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#52 頭だけじゃなく、ハートも撃ち抜け

 次のゲームは、さっきとは打って変わって協力型だ。外界から遮断されたブースの中で、銃を使ってゾンビを撃ち倒す。シンプルかつ焦燥感を掻き立てられるゲームらしい(茂木談)。


「ただ、このゲームは二人用でね。銃が二つしかないんだ」


 俺達は三人。一人が暇することを茂木は心配しているのだろう。それが杞憂だと伝えるため、俺は首を横に振った。


「一つは茂木が、もう一つは俺と明海で持つから大丈夫だ。これなら、三人で遊べるだろ?」


「見せつけてくれるじゃないか」


「揶揄わないでくれって」


「友哉はこう言ってるみたいだけど?」


 茂木の視線は、明海に向けられる。明海は、モジモジとしながらゆっくりと口を開いた。


「……結構キュンときたかも」


「なっ……何言ってるんだ!?」


 あまりにも直球な発言に、狼狽えずにはいられない。白状すると、俺は別にイチャつくために提案をしたわけじゃなかった。ただ、二つの銃を三人で持つための、一番無難な組み合わせを考えただけだ。

 たしかに、俺が独占欲を出した風にも見えるけども。


 ……案外、内心ではそう思ってたりしてな。無意識に茂木から明海を遠ざけようとしていたのかもしれない。以前の明海みたいに嫉妬せず済むように。


「それだけアツアツだと、羨ましくなるよ」


「茂木は彼女と――」


「さ、そろそろ始めよう。遊ばないのに前に立ってると、迷惑になるしね」


 それだけ言って、茂木は一足先にカーテンの向こうへ入っていく。俺と明海は顔を見合わせ、無言で頷き茂木に続いた。

 中に入ると、スピーカーから響く音が臨場感を演出していた。ゲームセンターという室内にいながら、さらに狭く隔てられた空間。相手がゾンビということもあって、恐怖心を増す仕掛けは万全というわけか。


 俺を真ん中に、左右を茂木と明海が挟んでいる。俺には勿体ない、両手に美男美女状態だった。


「のんびりしてる時間はないよ。ほら、銃を持って」


「ああ」


 茂木に催促され、俺は銃を手に取る。直前のレースゲームで白熱し火照った手の平に、銃のひんやりとした感覚が心地いい。


「これを私も握ればいいんだよね」


「……ああ」


 自分で言い出しておいて、いざその時が来ると緊張が走ってしまう。手を繋ぐのとはまた違う、添えるように触れた温もりに心臓が音を立てる。


「よーし、頑張るぞ」


 画面の放つ光が、明海の横顔を暗がりに映し出す。間近で見つめても揺らぐことのない美貌は、同じ人間なのかと疑ってしまうほどだ。

 恋は盲目と言うが、こんなに綺麗なものを見られるのなら、盲目でも構わないと思った。


「なんかドキドキするね」


「そうだな」


 そのドキドキは、果たして俺と同じものだろうか。ちなみに俺は、ゾンビには全くドキドキしていない。


 俺達が座る筐体は、三人掛けが限界の幅しかないのだ。加えて、俺と明海の腕は同じ一つの銃に伸ばされている。その結果、明海が驚くほどに近かった。

 まるで、腕に抱きつかれたあの時と同じ密着感。気持ち悪い思考にならないよう気を付けつつ、目の前の画面に集中する。


「きたよ友哉、夕夏!」


「分かった!」


「任せて!」


 全体の右半分、自分達に近い場所から現れるゾンビに銃弾を撃ち込んでいく。しかし、ここで問題が発生する。


「新宮君、こっちからも来てるよ!」


「けど、あっちもやらないと……!」


 四本の腕、二人の人間が操作しているのだ。連携面で、俺達はハンデを背負っていた。上手く狙いが定まらず、ゾンビからの攻撃を受けてしまう。


「やばい、このままじゃ……」


 がむしゃらな抵抗の中、弾幕を掻い潜っていた一体のゾンビが迫る。が、その脅威に俺達が晒されることはなく、ゾンビは頭を爆ぜさせた。


「このゲームは協力プレイだ。困ったらお互い様だよ」


「茂木……」


 存在しないはずの、俺の乙女の部分が反応しそうになる。ちょうど第一ステージが終了し、ひと息つく。

 その後も第二、第三ステージと踏破していく過程で、茂木にハートを撃ち抜かれ続けたのは言うまでもないだろうか。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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