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#24.5 緊急ミッション:恋の行方を追え!

 友哉と夕夏が大水槽に意識を奪われていた頃、それを陰から見守る四人衆がいた。

 一足先に館内のカフェを訪れ、どこから用意したのか分からないサングラスを身に着けた姿は、他の来場者からは好奇の視線に晒される。しかし、四人にとって己の現状など些事にすぎない。関心は、ただ一つの現場に注がれていた。


「ねぇ、二人いい感じじゃない?」


 桃色のツインテールを揺らしながら、声を潜めて少女は仲間に問いかける。声量を抑えても、少女が感じている昂ぶりは抑えられていない。跳ねるような声音がその証拠だった。


「どうだろうね、ここからじゃ何話してるかも聞こえないし」


 一方で、少年は落ち着きを払った口調だ。たしかに、話している内容次第では雰囲気は最悪かもしれない。反論ができず、少女は手に持ったドリンクをちゅうと吸った。


 すると、もう一人の少年が立ち上がる。筋骨隆々の肉体は、起立するという動作だけでも迫力を与える。その威圧からは考えられないほど繊細な小声で、少年は仲間達に申し出た。


「俺が確認してこようか」


「堂島君が行ったら絶対バレるから」


「ちょっとエージェントK! 名前で呼んじゃダメだって! 私達は今、極秘任務中なんだから」


 エージェントKと呼ばれた黒い髪の少女は、思いがけない指摘にため息を吐く。


「何、エージェントKって。私のこと?」


「そうそう! 瑠璃の名字は九条でしょ? だからエージェントK!」


 名字のイニシャルを使ったコードネームらしいが、説明に際して相手のフルネームを言ってしまったことに得意気な少女――エージェントIは気付いていない。


「ってことは、僕はエージェントMでかお……彼がエージェントDだね」


「そゆこと!」


「む、エージェントか。それなら、下手な行動は慎まないとな」


「なんで二人とも順応してるの……」


 MもDも、男子高校生。こういったお遊びにワクワクする少年心は健在だった。この場で設定の是非を多数決で問えば、負けるのは間違いなく自分だ。そう悟ったKは、抗議することなくエージェントとして業務へと戻った。


 そもそも、どうして彼らがこんな怪しげな行動を取ることになったのか。それは、彼らと班を組んでいたとある男女が原因だった。

 遡ること十五分前、水族館への道中でエージェントIこと井寄桃は驚くものを目撃する。


「次、水族館だよね」


「そうだな。小さい頃に行った以来だから、すごい久しぶりだよ」


「あ、私も! こういうとこってあんま来ないよね」


 仲睦まじそうに会話する二人――友哉と夕夏が手を繋いでいたのだ。どうして? いつから? いつの間に? ふつふつと溢れ出る疑問に蓋をして、桃は考えることをやめた。元来、頭を使うことは得意ではない。だから、迷うことなく計画を企てた。恋する友人が、意中の相手と二人っきりになれるチャンスを作るため。

 残りの班員を巻き込むのは簡単だった。頭脳戦と違い、そっちは桃の得意分野なのだ。


 桃自身、思いつきということもあってここまで上手くいくとは思っていなかった。場は整えた、あとは夕夏がどこまでやれるかだ。ここからは、もう見守ることしかできないと分かっていた。


「頑張ってよ、夕夏……!」


 エージェントという仮面の隙間から友人としての顔が覗き、桃の声に力がこもる。ちょうどその時のことだった。


「まずい、みんな伏せろ!」


 エージェントD――堂島が緊迫した声を出す。班員の不在に(ようやく)気付いた二人が、辺りを見回し始めたのだ。

 変装用のサングラスも、どこまで誤魔化せるか微妙なラインだった。円形のテーブルに全員で顔を伏せ、捜索の目から逃れる。


 夕夏が友哉を誘ったのはそんな最中のことだったので、四人が再び顔を上げた時、目標の影はすっかり消えてしまっていた。


 件の男女がエージェント達と合流するのは、しばらくしてからの話。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

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