#48 授業を始めます
①グー組:九条瑠璃、堂島薫
「よろしく」
「こちらこそ、よろしく頼む」
②チョキ組:明海夕夏、井寄桃
「やった、夕夏とだ!」
「瑠璃の方が先生としては当たりだと思うけど、頑張るね」
「えー! だって瑠璃ってスパルタで――」
「何か言った?」
③パー組:新宮友哉、茂木颯斗
「友哉に教えてもらえるなら、心強いよ」
「この前は相談に乗ってもらったからな。ここで借りを返させてくれ」
と、無事にペアが決まり、それに伴って座る場所も変更される。悪戯防止という名目で、全員が一列に並ぶ方針が取られた。並びはさっき決めた①~③の順となっている。
部屋の中心にある、この大きな机でなければできない芸当だ。つくづく、九条家のスケールの大きさに驚かされる。明海や井寄が隣にいたら集中が乱されていただろうが、一番端を手に入れることができたので、隣の茂木の指導だけに意識を向けることができそうだ。
「とりあえず、試しに一時間。これが鳴るまでは各自集中すること」
タイマーをセットしたスマホを掲げ、九条は机上に置く。カタリと音が立ったのを合図に、俺達は一斉に勉強を開始した。
試験日まで、今日を含めて四日。青春を謳歌しようとする傍ら、ちまちまと復習はしてきたから試験範囲に苦戦することはない。しかし、解法を叩き込む数学と違い、暗記科目はそれなりに物量がある。茂木への対応で手を離すことになるだろうから、今日は一問一答で頭に入れるのが良さそうだ。
「なぁ友哉、聞いてもいいか?」
二周目に差しかかろうという頃、茂木が肩を小突いてきた。
「ん? どうした」
「テストでどんな問題が出そうかっていうのはさ、教科書を読んでればなんとか分かるだろ? たとえば、太字で書かれてるとこは出やすいとか」
「まぁ、そうだな」
大抵はそこを暗記しておけば酷い点数を取ることはないはずだ。数学も覚えておくべき公式は事前に分かっている。あとは実践できるか、といったところだろう。
「けどさ、国語だけはどうにも分からないんだ。教科書に載ってるのって、ほとんど本文じゃないか」
「言われてみれば……」
「これで、何を勉強しろっていうんだよ」
恨み節のように茂木は呟く。たしかに、国語は出題の自由度が高いのかもしれない。入試であれば、俺もそこで躓く可能性がある。だが、これは定期試験だ。
「問題を作るのは、授業をしてる先生だ。だから、授業でやってもないことをいきなり出したりはしない」
つまり、ノートさえ取っていれば出そうな問題を予測することができる。言ってしまえば、国語にも暗記の要素があるのだ。
「それに、取り扱う物語はもう分かってるだろ?」
「今回は、最初にやった二つだよね」
パラパラと教科書をめくる茂木に、俺は頷いた。そして、唐突に疑問が湧き上がる。
「茂木、ノートはないのか?」
「あー……国語ってなんか退屈でさ。ボーっとしてる間に消されたりしてて、あんま取れてないんだ」
茂木は、そう言ってばつが悪そうに笑う。ノートを取っていない。国語が苦手な原因はそこにあった。問題となる本文から、何が出題されるか分からない。分からないからこそ、対策の取りようがない。
それはあまりにも勿体ない話だ。何せ、板書には試験の全てが書いてあるのだから。特に国語は、先生が答えを教えてくれていると言ってもいい。
なら、俺ができることは――
「俺のノートを貸す。写しながら一緒に復習しよう」
明海と結ばれた裏で、茂木には本当に世話になった。その恩返しができるのなら、授業の一つや二つ安いものだ。
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