表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/25

Ⅲ.第12話

 

 静かな話し声が聞こえる。


 言葉は空気中を漂う粒子と結合して、幾筋にもなって落ちてくる。

 意味を失い、ただの囁きとなって。


 感覚的な意識は、緩やかにほどけて、次第に広がっていくようだった。



 突然。

 切り離されていた身体(からだ)の意識が急に繋がった。

 押し寄せてきた激しい痛みが、意識全体を支配する。


 痛みを伴って、何かどろりとしたものが身体を走る。

 視覚的意識はまだ全て覚醒していなかったが、それが吐血だと分かった。


 レスト


 誰かの声。

 俺の……名前?


 混濁した視界。

 完成していないパズルのように抜け落ちて見える。


 彼女だと分かった。

 いつだって、どんな姿だって彼女のことは分かる自信がある。

 でも、何が誰が君をそんなに悲しませてる?


 徐々に記憶が戻る。

 教会、黒衣、ナイフ、女性、炎、池……


 はっきりと聞こえないのは中耳腔圧平衡が不完全なせいだ。

 俺は、水は苦手だから……。


 溺れていた俺を、彼女が助けてくれたのか?

 力の戻ったゼフィアは、何だってできちゃうからな……俺より強いかも……。


 呼吸のたびに傷が痛む。


 ここまでか……。

 ふと思った。


 それでもいい。

 俺は望んでいたものを手に入れたから。


 額に、やわらかい唇の感触。

 痛みから逃れたくて閉じていた(まぶた)を、開けた。


 そばに、悲しげな彼女が見えた。

 俺は微笑みたかったけど、うまくできなかったかもしれない。



 ゼフィアは、自分の首から月を(かたど)ったアクセサリーを外した。

「今まで、父に封印されていたんだけど……父が死んだことでその封印が解けたみたいなの」

 言いながら、そこから光を取り出す。


「ごめんなさい。……レスト、許して……」



 光はレストに吸い込まれ、彼を包みこんだ。


 圧倒的パワーのエネルギーに押し流され、意識を掴んでいるのが精一杯だった。

 身体の内側が引き裂かれ、引き剥され、()ぎ離されるような感覚。

 熱に(さら)された息苦しさが、痛みを上回った時———。


 ———全ての重苦から解放された。



 ゼフィアはただ見守っていた。

 彼の呼吸が止まったのを……。








お読みいただき、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ