#100 近くにある大きなもの
ユニーク1900PV、ありがとうございます。
「よし! 完成!」
無事に場所を確保し、井寄が持参したというレジャーシートを敷いて、俺達はその時を待った。
意外とそれぞれに疲れていたのか、会話はない。時折、誰かがスマホを操作する音がコツコツと鳴るだけだった。
「分かってはいたけど、暇だね」
ニ十分ほど経った頃のことだ。沈黙か、あるいは暇に耐えかねて、茂木が口火を切った。
「場所取っちゃったから、もうみんなでどっか行くとかもできないよー……」
「でも、私はこの感じ好きかも。お祭りの賑やかさもいいけど、この時間も特別って感じがするっていうか」
三人の話を聞きながら、俺は頭の中で今日やり切れなかったことを反芻していた。
まず、早めに到着したことで、下駄を履いていた二人を焦らせた。これに関しては、次から集合場所をよく考えなければならない。
それから射的。夕夏が欲しがっていたぬいぐるみは、結局茂木に取ってもらった。
そして、今回の花火だ。その場でどうにかできると高を括って、事前に調べることを怠った。当日の進行も、茂木と井寄が自然と担当してくれている。俺はただ、夕夏と連れ立っているだけだ。
ダブルデートを企画するだけして、あとのところでは一切活躍していなかった。
これが、デートと言えるのか。夕夏は、俺の不甲斐なさにがっかりしていないかと、口に出せない不安に駆られる。
夜というのは、どうしても考え事をしてしまう。しかも、当人の意志にかかわらず後ろ向きな思考で。
「ねぇ、友哉君」
「……なんだ?」
考えに没入していたせいで、反応が少し遅れる。これもまた、一つ減点ポイントといったところだろうか。
「今日のこと、企画してくれてありがとね」
「ど、どうしたんだいきなり……」
「だって、することないからさ。今のうちに感謝を伝えておこうと思って」
突然の行動に驚きもしたが、何より感謝されたことに俺は驚いた。礼を伝えるなら、俺よりも――
唇を噛み締めてから、俺は続きを口にする。
「俺よりも、茂木達に言った方がいいんじゃないか? 色々助けてもらったわけだし」
「それもそうだけど、今日こうして集まれたのは友哉君のおかげでしょ?」
夕夏がそう言うと、茂木も井寄も大きく頷いた。
「友哉がいなかったら、今年は気まずくて桃とここに来れなかっただろうからね」
「私もそうかも……。トモちんと、夕夏が頑張ってくれたから、こうやってダブルデートできたんだよ!」
「え? 私は結局ほとんど何もしてないっていうか……」
「そんなことないよ! 颯斗君の背中を押したのはトモちんだけど、私の背中を押してくれたのは夕夏なんだから!」
夕夏の両手を包み込むように握り、井寄は顔をずいっと夕夏に近づける。その迫力に気圧されつつも、夕夏は「それなら良かった」と照れ臭そうに返事した。
「僕も、友哉にああしないと伝わらないかな?」
「勘弁してくれ。もう十分伝わったよ」
憂うのも、怖がるのも、一人でできる。でも、立ち上がることは一人じゃ難しい。
側にいてくれる、友達や恋人という存在の大きさを、俺はまた一つ確信することができた。
お読みいただき、ありがとうがとうございます。
面白い、続きを読みたいと思ったら、☆評価や感想などを頂けると励みになります。




