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大地転移 ~宇宙人に改造され、魔法少女にされかけた俺は、サイキックマインドを内に秘め異世界を突き進む!~  作者: PIAS
第一章 ノスピネル王国編

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第18話 天下分け目


 ジャージ男のよく分からない問いに、場は一瞬静まり返った。

 それから、周囲の人を窺うような視線を送るものや、何の反応も示さない者など、いくつかのパターンに派生していく。

 ジャージ男の表情は真剣であり、何か冗談を言ってるような雰囲気でもない。


 このままでは埒が明かないと考えたのか、巌男が口を開く。


「……巫山戯ている訳ではなさそうだが、お前の質問の意図が理解できん」


 巌男のその言葉に、ジャージ男は驚いた表情を浮かべる。


「理解できんって……、この言い方で聞けば普通は分かるだろう?」


「それはお前の周辺での事だけではないのか?」


「そんな、バカなっ! ここまで言っても通じないのか!?」


「さっぱり分らん。どっちかと尋ねるのなら、お前は一体何だというのだ?」


 巌男の問いに、納得がいかなそうではあったものの、ジャージ男が答える。


「俺は……西に見えるかもしれんが、東……だ」


 何か重大な秘密でもうち明けたかのようなジャージ男だが、ざっと見回した所、その解答を聞いてもピンと来ている者はいないように見える。

 ホント、一体何の事を言ってるんだろうな?


「西と東? ……それは西側諸国と東側諸国の事を言っているのか?」


「何を言ってるんだ? 西日本と東日本の事に決まっているだろう!」


 そのジャージ男の回答を聞いて、表情は変えていないものの巌男からの圧が増すのを感じる。

 あー、あれは冗談通じないタイプだなあ……。

 周囲をみれば、呆れたような顔をしている者が多い。


「……このような状況でジョークを言って和ませようとしたのかもしれないが、貴様のジョークは笑えないな」


 漫画だったらギランッとでも表現されそうな、鋭い視線をジャージ男に向ける巌男。

 至近距離で見たらなかなかの迫力があると思うのだが、それでもジャージ男は引き下がる様子はないようだ。


「そ、そういうお前は西日本連合所属なのか!? 確かに俺達は普段は犬猿の仲ではあるが、諸外国の攻勢には協力しあう事だってあっただろう! このような異常事態なら互いに手を取り合うべきだと思わんのか!?」


 ジャージ男の余りの剣幕に、巌男も「おやっ?」とした表情に変化する。

 かくいう俺も、どうも話がかみ合ってないような気がしてきた。

 あのジャージ男が虚言癖やアッチの世界の住人でもない限り、おかしいのはそれ以外のナニカという事になる。


「待て、落ち着け。まずその西日本連合というのは何なのだ?」


 巌男のその質問に、信じられないものを見たような表情を浮かべるジャージ男。

 しかし、俺や他の人も同じような反応をしているのを見て、ジャージ男も何かがおかしい事に気づき始めたようだ。


「何って……、俺達の祖国日本では、かつて東西の陣営に分かれて大きな戦があっただろう? それは近代化が進んだ今でも変わらない。本島を二分して、それぞれ西日本連合と東日本共和国として分かれて……いて……」


 ジャージ男の言葉尻が小さくなっているのは、周囲の日本人から向けられる奇異の目線のためだろう。

 先ほどまではあれほど自身満々に話していたのに、今ではまるで幽霊でも見るかのような目で、周りの人を見ている。


「東西の陣営に分かれての戦とは、関ヶ原の戦いの事か?」


「ああ、そうだ。あの大戦で痛み分けに終わった両者は……」


「待て、実際の関ヶ原の闘いは関ヶ原だけでなく、各地で行われた戦の事だったが、最終的には東軍の家康が大きな権力基盤を手にいれ、西軍は衰退していったはずだ」


「何? しかし、あんたが西日本連合のものだとしても、言ってる事が妙だな。……少し怖いのだが、ここにいる皆に尋ねたい。関ヶ原の戦いの勝者はどっちだった?」


 恐る恐るといったジャージ男の問い、同じような調子で発言が飛び交っていく。


「んー、歴史はあんま詳しくないけど、流石にそれはイエヤスの勝利っしょ? あーしでもそんくらい知ってるわ」


「ええ、家康の東軍が勝利したハズです。確か……西軍の小早川秀秋が裏切ったりなんかしてボロボロになったんですっけ?」


「あれ? 裏切ったのは別の武将じゃなかったっけ? どっちにしろ勝ったのは徳川の方だけどさ」


 次々と出る発言の全てが、東軍勝利を示していた。

 中には歴史に詳しくないのか、良く分からないという人や、歴史はそこそこの成績だったけど、そもそも関ヶ原の戦いなんてあったっけ? という人までいた。


 これらの発言を聞くたびに、ジャージ男は同じ日本人同士だと思っていた所に話が全く通じていないこの状況に、口を開けたまま固まっている。




「これは……もっと最近の日本の情報をすり合わせするべきでは?」


 縁なしのまんまる眼鏡をかけた男が、中指でクイッと眼鏡を押し上げながら言った。

 そのまんまる眼鏡の意図に気づいた巌男が、先陣を切って召喚される前までの日本についての話を語っていく。


 それは大筋の所ではとくにおかしな点はないのだが、所々で「んんっ?」って気になる点がいくつかあった。

 それは他の聞いてる人も同じだったようで、小首をかしげてる人が幾人か見られた。



「……話している間、周囲の反応を窺っていたのだが、どうやら疑問を感じてる者が何名かいるようだな。では、そうだな……例えばこういうのはどうだ? 二年前に消費税率が10%に増税されたが、覚えのない者はいるか?」


「え? 10%って、まだそんないって無いでしょ? 段階的に上がってはいたけど、三年前に8%に上がってからは、増税されてないわよ」


「ええっ? 何言ってるの、10%にはなってるはずよ。……二年前だったかは忘れちゃったけど」


「消費税って……確か野党の猛反対にあって、大分前にとん挫した奴じゃなかった?」


「……なるほど、な。どうやら俺達は日本人である事には変わりないが、少しずつ違う世界の日本人という事らしい」


「え? なにそれ、どういう事よ!?」


 察しの良い奴は既に状況を把握しているようだが、半数位はよく理解できていないようだ。

 そこへ先ほどのまんまる眼鏡の男がしゃしゃり出てきて、眼鏡をクイックイッとさせながら、パラレルワールド……平行世界について説明する。


 どこかの分岐で発生しえた別の可能性の世界。

 例えば俺だって、最初にあの妙な蝶を追いかけなかったら、その後の展開がガラリと変わっていたかもしれない。


 あの神と名乗る奴も言っていたしな。

 俺は本来トラックに突っ込んで死んでいる予定だったと。

 つまり平行世界のどこかに、トラックに轢かれて普通に神から特典を受け取り、異世界に旅立っていった俺もいるのかもしれない。




 まんまる眼鏡による平行世界講座が終わると、そのあと幾人かが召喚前の日本についてを語っていく。

 それらはやはり大筋では同じような感じなのだが、部分的におかしい所があるといった感じだった。


 難しいのは、最初のジャージ男のように、本人は常識だと思っているような事が、実は他の平行世界の人から見ればおかしい事だらけだというケースがある事だ。


 中には海を挟んだ隣の国と、世界一を自認する大国が、武力衝突を起こしたという世界もあったりした。

 確かに言われてみればあり得そうだなと思えてしまう内容だが、俺の記憶ではソレはまだ起こっていない事件のハズだ。


 この日本の情報のすり合わせだが、召喚された人数が多いために、途中で打ち切られようとしていた。


 ……のだが、一人の男が語った内容が、俺の注目を……ひいて、話に飽きていた人たちの耳目をも集める結果になる。



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