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#26 この思いに答えを出すまで

「ま、待ってくれ、今、すす、好きって……!」


 動揺する俺に、明海は顔を赤くして応じる。


「そのまんまの意味だよ……恥ずかしいんだから繰り返さないで……!」


「だって、急に言われたら驚くだろ……!」


 真っ赤な顔で向き合ったまま、俺はどうしていいか分からずにあたふたとしていた。

 恋人のフリ、とかじゃないよな……。嬉しさよりも先に、現実味のなさが疑念をもたらしていた。明海が俺のことを好き……そうですかとすぐに受け入れられる話じゃない。


 だが、明海の行動にはそれを打ち払うだけの説得力があった。


「私、キスまでしたのに……まだ信じてくれないの?」


「いや、信じてる! 信じてるけど、飲み込めてないというか……。俺のノートを拾ったのは偶然だよな?」


「うん。何度も話しかけようと思ってたんだけど、チャンスがなくて。たまたまノートを拾えたから、勇気を出してみたんだ」


 俺と違って、明海は誰とでも器用に話せるのだと思っていた。けど、それは誤解だった。明海でも躊躇うことがあるのだ。その……好きな人に話しかける時とかは。


「ノート埋めを手伝うって言ってくれたのは?」


「面白そうだと思ったのは本当だけど、それよりも新宮君と仲良くなりたかったの。それで、いつか彼女に……って思ってたんだけど」


 俺が口止め料を払おうとしたから、強硬手段に出たらしい。「いきなり告白して引かれたくなかった」とは、明海の弁だ。


 たしかに、あの時告白されていたら俺は間違いなく嘘告白を疑っただろうし、明海への警戒度が上がっていたはずだ。ノート埋めを手伝うと距離を詰めたのは、正解だったのかもしれない。そこは、さすが陽キャの立ち回りといったところだろうか。


「貰ったお金、一円も使ってないんだ。その場の流れで貰うことになっちゃったけど、なんか申し訳なくて。だから、今度返すね」


「あ、ああ……」


「それと、今すぐに返事が欲しいわけじゃないの。恋人ごっこかと思ったら本気でしたって言われて、新宮君もびっくりしたでしょ?」


 それは俺も似たようなものだった。堂島に好きな人を聞かれた時、俺の頭の中には明海の顔が浮かんだ。仮初の関係に興じているうちに、俺も本気になっていた。だが、どうして好きになったのだろう。


 明海にはあった。俺に恋をする理由が。じゃあ、俺は? 俺はなんで明海が好きなんだ? その答えを出す前に、返事をしてはいけないような気がした。迷いがある間は、きっと真摯に向き合えないだろうから。


「ありがとう、明海の気持ちは嬉しかった。返事は、お言葉に甘えて時間をもらうよ」


「……うん」


 幸い、俺は一人じゃない。相談する相手もいる。自分だけじゃ分からないのなら、力を借りよう。友達という仲間の力を。


「さーて、そろそろみんなと合流しよっか! このまま二人っきりでいたら、どんな顔していいか分からないし」


 繋いでいた手をぱっと離して、明海は井寄に連絡を取った。その背中がいつもより遠のいたように見えたのは、錯覚だったのだろうか。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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