第125話 新たな従魔
さて、武器を作るにしてもせっかくだからロレイ用の武器を作るか。
俺がどんな感じの武器を作ろうか考えていると、ドヴェルグの男が話しかけてくる。
【材料はここにあるのを使ってもらって構わねえ。つっても、鉄や銅とかしかねーけどな】
【ああ、それなら必要ない。自前で用意するんでな】
そう言って俺はアイテムボックスから魔鉄や魔石を取り出す。
【こ、小僧……。今のは何だ? マジックバッグか?】
【違う。俺の魔法だよ】
【なあにぃ! 魔法だあ?】
ふうむ。
まあ沙織のと同じ感じの槍でいいか。
ただロレイはガタイがデカイから、サイズを少し大き目にした方がいいな。
俺は頭の中で設計図を構築すると、魔鉄を魔法で整形していく。
これは高熱にしてドロドロにするのではなく、金属の状態のまま流体金属のように操作している。
ちなみに普通の鉄をこの状態のまま魔力をアホ程つぎ込むと、魔鉄を作る事が出来る。
他にも余分な成分を排除したり、逆に別の金属と融合して合金を作ったりなんて真似も可能だ。
いやあ、最初にこの魔法を編み出した時は魔法ってすげーなって改めて思ったもんだぜ。
【な、な、な……】
ドヴェルグの男も、俺のこの鍛冶魔法を見て度肝を抜かしているようだ。
俺はその間に槍の形を整えていき、魔法文字を刻んだ魔石を持ち手の少し上の辺りに来るように融合させていく。
なお、槍そのものは魔法ではなく、念動力で宙に浮かした状態で作業を行っている。
もう慣れたもんで、一つ作るのにさほど時間はかかっていない。
元々予備の魔法武器用に、魔法文字を刻んだ魔石はストックしてあった。
そこも一からとなると、流石にもう少し時間はかかる。
【なんじゃあそりゃあああっっ!?】
驚き具合を表すかのように、やたらと大きな声で叫ぶドヴェルグの男。
下手すりゃ御殿にいる樹里達まで届いたんじゃないか?
【ほれ。ロレイ用に作ったから魔法剣ではないが、似たような感じの魔法槍だぞ】
【ぬ、ぬう……】
先ほどと同じく、受け取った魔法槍を矯めつ眇めつ眺めるドヴェルグの男。
【某の為に魔法武器まで御自ら作っていただけるとは、感激の極み!】
【え? えっ? おいらの分はないんっすか?】
【斧と盾はまだ作った事ないからな。今度時間ある時に練習して作っとくよ】
【わーい! やったっす!】
喜びを露わにするヴァルと、やたらと畏まっているロレイ。
別にこんくらいならそこまで手間でもないし、戦力アップに繋がるからそんな気にしなくてもいいんだけどな。
【これは確かに先ほどの魔法剣と似とる。ちゅうか、さっきの光景は儂の理解の範疇を超えとるわ。ありゃあ、一体なんじゃ?】
【何じゃって言われてもなあ。多分普通にやる鍛冶も、お手本を見ればそれなりに出来るとは思うんだが、生憎と腕のいい職人を知らなくてな】
それで魔法鍛冶を思いついたんだが、こっちは鍛冶場じゃなくても作業出来るのが便利で助かっている。
【魔法でそれっぽい事が出来ないもんかと、俺なりに試行錯誤して編み出したのがさっきの鍛冶魔法だ】
【鍛冶魔法……じゃと?】
【まあ俺が適当に名付けただけだ。この世のどこかには、同じような魔法や技術があるかもしれん】
【少なくとも儂ぁ、そんなモン見たことも聞いたこともないぞい】
この世界の魔法ってのは魔法書で覚える例の奴だ。
ああいった形式の魔法だと、確かにこういった魔法ってのは余り開発されないのかもしれない。
俺が聞いた話だと、魔法書の殆どは戦闘関連のものばかりらしいし。
【それにさっきは突然ポンと出て来たもんで流しちまったが、その材料に使ってる魔鉄。随分と質が良いもん使ってやがるな? それと一緒に出してたあの宝玉みてーなもんは一体なんだ?】
【おうおう、なんだか質問ばかりだな。俺はお前の言う通りに武器は作ったぜ? 従魔にはなってもらえんだろうな?】
【それもそうだった。いいぞ、従魔でもなんでもしてくれい!】
【そんじゃあ、まずその首輪を外すか】
俺はロレイの時同様に、首輪の宝石部に手を触れて魔法の術式をひっぺがす。
【これでいいだろう】
【お? おおおぉ?】
いともたやすく首輪が外れた事に、驚くドヴェルグの男。
ロレイ同様に首に手を当て、首輪がしっかりと外れている事を確認している。
その間に本人からの承諾も出たので、ついでに俺は契約魔法も使っておく。
といっても、特に光のエフェクトが出る訳でもない。
ヴァルに聞いた話だと、まったく自覚症状はないという事だ。
【んじゃ、指先を刃物で軽く切ってくれ】
疑問に思っている様子で、ドヴェルグの男は自分の指先を軽く切る。
それに合わせ、俺はアイテムボックスからナノマシンがぎっしり養殖されている血の入った壺を取り出す。
そして俺は壺から男の指先に向けて、血を垂らしていく。
【これは、血……か?】
【そうだ】
【なるほど。血を用いて契約するという話は、いつだったか聞いた事がある】
【いんや。契約はもう終わってるぞ。これは別件だ】
【別件だあ?】
んー、めんどいしこいつにもロレイ同様に秘術って事で通そう。
【力を授ける秘術って奴だ。力が増したり病気を防いだり、とにかくそう悪い事にはならんから心配はいらん】
【心配もなにも、既にその秘術というのを掛けた後じゃろうに】
呆れたような口調だが、そこまで気にしている様子はなさそうだ。
見た目どおり、豪快な性格をしているのかもしれない。
【で、その秘術とやらはグシオンにはやらんのか?】
【グシオンってそこのコボルドだよな?】
ずっと一緒にいたから話は本人にも話は届いているだろうけど、了承は取っていない。
……って、気に入った奴がいたらいちいち了承なんて取るつもりはないんだけど。
【そうじゃ。小僧の元々の目的はコイツだったんだろ?】
【それはそうだが、他にもこの街にはまだコボルドが残ってるから、今日は様子見のつもりで来たんだ】
【それならグシオンはお勧めだぞ。コボルドにしては気が効くし、真面目で仕事にも一生懸命前向きに取り組む】
【……だそうだが?】
【親方……。普段怒鳴られてばっかりだったけど、そんな風に思ってたんですね】
親方からの言葉にグシオンは少し感激してるようだ。
だが次の親方の言葉を聞いて、梅干しを口に含んだような顔になる。
【だからよ、こいつもお前の従魔にしてコキ使ってやってくれ。死ぬまで働いてくれるぞ】
【……だそうだが?】
【うう、どっちみち親方にはついてくって決めてるんで、ぼくも従魔にしてくださああい……】
【ほいきた】
俺は先ほどと同じ流れでグシオンを従魔にした後に、秘術を掛けていく。
【いやーっはっは。まさかコボルド以外にも収穫があるとは思わなんだ】
思わぬ成果に満足満足。
【儂もこんな事になるとは思いもせんかったわ。小僧……ああっと、そういやお前の名前をまだ聞いてなかったな】
【俺か? 俺の名前は大地だ】
【ダイチ、か。儂はドヴェルグクラフトマスターのアグレアスだ。そっちのグシオン共々今後ともよろしく頼むぞ】
こうして俺は新たに従者を二人加えると、御殿の方へと戻っていった。




