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#47 運命の三択

 俺達が到着した後、九条は「桃を連れてくる」と出て行ってしまった。五分くらいで戻ってくるということだったが、十分経っても戻ってくる様子がない。何か問題でも起きているのだろうか。仄かに不安を覚え腰を浮かしたところで、慌ただしい音と共に襖が開いた。開口一番、井寄は両手を合わせて言った。


「ごめん! メイクして、服選んで、髪巻いて―ってしてたら遅くなっちゃった!」


「勉強するだけだからそこまでしなくていいって言ったんだけど、聞かなくて」


「何言ってんの! 女の子はいつでもオシャレしてなんぼなんだから! 早起きしなくてもいいし、体育もないから今日は巻き放題だよ!」


 そう言うと、井寄はうねらせたツインテールの片翼を自慢げに払う。この完成形に至るまでに、相当な時間を要したみたいだ。今日の井寄は学校で見る時よりも派手な印象を受ける。


「早起きしなくてもいいけど、もうちょっと早く来て」


「はーい」


 伸びた返事をして、井寄は空いた座布団の一つ――堂島の前に座った。例によって、席配置は合コンスタイルだ。残る茂木の前に九条が座り、これで全員集合となる。


「最初に確認させて。今日まで授業受けてきて、ついていけないって思う人はいる?」


 九条の問いに、茂木、井寄、堂島が挙手する。茂木と井寄は、元々九条に教わっていた組だ。背伸びして入学した先の授業は、中々に辛いのかもしれない。そして堂島、小テストの時も苦戦していたようだし、部活動との両立は難しいのだろうか。それよりも意外だったのは……


「明海、勉強できるんだな」


「失礼だな、私こう見えてもそこそこデキる子だからね?」


 胸を張り、誇らしそうに鼻を鳴らす明海。その振る舞いがデキそう感を帳消しにしていることに、彼女は気付いていない。陽キャは勉強ができないというのは、偏見だったのだと思い知る。


「友哉、君は僕達の希望だ。まさか学力の低さが男子に固まってるとはね……」


「む……面目ない……」


「大丈夫だ。それを乗り越えるために、今日の勉強会があるんだろ?」


「友哉……!」


 気落ちしていた茂木は、目を輝かせる。縋るように向けられる視線は、思ったよりも悪い気がしない。

 大金を手に入れ、一人暮らしをしたいと両親に伝えた時、条件として提示されたのは当時の学力じゃ入れない高校への合格だった。中学三年の死ぬ気の勉強期間が、ここで役に立つことになるなんてな。人生、どこで何が輝くか分からないものだ。


「じゃあ、私と夕夏、新宮君が先生役。ペアを組んで、自分の勉強をしながら聞かれたことに答えるって感じでいい?」


「ああ」


「大丈夫だよ」


「ペアは、グーチョキパーの手がそれぞれ被った人とってことで。それじゃあ、いくよ」


 風情を感じさせる和室に、高校生の男女六人がじゃんけんに勤しむ声が響き渡った。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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