ギルドからミミへ
とりあえず、俺は話すのを諦めた。それと仲間を見つけるのもだ。
ギルドの職員があんだけ笑うってことは相当に変なことを言っているとしか思えない。
「魔王討伐ってどこが変なのか教えてください」
なんて言えるわけがない。恥を恥で上塗りするだけだろう。
「変なのはあなたですよ?」
とか言われたら、俺はダッシュでじいさんを殴りに行き、この町には二度と戻らないようにするしかない。
でも、たぶん死ぬ⋯⋯そしたら結局は戻ってきてしまう。
ならやっぱり、なにも言わずにギルドを立ち去ったのは正解だったんだろう。
「こんにちわ! 良かったらミミが一緒に行きましょうか?」
色々と考えながら歩いていると、袖を引っ張られ振り向くと女性がニコッと笑いながら話しかけてきていた。
「んっ? どうして俺に声をかけてきたんだ?」
「魔王討伐したいんですよね? ミミも夢だったんですよ! 魔王討伐。でもミミは傷を癒すことしか出来ず、力の強い人を見つけなければ魔王討伐は出来ないのです。
さっきのギルドの対応でもわかったと思いますが、この世界はちょっと違うのですよ」
この世界?
「お前は、転生者なのか?」
「はい~。死ぬ間際に、『傷さえ自分で治せれば~』って思いながら死んだのでそのまま、治癒の力を頂きました」
ニコニコと自分の死と直面できるとは、若いのに感心する。ってか、何歳なんだ? もし見た目に反して俺より年上だったら失礼にあたる。そういうのは始めに知っておいた方がいいだろう。
「ちなみに歳はいくつだ?」
「ん~11歳の時に転生して、この世界にきて5年経ったから16才って事になるんですかね?」
「なら同い年か。ならわざわざ敬語なんて不要だぞ」
「いや~ミミは敬語が慣れちゃてるのですよ。なので今更感があるので大丈夫なのです。
で、どうします? 一緒に行きましょうか? むしろミミはあなたが良いと言うなら喜んで行きたく思っていますよ!」
まだこの世界にきて間もない俺は、この世界の事を殆どしらない。願ったりかなったりだ。ただ、町から一歩外に出れば危険が伴うだろう。
いくら生き返ると言ったところで、痛みは伴う⋯⋯
「その言葉はとても嬉しい」
「ならっ!」
「でもだ、何があるかわらない。すまないが1ヶ月⋯⋯いや、一週間待ってくれないか? 一人で町の外がどんななのか予め知っておきたいし、きみに迷惑をかけたくはない」
そう言って、俺は彼女に頭を下げた。
「ん~、ミミは気にしませんけど。まぁ、わかりました!
一週間待ってみます。私は町の西側の奥の住宅街に住んでいますので、『ミミに会いに来た』と言ってもらえばわかると思いますので」
「わかった。ありがとう」
そうお礼を良い、その足であのジジイを殴りにいった。