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爪
爪を切ると
いままでのことが
ぱちん
と、墜ちていく気がする
なにかしらの思い出が
こうも凝り固まってしまった
いま、梅雨が過ぎ
地も固まったのではあるまいか
記憶の根底に根差す
乾燥した夏の乱反射、光線、霹靂神
哀しみと美しさの
相対的な感傷の連鎖に
ちょうど打ちひしがれている
空き教室の、ギシギシ鳴る
椅子の脚に縋るような寂しさがあって
埃のにおいに混じり
雨の残り香がした
いずれ乾き出す季節を
こうやって、いまさら感じてしまう
ひっそりと雨の季節
生きにくさが詰まってんよなあ