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大地転移 ~宇宙人に改造され、魔法少女にされかけた俺は、サイキックマインドを内に秘め異世界を突き進む!~  作者: PIAS
第二章 魔族国動乱編

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第126話 何でも屋アグレアス


「……それでその二人を連れ帰ってきた訳ね」


「うむ。中々良い拾いもんだった」


「そんな捨て犬を拾ってきたみたいに……」


 コボルドはやたらと野性味の強い顔をしてる奴が多いが、俺が連れてきたグシオンはその中でも大分柔らかい顔をしている。

 これくらいになると、樹里の言うように犬に近いかもしれない。


「確かにグシオンは犬に近いかもな」


「そーゆー意味じゃないわよ!」


 俺たちの会話を首を傾げて聞いているグシオン。

 何を言ってるかは分からないだろうが、自分の名前が出たので気になるようだ。


「とにかく順調に魔族コレクションに二人追加だ。そっちのアグレアスは口調こそ荒いが、鍛冶の腕は確からしい。お前達もなんか作って欲しいもんがあったら、頼むといいぞ」


「それはいいんッスけど、あの人ってドワーフですよね? あれも魔族コレクションになるんッスか?」


「いや、それが奴はドワーフではなくドヴェルグという種族らしいぞ」


「ドヴェルグゥ?」


 ドワーフという名前はこういう事に一番疎い沙織ですら、日本で暮らしていた時から知っていた。

 しかしドヴェルグという名称は三人共初耳のようだ。


「なんでも昔から魔族と付き合いの深い種族で、男の方は俺らからすれば見分けが付かん。ただ女の方はドワーフと違って見た目が普通に老けていくし、髭も生えるらしい」


「……髭がボーボーに生えた女の人って想像しにくいわね」


「思うに俺たちが顔だけ見ても、多分ドヴェルグの男女の区別はつかんと思うぞ」


「あの、それより大地さん。そこの二人を家に案内しないのですか?」


 それもそうだな。

 まだまだ部屋に空きはある。

 ……これから先、どれくらい従魔は増えていくんだろうか。


「ん、そうだったな。あーじゃあその辺は……ヴァル!」


【はい、なんっすか?】


【そこの二人に部屋を決めてもらって、トイレや風呂などの使い方を教えといてくれ】


【ガッテン承知ぃッ!】


 ……なんだ、その返事は。


 ヴァルは元気よく返事すると、早速二人を案内して家の中に入っていく。


 俺の作ったこの家は、玄関を入ってすぐのところにちょっとしたロビーがあり、そこから各部屋に通じる廊下が三本伸びている。

 以前はコの字型をしていたのだが、今はヨの字型に改造してあるのだ。


 西棟と東棟の間に挟まれるように増築された、ヨの字の真ん中の棒の場所には、リビングや食堂などの共用施設を設けてある。

 今日の夕食はその食堂で一同に会し、自己紹介などをしながらの食事となった。



【これは美味しいですね。どうやって作ってるんですか?】


【お、グシオンは料理に興味あるのか?】


【興味といいますか、普段親方の食事を作っていたのはぼくだったので……】


【へぇ、そんじゃあ今度から料理する時はお前にも手伝ってもらうか】


 今日は作り置きのものを出したが、アイテムボックスの中には素材のままの物も多い。

 従魔組の中だと、他の三人は料理出来ないらしいからな。

 グシオンには期待するとしよう。


【そうなると、ぼくの役目は料理などの家事全般ですか?】


 役目……か。

 正直、魔族コレクションを充実させる事しか考えてなかったわ。

 でも、そうだよな。

 せっかくなら何か役に立ってもらいたい所だ。


【特に決めてはいないが、まずはその辺を頼もうか。後は戦闘員としても働いてもらうぞ】


【え、戦闘ってぼくがですか?】


 大分びっくりしているグシオン。

 その反応からして、余り戦う事には慣れていない様子だ。


【俺たちは俺以外にも戦える奴が多い。お前にも最低限の力はつけてもらうぞ】


【あの……。でもこれまでろくに戦った事はないんですけど……】


【なあに、心配ない! 初めは誰も初心者よ】


【いえ、あの、確かにそれはそうかもしれないですけど……】


 ごちゃごちゃと言うグシオンを押し切り、俺はロレイとヴァルにグシオンの訓練を任せる事にした。


【主命、しかと承った】


【おいらもいいっすよ。あ、でもそれなら訓練用の木製の武具一式があるといいっすね】


【訓練用装備は後で用意しておこう。では二人ともしっかり頼む】


 俺が頼むと二人は小気味よい返事をしてくる。


【儂も訓練をしないといかんのか?】


 グシオンについて話していると、気になったのかアグレアスが話に加わってくる。


【お前は俺ん中では生産職枠だから、そこまで強さは求めん。ただ、最低限自分の身を守れる位には、戦えるようになってくれ】


【今後旅をしていくなら、そん位はやっとかねーとマズイって訳じゃな。分かった、これでも力には自信がある】


 グシオンに比べ、アグレアスは戦う事にはそこまで拒絶反応はなさそうだ。

 力に自信があるというだけあって、両腕はかなり太くて筋肉質だ。


【そうなると、メイスみたいな武器が良いのか?】


【自分の作ったもんの出来を確かめる為に、武器を振るう事はよくある。技術ってほどのもんは身についてねーが、一通りの武器を振るえるぞい】


【そんなら自分の好きな武器にするといい】


【だとしたら、やはり最初にダイチが言ったように、メイス系の武器じゃろうな。こりゃあ早速自分用の武器の製作を始めんといかんわい】


 大分テンションが上がっているアグレアス。

 今にもここを飛び出して、鍛冶場まで駆けだしていきそうな程だ。


 そういや鍛冶場で思い出したが、結局アグレアスのあの店は何の店だったんだ?

 ちょっと気になるから聞いてみるか。



【ところでアグレアス。お前のあの店は何の店だったんだ?】


【儂は何でも作るぞ? 武器でも食器でも家具でも家でも何でもじゃ!】


【……あの看板は本当にそのまんまの意味だったって事か】

 

【ワハハハッ! 初めてアレを見た奴は、皆似たような反応をしよるの。ま、同じドヴェルグでも、儂ほど多方面に手を出しとる奴は少ないがの】


 元の世界のように職業が細分化されてないとはいえ、流石に幅が広すぎるな。

 でも店の売り物を見た感じ、素人目にだがどれもかなりの出来に見えた。

 こいつは今後、色々と役に立ってくれそうな予感がするぜ。

 

【そういえば最初に名乗った時に、ドヴェルグクラフトマスターとか言ってたな】


【そうじゃ。ドヴェルグクラフトは数多いが、ドヴェルグクラフトマスターともなると、ガルダッシュでも数える程しかおらん】


【ガルダッシュ?】


【ここよりずっと西の少し北に行った所にある、ドヴィリンガル山脈を根城とする我らドヴェルグの王国よ】


 へー、そんな国もあるのか。

 けどドヴェルグは既にアグレアスをゲットしたからなあ。


【俺たちの目的地は西にある帝国なんだが、その途中でその国を通過する事はあるのか?】


【帝国を目指すなら主に北か南のルートになるが、そのどちらでもガルダッシュ領に足を踏み入れる事はなかろう。何せ儂等は山の民じゃからの】


 ふむ、アグレアスは多少この辺りの地理に詳しいようだ。

 ヴァルは国外となるとよく知らないらしく、ロレイも軽く話を聞いた程度でそういった情報には疎いらしい。


 俺はその後もアグレアスからこの辺り――南部魔族領と呼ばれる地域の情報を聞きだした。

 そして今後の大まかな進路を決めるのだった。



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