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大地転移 ~宇宙人に改造され、魔法少女にされかけた俺は、サイキックマインドを内に秘め異世界を突き進む!~  作者: PIAS
第一章 ノスピネル王国編

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閑話 根本


 僕の名前は根本恵一。


 皆には隠しているけど、僕は超能力が使える。

 といっても、ニュースで報道されるシュレイカーの連中みたいな派手な能力が使える訳じゃない。

 ほんのちょっと物を動かしたり、小さな火を生み出す程度のものだ。

 でもそのほんのちょっとの能力のせいで、幼少期には……いや。引っ越しをして心機一転して、自分の能力を隠すようになる高一の頃までは、ずっと虐められてきた。


 でも、だからといってシュレイカーの一員になるつもりもなかった。

 連中は世界中から指名手配されてる組織のくせに、意外と身近に組織関係者がいたりするので、積極的に加わろうと思えば組織のメンバーになる事も出来ただろう。


 僕がシュレイカーのメンバーにならなかったのは、僕の能力が連中でも持て余すような些細なものだったから……だけではない。

 結局シュレイカーに入ろうと、僕を取り巻く環境はさして変わらないと思ったからだ。


 それならばまだ、力の事を隠して社会に溶け込んだ方がいい。

 そして上司や力のある人にこびへつらっていれば、それなりに暮らしていける。

 目減りしていく僕の自尊心と引き換えに。


 厚い仮面を張り付けて、笑顔を作る。

 こうしておけば、まともな相手であれば限度を超える攻撃は仕掛けてこない。

 失敗をした時は、自分に非がなくても必死に謝っている……振りをする。

 理不尽だと感じる事が起きた時ほど、自分を捨てて実を取れ。


 幼少期のいじめの影響か、これも元からの僕の性格なのか。

 作り物の自分を演じておけば、とりあえず社会で生きていけると分かってからは、それを徹底して行うようになっていった。

 今となっては、素直に何も考えずに笑えていた頃の自分が想像できない。



 ……そうして僕は生きていくのだと思っていた。



 しかしあの日から、僕の身の回りの全てが変化してしまった。

 見知らぬ光景、見知らぬ言葉、見知らぬ人たち。

 どうやら僕は異世界へ召喚されてしまったらしい。


 僕達を召喚した奴は、当初高圧的に僕達に接していた。

 それは僕達日本人を委縮させ、更にはいらぬ反発まで招く結果を生んだ。

 今でもあの着装テストの時の人がどうなったかは分からない。


 時折他の日本の人とその話題が出る事もあったけど、誰も知らないようだった。

 そして今ではその話題そのものが忘れ去られている。

 その事を僕はとても恐ろしく思う。


 その後生活を続けていく中で、僕らがそれなりに好待遇を受けているという事が、徐々に分かり始めた。

 特に、身分証を交付されて街に出かけるようになって、それを強く実感する。


 一時はこの国の連中に不信感を抱いていた人も、徐々に慣らされていったのか、不平不満を言う人も減ってきている。

 けど、僕は今の状況を決して楽観視していない。

 奴らの不興を買えば、次の瞬間にはどうなるか分かったものではないからだ。


 そこで僕は、自分の身の安全を図るための行動に移った。

 基本、同じ立場の日本の人達には、分け隔てなく下手に出て適度に接触を取る。

 これは僕が高校に入って、自分を偽りだしてからずっと続けていた事なので、最早慣れたものだった。


 そして、この日本人たちの中で注目株の人に、少し踏み込んで話をする。

 まず最初のターゲットは、日本人だというのに魔法を使って見せた笹井さんだ。

 しかし彼女は他人を寄せ付けようとはせず、なかなか接触が上手くいかない。

 彼女は異性であり若い女性という事もあって、無理に接触をしても下心を疑われるだけだ。


 そこで、僕は次に火神さんと接触してみた。

 ……接触したのはいいんだけど、彼は僕の小手先の言葉に惑わされる事はなく、確固とした自我を持っていた。

 しかも人を見抜く目も持っているようで、庇護を求めて接触したのもどうやらバレているらしい。


「俺の下に付きたいのなら、己を磨け」


 と、ひとこと言われて門前払いされてしまった。

 今の僕では火神さんの足手まといにしかならないという事だろう。


 それからも、最高クラスのコウガァーに選ばれた細田さんや、巨大な魔甲機装を操る権助さんとも接触を取ってみた。

 権助さんとはそれなりに話は出来たけど、細田さんは男の僕の話に耳を傾ける事はなく、いまいち成果が出ていない。



 少し焦りが見え始めた頃、僕は一人の男性と接触を持った。

 初日に盛大にゲロを吐いていたので、一部の人の間では『ゲロ男』と呼ばれている大地さんだ。


 本当は大地さんではなく、信じられないようなSFな話の後に軽々と空高く跳躍してのけた、一色さんと接触を取ろうとしていた。

 だけど、彼女はよく大地さんと一緒に行動していたので、必然的に大地さんとの接触も増えてしまった。


 しかしこの事は僕にとって大きな転機となった。


 ある日、午前の訓練が終わって昼食を受け取りにいく途中、僕は細田さんが大きな石に後頭部をぶつけられる瞬間を目撃した。

 ……いや、というよりその時に身に覚えのある力を大地さんから感じたのだ。

 それのあるなしで、僕の人生は大きく変わったであろう元凶……つまり超能力だ。


 それも並大抵の力ではなかった。

 実際の現象としては、単に念動力で石を飛ばしただけだったけど、その際に大地さんから発せられていた力は、全身に鳥肌が立つほどの恐ろしい力だった。


 それこそシュレイカーの連中のように、その気になればあの石で細田さんの頭部を粉みじんにすることも出来たはずだ

 でも大地さんはそこまではせず、威力を抑えて絶妙な力加減で石をぶつけていた。

 それを見て、僕は大地さんこそがこの不安定な今の生活に安定を齎してくれる人だと確信する。


 どうやら彼は超能力が使える事を隠したいようなので、僕もその事をつついたりはしない。

 ただ彼と接触をとって交友を深めていく。

 そうすれば、僕に何かあった時は彼に助けてもらえるかもしれない。


 それからの僕は、他の日本人との接触はほどほどにして、大地さんとの接触を重点的に取る事にした。

 そもそも、元々注目していた一色さんも大地さんとよく一緒に行動しているのだ。

 この二人と同じグループにいれば、なおさら僕にとっては都合がいい。


 しかも、しばらく一緒に行動している内に、あの笹井さんまでもがグループに加わるようになってきた。

 どうやら僕以外の三人の間で何かがあったようで、僕は詳しい事までは知らないけど、笹井さんも積極的にこのグループに加わろうとしているようだ。



 思いもかけず、僕は当初描いていた保身の為の方策を成功させていた。

 今も、野外演習だとかで近くの森にきているけど、四人一緒の班になっている。

 大地さんは、時折冗談なのか本気なのか分からない事を言ってくるのでたまに不安にはなるけど、なんだかんだで最近は少し態度も変わってきた……ような気がする。


 でもそうして事が上手く運んでいたせいか、僕は少し浮かれていたのかもしれない。

 今、僕達の目の前にとんでもなく大きい獣がいる。


「な、な、な…………」


 その化け物を見て、僕は死を覚悟した。

 あんな生き物、戦車とか一級の超能力者でも連れてこない限り、どうにかなる相手じゃない!


 僕がその場で固まっていると、不意に大地さんに声を掛けられて、腕を掴まれる。


「って訳で、根本。行くぞ?」


「え、あっ……はぁぁ? ちょっ、えええぇぇぇぇぇ!?」


 すると次の瞬間、僕はジェットコースターに乗った時のような浮遊感を覚え、足元から伝達される衝撃に、自分が後方へと投げられた事を理解する。


(い、今の……? 超能力を使った気配がなかったような……)


 僕も前後不覚に陥っていたので、単に意識がそこまでまわらなかったのかもしれない。

 でもそこからは少し落ち着いて戦いを見る事が出来た。

 あの巨大な狼のような魔物相手に、一色さんは一歩も遅れを取る事なく対峙し続ける。


 笹井さんは何か大きな魔法を使う為に精神を集中させていて、大地さんは……中間の位置に待機して機を伺っているようだ。

 今度は大地さんが超能力を使う瞬間を見逃さないように、ジッと自分の中にある超感覚を研ぎ澄ます。


「根本ッ!」


 その時、大地さんの緊迫した声が僕の耳に届く。

 大地さんの事は先ほどから注目していたので、彼の身に何か起こったのではない事は明らかだ。

 では一体何の……、


 そう思って何の気なしに辺りを見渡そうとした僕の目に、あの巨大な魔物が僕に向けて一直線に向かってきているのが映った。


「あっ……」


 その瞬間。

 まるで世界はゆっくりと動いてるかのように見える。

 そして、昔の記憶が次々と脳裏から引き出されていく。


(これが走馬灯って奴……なのかな?)


 どこか他人行儀にそんな事を考えていた僕の視界の端。

 そこに、何かがよぎった。


「キャワンッ!」


 そして子犬が上げるような鳴き声が聞こえたかと思うと、僕に襲い掛かろうとしていた魔物はどこかへ消えていた。


「ほれ、根本。樹里の奴の魔法もじきに完成しそうだし、もっと後ろに下がっとけ」


 続いて掛けられた言葉に、僕は反射的に従う。

 どうやら、僕は大地さんに危ない所を助けてもらったらしい。

 少し遅れてその実感が沸きあがってくると、心臓が痛い位に鼓動を刻み始める。


(やはり、僕はこの人と一緒にいよう)


 この時僕は、そう誓ったのだった。



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