#2 クロス・ワールド
今日は特別に時間が早く過ぎていった。
ぼーっと弁当を食べていたと思いきや、今日の最後の授業が始まっていた。
ホームルームが終わると、3人はサッさと教科書をカバンに詰め込み、ゲームショップ(オラクル)へと向かった。
オラクルは、校門を抜けてまっすぐに進み、4つ目の信号のすぐ右にあった。
ドアを開けると、カランと上に設置されている小さな鐘が鳴響いた。
健二はたまらなくこの音が好きで、心が癒されるのであった。
店内は十畳ぐらいの広さに、ゲームソフトをぎゅうぎゅうに詰め込んだ棚が並べてあるのだが、棚も隙間なく配置されているので、何か不気味な研究所と勘違いしてしまう人もしばしばいた。
天井の四つ角には周りが見えるよう丸っこい鏡が吊らされていた。万引き防止の為だろうか。
健二は拓也に引っ張られ、噂の元へ向かったのだが、拓也がメガネを指で拭きながらあたりをキョロキョロ見渡した。
「・・・・・ない、ここに在ったんだ。」拓也がキレイに並べてあるソフトの方をみながら言った。
健二はジョークかとおもった。
あれだけ、2人で熱心に話してたものが実は嘘!?
「こうちゃん、ここだよね!あぁ・・・・売れたのか!?」
拓也は夢ではなかろうかと、自分の頬を引っ張っている。
窮屈そうにこうちゃんも、辺りを調べるが全く見つからなかった。
健二も探してはみたものの、この中から2人が言ってたゲームタイトルだけを頼りに探すのはかなりムリがある。
拓也はその後、店の販売員のおじさんに、探してもらったが見つからなかったようだし、おじさんもそんな物はうちには置いとらんと言っていた。
それから少したって拓也が探すのを諦めた。
3人はオラクルを出ると、
「じゃあ」と一言いって健二は2人に別れを告げ2人とは反対方向の家に帰ることにした。
拓也が健二の背中に向かって甲高い声で
「本当に昨日はあったんだ!!」
「あぁ・・・」
健二は振り向きはせず、片手だけ上げ、力なく返事した。
「本当の話なんだ・・・・」
拓也の声にも力が抜けていた。
健二が家につくと
リビングの方に灯りがついていて、扉から父親と母親の声が漏れていた。
「なんで"アレ"が私達の家に・・・・」
怯えてる?
そんな様子を口調から感じ取れた。
次に父親の怒鳴り声が響いた。
「仕方ないだろ。私じゃなんもできんのだ。」
ケンカでもしたのだろうか?こう言う時は触れずにいるのが一番安全だと思い、健二はそのまま自分の部屋へと向かった。
真っ暗な部屋に入ると肩にかけていたカバンをベッドがある方向へと放り投げた。
手探りで壁に手を伸ばし部屋の電源をいれ、辺りを見回すと、今日の朝から何も変わってはいなかった・・
ただ、1つの箇所を除いて・・・・
中央にある小さなテーブルの上にキレイに包装された物が置いてあった。
健二はそれを手に取ると、それが何かに気づいた。
ソフトだ。
プレステのソフトだ。
中身は開けていなかったが、重さと包装されている形だけで解った。
なんでだろうと思い、一瞬だけ母親に聞きに行こうかと思ったが、さっきの様子を思いだし行くのをやめた。
とりあえず中身を取りだすことにし、キレイに包装をはがした。
中には、丁寧にプチプチでも包装してあった。
中身を取りだすと、そこにはやはり、ゲームソフトが入っていた。
「・・くろす・・・・・・・・わーるど?・・・・・クロス・ワールド!?」
健二が驚きながらタイトルを見た。
今日、拓也とこうちゃんが言っていたゲームと同じタイトルであった。