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#51 甲羅にはお気を付けて

ユニーク900PV、ありがとうございます。

 電車で数分、俺達は近隣の繁華街にやってきていた。今回のミッションは、ずばり『放課後にゲームセンターで遊ぶ』だ。学生が制服姿で遊びに行く場所といえば、某ねずみの国を除けばここしかないだろう。

 入店してすぐ、筐体が発する騒がしい音に出迎えられる。


「ゲームセンターで遊ぶって、何するの?」


「それが、実はあんま考えてないんだ」


「それなら、とりあえず一周見て回ろうか」


 大通りの喧騒が可愛く思えるほどの空間では、声を張り上げないと会話が成立しない。内容が丸聞こえなんじゃないかと不安にもなるが、そもそもが賑やかなので、周囲の声も近づかなければまともに聞こえなかった。


「これとかどうだい?」


 茂木が目を付けたのは、四台横並びのレーシングゲーム。同時に遊び始めれば対人戦ができる仕様だ。無免許の俺でも簡単に操作できそうな、ハンドル以外にアクセルとブレーキしかないデザインが気に入った。


「いいな、まずはこれにしよう」


「じゃあ、私もやろうかな」


 俺達はシートに腰掛け、ゲームを開始する。プレイするキャラクターを決め、コースを選択。それぞれのキャラ以外はNPCだ。つまり、重要な対戦相手は二キャラだけと言ってもいい。この手のゲームの経験はないが、勝負する以上勝ちを狙わせてもらう……!


 眼前のモニター中央部に、カウントダウンが大きく表示される。それが「0」になったと同時に俺は右足で力強くアクセルを踏んだ。しかし、その力みに反して俺のキャラクターはゆるやかに動き出すだけだった。そして……


「お先に失礼するよ」


 俺の隣に並んでいたはずの茂木のキャラクターが、いきなり加速し、俺を置き去りにする。スタートダッシュで、開始早々俺は茂木に距離を離されてしまった。


「くそっ……!」


 テクニックなどは無視して、俺はとりあえず最短ルートでコースを駆けた。始めこそ差をつけられたが、勝敗は三周を終えるまでは分からない。それに、このゲームには逆転の要素があるのだ。

 道中のアイテムボックスを拾い、入手した甲羅型アイテムを前方を走る茂木のキャラに投擲する。


「おっと……やるね友哉」


 未だ首位の茂木は、まだ余裕の様子だ。一方、明海はというと。


「あれ? 全然進まないんだけど! ……あ、こっちブレーキか」


「わっ……きゃっ! またぶつかった!」


「何この矢印? え、もしかして逆走してる?」


 こんな感じで、予想外のポンコツっぷりを発揮していた。それが可愛く思えて気が緩みそうになると、茂木の煽りで勝負の世界に引き戻される。


「このままじゃ、いつまで経っても追いつけないよ」


「それはどうかな」


 俺は使わずにいたアイテムを発動し、自らのキャラクターを砲弾へと変化させる。ここから先、しばらく直線が続くことは一周目の段階で分かっている。この加速で、俺は一気に茂木との順位争いに躍り出た。


「面白くなってきたね」


 その言葉通り、茂木が笑っている気がした。だが、脇見運転でそれを確認する余裕もない。そのまま俺と茂木はしのぎを削り合い、ついに勝敗が決した。


「くそ……勝てなかったか」


 ゴール前最後のカーブで、ドリフトの慣れが明暗を分けた。悔しさもあるが、充実感が上回る。友達と遊ぶゲームがこんなにも楽しいものだと、俺は今日初めて実感した。


「このゲームは、桃達とよくやってたからね。さすがに初心者には負けられないよ」


「あー、だから桃も瑠璃もあんなに強かったんだ。前に遊んだ時、全然追いつけなくてさ」


 負けた理由に納得がいったような明海。正直、原因はそこではないような気がするんだが。


「あはは……そうだね」


 茂木もどうしたものかと苦笑していた。明海の運転技術に関しては、現実での免許取得が不安になるレベルだ。俺はできるだけ穏やかな声音を心掛けて、明海に言った。


「明海が免許取らなくていいように、俺頑張るよ」


「本当? 彼氏の助手席って憧れるかも。でも、私も新宮君乗せてみたいかな」


「そ、そうか! じゃあ今のうちからゲームで練習しないとだな!」


 公道で逆走されたら一大事だ。自動車学校に通う前に、アクセルとブレーキだけは判別できるようになってもらわなければ。

 遊ぶ以外の目的で、またゲームセンターに来る理由ができてしまった。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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