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大地転移 ~宇宙人に改造され、魔法少女にされかけた俺は、サイキックマインドを内に秘め異世界を突き進む!~  作者: PIAS
第一章 ノスピネル王国編

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第58話 テント設営


 町を出て三時間。


 視線の先には目的地と思われるバンダリンの森が見えてきた。

 意外と街から近いという印象だが、魔物もそんなたいした奴は出ないようだし、危険はそれほどないのかもしれない。


 それから更に一時間程歩いて、遠くに見えていた森の入口に到着した。

 召喚された日本人の中には肥満体型の者もいたんだが、ここでの生活と最近行われた体力訓練によって大分絞られている。

 ここまで来るのに計四時間はかかっているが、歩けないほど疲弊している者はいなかった。



「ようやく森まで着きましたね」


「ええ。ですけど、教官たちはまだ先に進むようですね」


「ふぅっふうっ……。まったくもう、全員魔甲機装を使えるんだから、着装して移動すればいいのに!」


 根本は余り疲労を表に出してはいなかったが、樹里は少し堪えているようで愚痴を漏らしている。

 もちろん沙織はこの程度なら息一つ乱してはいない。


 結局森に入ってからも更に三十分程歩かされた後、ようやく行軍は止まった。

 そこだけ森の木々が伐採されたかのように、ポツンと平地が広がっている。

 といっても、面積はそれほど広くはない。

 ところどころに石で囲ったカマドのようなものがあるので、定期的にここはキャンプ地として利用されているようだ。


「今日から一週間、お前たちはここで寝泊まりしてもらう! 色々とやることはあるが、まずはテントの設営からだ!」


 ここまで荷車を引いてきた教官だが、疲れた様子も見せず、到着早々にそんな事を言っている。

 まるで、家族でキャンプに来て張り切っている父親のようだ。


「や、休みはないんですかあ?」


 樹里以外にも、体力的に劣る女の中には疲れを見せる人はいる。

 その中の一人が教官にそう懇願した。


「休む為にもまずはテントの設営をせねばならん! 必要なものはこの荷車にあるので、同じ性別の者同士で幾つかグループを作って取りに来い!」


 グループねえ。

 こういった場面だと、昔はなんとなくの薄い付き合いをしてた奴とつるんでたもんだったが……。



「……えーと、よろしくお願いしますね」


「みんなさん、よんろしくおねげえしますだ」


「フッ、しばらくむさ苦しい男たちの隣で寝ないといけないとはな」


「大地。一緒にテント用具を受け取りにいくぞ」



 ……なんとも個性的な面子が集まってしまった。



 根本に権助どん。

 そしてチャラ男に火神。 


 いや、他にも問題児な奴もいるにはいるが、こいつらはまた別の意味で個性が強すぎる。

 なんで俺がこのグループに入ってしまったのか、全くもって解せん。


「大地、聞いているのか?」


「……ああ、聞こえてるよ。ってか、なんで俺が名指しされるんだよ」


「お前が一番元気そうだからだ」


 ぬ……。

 こいつ見た目のゴツさの割に、細かいところをよく見てやがるな。


「わーったよ。さっさと受け取って、さっさと組み上げちまおう」


 教官の運んできた荷車の所に荷物を受け取りに行くと、設置の仕方を教えるために教官も一名ついてくる事になった。

 今回の野外実習では、五人の教官の他にも兵士たちが数名同行している。

 彼らは今回俺達のサポート役に回るらしい。


 テントは六人用のものらしいが、うちはガタイのデカい火神がいるから、六人用で丁度良さそうだ。

 もし五人用だったら夜中寝静まった後で、根本の野郎をテントの外に追い出さなければならなかっただろう。


「なんだかこうしてテントを張っていると、キャンプに来たみたいな気がしますね」


「良かったな、根本。お前の安眠は守られたようだぞ」


「え、大地さん何のことですか?」


「ああ、ほれ。そこに杭を打つみたいだぞ」


「えっと、ここですか?」


 組み立てているテントは三角形の形のものではなく、円形の壁部分の上に、円錐の屋根をかぶせるような形状をしていた。

 一般的なイメージの形ではないが、こういった形状のものは普通に俺達がいた世界でも遊牧民族なんかが使っていた気がする。

 まあ、世界が違うからと言って、そうそう奇抜な形になったりはしないという事か。



「よし、これで完成だな」


 見れば、俺達のテントが一番最初に完成したようだ。

 なんか知らんが、火神の奴がまるで経験者のようにテキパキと動いていたので、あっという間にテントを張ることが出来た。


 満足そうな声を出している火神だが、こういった経験でもあるのか?

 なんか見た目的には、自衛隊の特殊部隊にでも所属してそうな感じはするが。


「それでは他の奴らの手伝いにいくぞ」


「えー、なんでそこまでやんのさ?」


「世界は微かに違えど、同じ日本人として助け合うのは当然だ」


「あー、オレそういうのタイプじゃないんだよね。行きたいならアンタだけでいってきなよ」


「お前には困っている人を助けようという気持ちが、一滴たりともないというのか?」


「そんな事言ったって、オレらはこっちで偶々出会っただけの只の他人っしょ? たまたまバスや電車で同じ車両に乗っただけのような間柄じゃん」


「貴様……」


「あーー、ちょっと待ってください。ええとですね、細田さん。女性たちは力も弱くてテント設営に困っているみたいですよ。ここで手助けしておけば、彼女たちの印象が良くなるんんじゃないですか?」


「んーー? ……なるほどねえ。そんならオレはオレのベイビーちゃん達を担当するから、君たちはむさ苦しい男の方を頼むよ」


 そう言ってチャラ男は、テント設営中の女達の方へと歩いていった。


 ううーん。

 絶対に合わないのが分かってたから、これまでほとんど接触を取ってこなかったけど、やっぱアイツとはダメそうだな。

 ってか、アイツの名前細田っていうのか。そんな事すら知らんかったわ。


「根本。お前はあの男に甘いのではないか?」


「まあまあ。人間には色々なタイプの人がいるんですよ。あれでも一応設営は手伝ってくれるようですし、それでいいじゃないですか」


「しかしだな……」


「火神。お前は考えが固すぎるんだよ。もう少し柔らかくしないと、誰もお前に付いてこれなくなるぞ」


「大地、お前まで……」


「ほら、手伝いにいくんだろ? さっさと行くぞ」


「あ、ああ……」


 まったく、火神の奴は相変わらずのようだな。

 って、なんか忘れてる事がある気がするんだけど、なんだったっけかな。

 まあいっか。



 それから俺達は、それぞれバラバラにテント設営の手伝いに向かった。

 俺はええっと…………樹里の所が手間取ってるようだな。

 アイツ、どうも沙織とは別のテントの組みたいだ。

 樹里と一緒の奴らは……俺と同じマンサク組の女連中か。


「おおい、手伝いにきたぞ」


「あ、ほらほら。旦那が手伝いに来たわよ」


「ちょっ、だから別に大地はそんなんじゃないってば!」


 同じグループの女に揶揄われて、顔を赤くしながら樹里が前に出てくる。

 当人は困った様子だが、そういった態度だから余計揶揄われるんだよなあ。


 ……って、そういえば、以前樹里の部屋に行く途中にすれ違った女。

 あの女も同じマンサクタイプの奴だったな。

 それで余計揶揄われてるのかもしれん。


「ほれほれ、さっさと設営を済ませるぞ」


 俺はキャーキャー姦しい女達をいなしながら、テントの設営を手伝い始めた。



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