、狼狽えた声が答えを明かす。


「……俺だけど」


「へぇ、そうなんだ」


 持ち上がる口角を抑え込もうとすると、返事の声色は挑発的になる。

 正直、ダブルデートに興味はない。けど、新宮君が自分から夏祭りデートを企画してくれた事実が嬉しかった。


 その時期になっても話題が上がらなかったら、きっと私から提案したはずだ。それもそれでいいアプローチだと思うけど、私だって女の子だ。彼氏からデートのお誘いを受けてみたい。私が青春ノートを書いていたとしたら、『彼氏からデートに誘われる』という項目が間違いなくあった。


(そうだ、ノートといえば……)


「モテ男君にされたのって、恋愛相談なんだよね」


「そうなるな」


「じゃあ、ノート埋められたんだ」


「それだけじゃなくて、『放課後にゲームセンターで遊ぶ』『友達と、彼女とプリクラを撮る』『友達と外食をする』『彼女をデートに誘う』も埋められたよ」


 成果を報告する新宮君は、嬉しそうに声を弾ませる。あれだけ嫌がっていたのに、プリクラ関連の項目があるのは抜け目ないと感じた。もしかしたら、あとから追加したのかもしれないけど。

 ご満悦な彼を想像したら、私は中途半端な結果じゃ満足できなくなった。新宮君には、もう一度恥ずかしい思いをしてもらうことにしよう。


「ねぇ、新宮君」


「なんだ?」


「私、まだデートに誘ってもらってないけど」


「さっき、ダブルデートで夏祭りに行くって話しただろ?」


「話は聞いたけど、誘ってもらった覚えはないなー」


 白々しい私の態度に、新宮君は動揺を露わにする。どうせノートを埋めるなら、完璧に成功させてからだ。

 やがて、少しの間を空けて新宮君が口を開いた。


「明海」


「――っ、何?」


 急に真っ直ぐと名前を呼ばれ、跳ねる心臓を抑えながら答える。


「夏祭りの日、予定空いてるか? あ、いつやるのか調べてなかった……えっと、まだ日付は分からないんだけど……」


 申し訳なさそうな声で、肩を落としている姿が目に浮かんだ。別人のように慌て始めた様子がおかしくて、つい笑いが堪えきれずに漏れてしまう。


「ぷっ、あははっ! それじゃ格好つかないじゃん! いいよ、私の予定は新宮君のためにいつも空けてるから」


「ちゃんと予行練習しとくべきだった……」


「せっかくドキドキしてたのに惜しいなー」


「ドキドキしてくれてたのか?」


 そう新宮君に聞かれ、私は自分が口を滑らせたことに気付いた。もう、誤魔化すことはできない。というよりも、その事実を嘘にはしたくなかった。


「そうだよ? ……私、新宮君にデート誘ってもらうの夢だったんだから」


「よし、分かった。今度、もう一回誘わせてくれ。次は明海の夢を叶えてみせる」


 もし、その時が来たとしたら。彼に下の名前を呼んでもらいたいと、私は密かに新しい夢を抱いた。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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