#11.5 ガールズトーク
ベッドの上でごろごろしていると、スマホが音を立てた。
新宮君には、さっき招待とメッセージを送ったところだ。グループ向けの最初の挨拶か、それとも私宛ての連絡だろうか。
「あれ、桃からだ」
送り主は、この春できた友達の一人――井寄桃だった。明るくて可愛くてちょっとあざとい彼女とは、入学してからすぐに馬が合った。桃と一緒にいると楽しいし、彼女と友達になれて良かったと思う。男子を揶揄って遊ぶところだけは、玉に瑕だけど。……今日だって、新宮君にちょっかいかけて困らせてたし。
『でさ、結局トモちんが例の彼なの?』
『私も聞きたかった』
そう返すのは、もう一人の友達――九条瑠璃。クールで一見固そうに見えるけど、中身は意外と乙女……らしい(桃情報)。桃と瑠璃は小学校時代からの幼馴染で、そこに私が加わったという感じだ。
いつもは他に男子数人と行動しているけど、このグループは私達だけ。男子達には聞かせられないあれやこれやを話す、女子会用だ。
私は、画面を突っついて文字を入力する。それを打ち終える前に、グループ通話が始まった。
「ちょうど返事打ってるとこだったんだけど」
「それならタイミングばっちしじゃん! さぁ夕夏さん、聞かせてもらいましょうかー?」
口元の緩んだ声が、桃の期待を表しているみたいだ。私は、一度息を吐いてから答える。
「……そうだよ。あっちは全然覚えてないみたいだけど」
「おー! あ、じゃあもしかして私余計なことしちゃってた?」
「今気付いたんだ……。てっきりわざとやってるのかと思ってた」
「瑠璃ひどーい!」
桃の一番厄介なところは、あざとさに自覚がないところかもしれない。男子の身になってみれば、こんな暴力みたいな可愛さが相手からやってくるんだから気が気じゃないはずだ。
「あんたはうるさいから。今日の主役は夕夏でしょ。それで、進展はあったの?」
「進展か……土曜日に出かけることにはなったけど」
「えー! それってデートじゃん! おめでとおめでと!」
本人以上に浮かれた桃を落ち着かせて、その時のやり取りを説明することにした。デートとは? そんな議題が上がった時の話だ。もちろん、私達の関係については伏せている。
「――ってことがあったんだけど、どう思う?」
「トモちん、意外と硬派なんだね。私、デートの意味なんて考えたことなかったや。デートしたかったら、デートしよ! って言うと思うし」
それは桃らしい意見だと、私は苦笑する。私はそこまで直球でいけないから、少し遠回しな誘いになったとは自覚している。
恋愛強者に見える桃だけど、実はこれまで一度も彼氏がいたことはない。中学生の時から、ずっと一人に片思いし続けていると聞いた。長いとは思う。でも、片思い歴だけなら私は小学生の時からだ。自分でも相当拗らせていると分かっている。
「『互いに恋愛的な展開を期待して』ね……。夕夏はそれを期待してるとして、新宮君の方はどうなんだろう」
「でもさ、トモちんもデートって認めたんでしょ? ってことは、トモちんも期待してるってことじゃん!」
「そうだよね……」
新宮君が、あの場ですんなりデートだと受け入れるとは思っていなかった。お金を貰って彼女になっているとはいえ、私達はまだ正式に付き合っているわけじゃないから。
何が新宮君にそう思わせたのかは分からないけど、咄嗟に提案した彼女作戦が効いているのかもしれない。私にしては積極的に手を繋いだり……今日はハグまでしたのだ。ここまでしたんだから、少しは意識してくれないと困る。
「そ・れ・に! 休みの日ってことは、私服見せられるんだから! ここで一気に女として意識させちゃおうよ!」
「そうだね。けど、どうやったら意識させられるのかな」
「それは桃ちゃんのセンスに任せなさい!」
「桃だけだと方向性が心配だし、私も手伝う」
瑠璃がそう言うと、桃がむっと不満そうな声を上げた。きっと眉を吊り上げているのだろうと、通話越しなのに表情が見えてくる。
「ちょーっと、それどういうこと? 瑠璃はそういう経験ないんだし、私は心配だけどなー」
「あんただって同じでしょ。露出度がどうこうとか言うつもりだって、分かってるんだから」
「うっそ、もしかして瑠璃ってエスパー?」
さすがは幼馴染。考えていることはお見通しみたいだ。付き合いの長さもあるけど、これに関しては桃が分かりやすかっただけかもしれない。
「カメラオンにするからさ、二人の意見聞かせてほしいな」
まだまだ夜は長い。女子会はこれからが本番なのだ。
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