19/20
みちびき
懐かしい幸せを探しに
さざめく季節のゆりかごの中
ありったけの冒険をする
半端に笑っていた
古い記憶を蘇らすために
空想の中に
ゆったり沈んでいくのですよ
あたしはまだ不死身ではないから
かんたんに死ねて
かんたんにそれを拒める
懐かしい幸せは
たとえばいまは崩れた秘密基地だとか
切り倒された桜の木だとか
そういう喪ったものであるとかする
再生はなく
ただ季節だけがめぐり
春が生命を生み出し続けるだけ
回想は淘汰されて
いつか実在した時間さえ消える
露のように消えていくのですよ
それがあたしには
ひどく寂しいような
それでもどこか
ほっとしているような……
なにを見れば幸福といえるか
生命の誕生は謳われるべきか
春はいまだあたしたちをみちびくのか