#31 参加表明
「さて、と」
家へと帰り、夕食と風呂を済ませると、残る用は一つしかない。俺はベッドに仰向けで倒れ、自分と茂木と堂島の三人が所属している『漢』と書かれたグループのトークルームを眺めていた。
約束に漕ぎ着けたのはいいが、電話をかけるというのはどうにも緊張してしまう。異性が相手なら、共感してくれる同士は多くいそうなものだ。しかし、今夜の話し相手は男友達だった。
自分がボタンを押すことで、通話が始まってしまう。つまり、押さなければ始まらないということ。かかってきたら出るという、受け身な姿勢がいかに楽かを思い知らされる。
そんな逡巡の途中、スマホが音を鳴らした。
「……茂木か」
無事に帰宅したようで、すでに準備は完了しているという。俺も九割九分準備は完了していた。……あとは、心の準備さえできれば。
すると、新着メッセージが一件表示される。送信者は堂島、そこには『グループ音声通話が開始されました』の文字。それって、始まったってことじゃ……。結論に至るより先に、跳ねるようにして飛び起きた。
「あ、あー……聞こえてるか?」
固唾を飲んでから、とりあえず当たり障りない導入で声を出してみる。が、反応は一切ない。え、もしかして無視されてる?
心配になって、『俺の声聞こえてるか?』とメッセージを送る。
『聞こえるかって、友哉まだ通話に参加してないじゃないか』
「嘘だろ?」
じゃあ、この『グループ音声通話が開始されました』というのは一体……? そして俺は、その通知の下部に『参加する』と書かれていることに気付く。どうやら、これを押して初めて通話に参加できるようだ。
ってことは俺、独り言を無視されていると思ってたのか。不慣れだからという言い訳も浮かぶが、それよりも恥ずかしさが上回った。
顔の熱さを自覚しながら、指先で参加を表明する。僅かな間の後、ノイズ混じりに二人の声が聞こえてきた。
「む、来たみたいだな」
「てっきり、通話の入り方が分からないのかと思ってびっくりしたよ」
「あはは、いや、まさかな……」
この雰囲気だ。本当に分からなかったことは隠しておこう。通話の向こう、茂木が手を叩いた。
「それじゃあ、主役も来たことだし早速始めようか。薫の朝練もあることだし」
「睡眠時間を心配してくれるのはありがたいが、そもそも三時間もかかるような内容なのか?」
「さぁね。でも、友哉が納得しないことには終われないだろ?」
「それもそうだな」
茂木も堂島も、想像以上に前向きに考えてくれていた。人の悩みにここまで向き合ってくれるなんて、俺は素晴らしい友達を持ったと思う。
ここだけの話、対面じゃなくて良かった。顔を出していたら、きっと口元が緩んでいるとバレてしまっただろうから。
嬉しさを噛み締めてから、俺はゆっくりと今日の議題を声に出した。
「告白された時って、どうしたらいいんだ?」
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