Ⅲ.第8話
もう眠れそうになくて、ゼフィアは部屋からバルコニーに出た。
薄闇の中に滲む月の光が、やわらかく彼女の輪郭を浮かび上がらせる。
彼女の不安げな表情とともにーーー。
「本当に……」分かっているのかしら?
あまりレストの過去は知らない。
それが抑圧されたものであることが分かって、知るのを躊躇った。
そして、知りたくないと思った。
彼の調査をしていた時のことだ。
彼が自分の感情を隠すのが得意なのは分かっている。
だから、彼が感情に正直になるとは予想外だった。
何かが彼を変えた。
でも、おそらく、そんな彼に嘘をつかせてしまった。
静かに「分かった」と言った後、何か考える様子を見せていたレスト。
「おやすみ」とだけ言って、そのまま出て行ってしまった。
彼の苦悩が分かる。
私も同じだから。
でも、私だけのものではない彼を、このままここに閉じ込めておくことはできない。
レストを王として迎え、彼を永遠のものにする。
そして、ずっと私の瞳の中に留めておきたい。
そんな理想は……あまりに非現実的すぎる。
でも、本当にそうできたら。
ゼフィアは悲しく微笑んだ。
彼は優秀なソウルブレイカー。
きっとソウルメイカーになっても素晴らしい逸材となるだろう。
それをどうして私が阻むことができる?
少し暗くなった空を見上げる。
偽物の月に薄い雲がかかっていた。
まるで、その輝きを失わせようとするかのように。




