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詩集「ニコラ」  作者: 維酉
重い
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重い

真っ暗闇の中を

反射光を怯えもなく撒き散らして

衛星が ここより遠く

純なままの空間を突き進んでおり

その軌道を

正確に測って

これからの標としよう



   ◇



大気圏の内側

望遠鏡を覗いて見る

空間に散らばった星々の峰

ひとつひとつ

まるで同じように見えて

あの星は赤く

その星は黄色い

熱はたくさんの色を生んで

まだ空間は広がり続ける

果てしなく

一向に遥かでしかない


いま 無辜の子どもらが

原っぱを駆けるそのさまのずっと遠くに

荒地を巡り 戦争が走り

夜になると

衛星が未だ燃える戦地を見下ろして

感傷もなにもなしに

でこぼこな身体をくるくると回す


星に心はない

寄り添って慰めるような光も

慈悲なんかじゃない


空間は広がりを見せ

いつまでも冷めない熱を伝える

無感情が生まれ

いつまでもたどり着けない深淵が始まる



   ◇



きみが宇宙の片隅にいて

このちっぽけな人類の端っこで

だれかを見上げたり

見下したりしているなら

いまさらでも会ってみたい

この重い大気

哀しみの奥底で踊る希望

ぜんぶぜんぶ あいしているのだ

きみもたぶん 結局そうだ


標は天空に

喜びは地上にあって

地に足つけた喜びは

いつか哀しみと抱き合ってしまう

いつかなにかの無感情にあてられて

幸福と感傷を手放してしまう

この星も あの星も

どうせ人を殺すための口実

銀河系からの逃避行

うまく決めてしまおう

街灯の明るさを縫って

たくさんの古い季節を捨てて

手を引いて走って

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