零参-終わる異変といつもの日々
「1,2,3,4…」
屋上のプールからにとりと辰之助の声が聞こえる。
「ねぇルナサ先輩!ルナサ先輩ってば!」
「うわっ!?ちょっとびっくりさせないでよ〜」
フルート担当の後輩、高梨一愛が突然話しかけてきた。「さっきから何回も呼んでるんだけど」
「あ……ごめん。考え事してたんだ」
「最近先輩そんなこと多いよ〜」
「ごめん。こないだ正門前で工事してたでしょ?あれ以来考えてたの。奴との戦いをこれ以上続けるのはもはや必然。だから誰に援軍頼もうかなぁって」
「私の姉ちゃんの一美だったら何かできるかも!」
「それはやめておこう。あの人は私達とはレベルが違う」
「じゃあどうするんです?」
「ふふふ……この学校にはもう一人いるんだよ。私たちと同じレベルの人が」
「え〜誰ですかそれぇ」
「それはね……」
***
「なぁルナサ」
「辰之助。どうしたの?」
「いや、別に大したことじゃないけどさ、お前のヴァイオリン、見た感じ妖力が宿ってそうだな。戦いに使えないか?」「うん、実はそうなんだよね。だからこないだはそれで戦ったの。そしたら見事命中。でも反動が大きくて腕を痛めちゃったみたい。暫くは無理っぽいね」
「そうか。残念だな……」
「でも大丈夫よ。私はどんな時だって戦えるから」「どういう意味だ?」
「私が戦う時はね、皆を守る時なんだ。誰かを守るために戦う。それが私の正義であり、生きる理由でもある。だからその為ならいくらでも頑張れる」
「……」
「ん?どしたの?」
「いや、何でもない。ただお前らしいなって思っただけ」
「ありがとう」
***
今日は霊夢のところに寄ってから帰ろうと思ったが、黒い「何か」を見て寄って行く気は失せた。
***
「開放率100%、か」
「使いこなせてもそれは諸刃の剣、使いすぎるわけにもいかないしなぁ」
「なんで霊力って己までをも刻みかねない力を持ってるのかしら…」
「でも結界管理はその力があってこそだろ?」
「まぁね」
***
その晩、私ルナサが窓の外をぼんやり眺めていると…
「きゃっ、何よこれ!?」
『7月14日、国府津辰之助を奪いに参上する。 株式会社アックス』こんなものが窓から投げ込まれた。そして次の日。
「ねぇアリス。今朝こんな手紙入ってなかった?」
「うん。でも差出人不明だし宛先も書いてないし……」
「確かに怪しいわね……。捨てようかしら」
「一応持っておこうか。何かわかるかもしれないし」
「わかった。預かるわ」
しかし、何もわからなかった。
***
「なあ魔理沙、ちょっといいか?」
「あ、辰之助。どうしたんだ?」
「いや、実は昨日の件について聞きたいことがあってな」
「ああ、あれか。まさか辰之助くん本人が来るとは思ってもいなかったぜ」
「どういうことだ?あんた、なんか知ってんのか?」
「まぁな。あいつは元人間だ。今は半妖怪だがな」
「は?どういう意味だよそれ」
「言葉通りの意味さ。あいつは元は普通の人間だったんだ。それをある男のせいであんな姿にされた」
「その男ってのは?」
「ジョニー・クランベリー・アックス。株式会社アックスの代表取締役社長だ。」
「なるほどな。つまり俺はそいつを倒せばいいんだろ?」
「そういうことになるな。だが今のお前では到底敵わないだろう。そこで、私達からのプレゼントがある」
「何だそれ」
「まずはこれを見てくれ」
そこには大きなライフル銃があった。
「こいつの弾は魔力、妖力、霊力の全てを上乗せできる優れものだぜ。お前の能力的にもそういうやつの方がいいだろ?」
「ああ。ありがたく使わせてもらうよ。それともう一つ頼みたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「俺に戦闘を教えて欲しい。このままじゃあいつらに迷惑がかかるだけだ。頼む」
「よしきた。じゃあ明日から始めような。じゃあ明日また会おう」
***
2022年7月14日 19:00
「時は満ちた!今こそ奴の息の根を止めて見せようぞ!」
***
霊夢から電話が来た。
「ちょっとルナサ、今から神社に来れる?」
「うん、どうかしたの?」
「大変なことになったわ!急いできて!」
「わかった。すぐに向かう」
***
「ねえ、これは一体どういうこと?」
「ああ、奴が動き出した。俺を狙ってることは確かだ」
「じゃあすぐに行かないと」
「でもなルナサ、一つ問題があるんだよ」
「問題?」
「うん。実はな……」
「うーむ……こりゃ困った。どうしようか」
「とりあえず、私は魔理沙さんの家に行ってくる。辰之助は学校に行って」
「そうだな。そうするしかないか」
「じゃ、よろしく」
「ああ」
満天の星空に、どす黒い煙が上がっていた。
***
妖山山頂
「神奈子様、諏訪子様、そろそろ行くべきでしょうか?」
「駄目よ早苗。この神社にはあなたがいないと…」
「………」
***
学校
「一愛!いつまでここに居てるのよ!帰ってなさい!」
「ね、姉ちゃん」
「国府津辰之助くんは……」
「北校舎にいたわ」
「そうか。ありがとう」
「ちょ、どこ行くつもり?」
「決まってるでしょ。助けに行くのよ」
「え?」
「危ないからあなたは帰ってなさい!」
「あ、はい」
私高梨一美は辰之助の元へと向かった。
***
「待て、お前、何者だ?」
「私は高梨一美よ!とにかく時間がないの!急いで!」
俺は言われるがままついて行った。すると、そこは霊夢の家だった。
「ここよ。入って」
「お邪魔します」
そこには霊夢と、見たことのない女の子がいた。
「紹介するわ。彼女は東風谷早苗。巫女よ」
「はじめまして、東風谷です」
「こちらこそ。よろしく」
「全く、うちの神様方はお頭が硬いんだから……」
入るやいなや愚痴りだしたため、俺たちは黙ってみているしかなかった。「まあいいわ。本題に入りましょうか」
「ああ、頼む」
「まずあなたの能力だけど、それは『ありとあらゆるものを操る程度の能力』らしいのよ」
「知ってるさ。この妖刀もライフルもそれに適応したものだ」
「え?知ってたの?」
「ああ。魔理沙に教えてもらったんだ」
「そうなの……。それで、これからどうする?」
「決まってんだろ。奴を倒す」
「どうやって?その能力があったとしてもかなり厳しいわよ」
「だからこそだよ。幸いにも魔理沙と百々世に稽古つけてもらってるから全ての力を操るのにも慣れてきたし、今は隙間や時も操れる。ヘマはしないさ」
「だったらいいんだけど……」
「大丈夫だって。それより、霊夢達はどうする?」
「もちろん、一緒に行くわよ」
「なら決まりだな。行こうぜ」
「ああ」
こうして、俺らは戦いの地へと赴いた。
20:13 妖山山麓
「来ましたね、国府津辰之助。それに博麗の巫女さんも付き添いですか。」
「舐めてもらっちゃ困るな。あんた如き、この俺一人で十分だ!」
「では実際に手合わせして、その言葉が本当か、『確かめさせてください』」
「望むところだ!」
「創符『パラレルダンサーズ』」
無数の光の弾と共に、ワルツが聞こえてきた。
「その程度、これで十分だ!」
指を鳴らすと、全て消え去り、自身の各力に還元されていった。
「こっちの番だ!魔符『シラヴァクレーズ』!」
「だいぶ押してるわね」
「これなら勝てそうかしら」
「消符『ディサピア・ザ・ワールド』」
辰之助は一気に吹っ飛んで行った。が、ピンピンしている
「そろそろ入らせてもらうわ!」
「ええ、お姉様」
「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」
「禁忌『レーヴァテイン』!」
「滅砲『ファイナルブラスター』!」
「霊符『封魔神』!」
奴は妖山の斜面に幾度もぶつけられ、腕が引きちぎれそうになっている。
「残念だが、所詮お前は半妖怪。手加減はしねぇよ」
「ええ。そうでなきゃ。蒼符『博愛の仏蘭西人形』!」
「こいつ……!まさか、この技を使うことになるなんて……」
「くらえ!妖剣『闇喰らい』!」
「うわあぁ!」
「もう終わりだ。神刀『天叢雲』!」
「神弦『ストラディヴァリウス』!」
辰之助の妖刀の刃が、ルナサのヴァイオリンで押されて、途轍もない力で奴にぶつかった。「ぐはあ!」
「まだ終わらないわよ!紅符『不夜城レッド』!」
「くそぉ!」
「私の音は、こんなものじゃないわよ?弦奏『グァルネリ・デル・ジェス』!」
「はあ、はあ、はあ……」
「とどめだ!恋符『マスタースパーク』!」
「霊符『夢想封印』!」
巨大な陰陽玉が奴を押しつぶすかの如く、飛び出して行った。
***
スキマが開き、紫が出てきた。
「あら、私が参戦するまでもなかったようね。もう終わったのかしら?」
「いや、まだ次のが来る」
「どういうことよ?」
「今のは下っ端一人倒しただけであって、社長のジョニー・クランベリー・アックスは倒してない。つまり奴を倒さないとこの異変は解決したことにはならないだろーよ」
「そういうことだ、魔理沙。あいつを倒して、ようやく俺らの勝ちだ」
「じゃあ早く行きましょ!」
「待ってください。私も連れて行って下さい!」
早苗が名乗り出た。
「でもあなた、戦えるの?」
「一応護身術くらいは扱えますので、邪魔にはならないかと」
「ふうん、ならいいわ」
「ありがとうございます!」
「さて、行くぞ」
こうして、俺たちは次なる戦いの地へと向かった。
22:37 妖山山頂 そこには一人の男が立っていた。
「やっと来たか。待っていたよ」
「あんたがジョニー・クランベリー・アックスだな?」
「いかにも。俺がジョニー・クランベリー・アックスだ」
「なら話は早い。早速始めるとしよう」
辰之助が指を鳴らした。
14:35
「しっかし……あいつ本当に人間なのかい?」
「本当に人間らしいぜ。あんまり疑うのも良くないぜ、こーりん」
「それもそうだな……。しかし、辰之助のあの能力も気になるな……」
「確かに、あれはかなり強力ね」
「まあ、あいつなら大丈夫だろうよ」
「そうかしら……」
***
「さて、始めましょうか」
「ああ。行くぞ!」
俺は手始めに時を止めた。やつを除いた全員、止まった時間の中を動けるようにしてある。そして時を動かすと、
「!?なぜ、貴方がそこにいるんです?まさか、時間を止めたとでもいうのですか?」
「その通りだ。これでお前は逃げられない。大人しく降参するんだな」
「残念ですがそれは出来ませんね」
そう言うと、奴は物凄い速さで全員にタッチしていった。
「私の能力、『触れたもの全てを破壊する能力』を使えばあなた方をバラバラにだってできますが?」
「やってみろよ。出来るもんなら」
「では遠慮なく」
奴は勢いよく手を前に出した。しかし壊れなかった。
「何だと?何故壊れない?」
「そりゃ、こいつらが不死身だからだよ。」
「なんだと?」
「蓬莱の薬を飲ませたんだ。故にお前の能力は俺らには効かない」
「ふざけるな!何人の能力無効化するような対策とってんだよ?」
「残念だが、お前の思考も全て読ませてもらった。これで終わりだ、ジョニー」
「そんなの反則だ!無効だ!無効!」
「うるせぇ!さっさと負けを認めろ!霊刀『草薙の剣』!」
「うわあぁぁぁ!!!!」
23:59
「結局お前は何がしたかったの?」
「全てを操るというこの世の最高傑作、それを手に入れれば完璧な世界が手に入る……と思っていた」
「でも、実際はどうだった?完璧じゃなかったんじゃないか?」
「そうだな……。今となってはもう遅い。俺はこれから地獄へ落ちるからな……」
「そうか……」
「まあ、俺のことは気にしないでくれ。ただ、お前らに頼みたいことがある」
「なんだ?」
「もしこの罪が許されて、ここで暮らせるなら、お前と酒を交わすような仲になりたい」
「生憎だが俺はまだ18だ。酒なんて呑めたもんじゃねぇよ」
「話はいいか?」
「四季映姫……ああ。話したいことは全て話した」
「よし、判決を言い渡す。貴様は閻魔の判決により、地獄行きとする」
「じゃあな。また会えることを願う」
「おう、達者でな」
7月15日 0:05
「魔理沙、そっちは終わったか?」
「ああ。バッチリだぜ」
「じゃあ帰るとするか」
「そうね」
「了解だぜ」
こうして、俺たちの長い長い戦いは幕を閉じた。
私はルナサ。ここ数ヶ月の出来事が信じられなくて信じられなくてたまらない高校3年生だ。今日は博麗神社で宴会があるそうな。それに私も誘ってもらった。もちろん妹たちも一緒に。
「お姉ちゃん!早く行こう!」
「待ってよ〜メルラン〜」
「ふふ、相変わらず賑やかな子たちだわ」
「全くだ」
「あら?辰之助も行くの?」
「ああ。そりゃあ異変解決に携わったからな」
「それもそうね。でも、貴方がいて助かるわ」
「ん?どういうことだ?」
「だって、私一人じゃ手に負えないもの。色々とね」
「まあいい。とりあえず行くぞ」
「ええ」
こうして私たちは神社の方へ向かった。
『1番線ご注意ください、命蓮寺行き発車でーす』
「やべぇ、急ぐぞ!」
「ちょっ、待ちなさいよ!」
「おい、置いてくぞ!」
「ああ、ちょっと待ってくれよー」
私たちの日常はまだまだ続く。
あとがき 今回は東方幻夢譚をお読みいただきありがとうございます。作者の国府津辰之助です。今回の作品はいかがだったでしょうか?楽しんでいただけたら幸いです。さて、次回タイトル、内容共に未定ですが、多分長編になると思います。それでは皆さん、また会う日まで。




