#46 らしさ
ユニーク800PV、ありがとうございます
「いらっしゃい……早速お熱いね」
「あはは……」
「えへへ、でしょ?」
玄関で出迎えてくれた九条は、俺達の風体に苦笑いを浮かべた。それに俺と明海は対照的な反応を見せる。
甘えたがりだと本人も言っていたが、関係が公になってからというもの、明海の行動は抑えが利かなくなり始めている。彼氏としては嬉しい話だが、公衆の面前でイチャイチャするというのにはどうも抵抗があった。一言で言うなら、恥ずかしい。
「モテ男君達はもう着いてるから、あとは桃だけ。まったく、一番家近いのになんで……」
「そ、そうだ。つまらない物だが、これ家の人と食べてくれ」
井寄に対する炎が燃え盛りそうだったので、手土産で話を逸らそうとする。俺の目論見通り、九条の背後を鎮火させることに成功した。
「ありがとう。……これって、結構いいやつじゃない?」
「まぁ、それなりかな。九条の家がすごいって聞いてたから、中途半端なものじゃまずいかと思って」
さすがは九条。紙袋に書かれたロゴを見て、中身を察したらしい。インターネットの力に頼って厳選した逸品だ。詰め合わせセットを購入したから、お値段もそれなりになる。
一般的な高校生であれば手が出せないかもしれない。だが、俺の懐事情はそこらの人達とは違う。こういう時に奮発してこそ、俺なりの使い方というわけだ。
「そこまでしてくれなくてもいいのに。桃なんて、手ぶらで来てうちの物食べてくだけだから」
「それは井寄らしいというかなんというか……」
「うーん……それなら私も何か買ってくれば良かったね」
「気にしないで。勉強会だって、元はと言えば桃が言い出したことなんだし」
それから「案内するね」と言って九条は俺達に背を向ける。その背中に続きながら、明海は俺に小声で話しかけてきた。正直、道中での囁きを思い出すから気が気ではない。
「ね、宝くじのお金使ったの?」
「ああ。っていうか、俺の所持金は大体宝くじのだぞ。バイトとかしたことないし」
「お小遣いは?」
「定期的ってよりかは、必要な時にお願いして貰ってたな」
遠足とかの学校行事の時、夏祭りみたいなイベントの時は、よくねだっていたものだ。使える金が少ないと、同級生達のノリに合わせられないからな。みんなが買う物を、追うようにして買っていたあの頃が懐かしい。その頑張りもむなしく、俺には井寄と出会うまで友達がいなかったのだが。
そんな俺が、友達の家にお邪魔して、これから勉強会をするというのだ。事態の進歩に驚かされる。
『休日に友達と会う』『友達の家に行く』『友達と勉強会をする』の三つは今日でクリアだ。まさか、最初に訪れる友達の家が九条家になるとは。後でノートにチェックを付けなければ。
やがて、九条が足を止める。正面の襖が開かれると、机の並んだ開放的な空間に見覚えのある二人を見つけた。彼らも俺達に気付いたようで、軽く手を上げる。
「やぁ二人とも」
「となると、最後は井寄か……くそっ」
「家が近いからすぐに来るなんて、桃に通用するわけないだろ? じゃあ、この煎餅は貰うよ」
どうやら、煎餅を賭けて「最後に来るのは誰か?」という勝負をしていたようだ。明海の話では、全員が休日に集まるのは今日が初めてらしい。そうなると、付き合いの長い茂木に有利な賭けだったようにも思える。
実直に情報を信じる堂島と、経験から俯瞰的な判断をする茂木。勝利の女神は、茂木に微笑んだ。




