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リド・ワールド     作者: あおねこ
全ての始まり
6/33

異世界でも嫌われ者

「どうか、どうか!我が国をお救いください!お願いいたします!」

「「「「「「お願いいたします!」」」」」」


夕食前、メリシアスタ王女と明らかに身分の高そうな人たちが一斉に頭を下げるという状態。ただの高校生だった僕たちにはちょっと刺激が強かった。


メリシアスタによると、この世界はかなりヤバい状況らしい。


かつて世界に恐怖と絶望を撒き散らした魔王がいた。


魔王は魔族を作りだし、世界に解き放った。


何千、何万、何億と出現した魔物達に太刀打ちできず、人類は存亡の危機に陥った。


当時、英雄之王(えいゆうおう)、レルド率いる勇者達の懸命な活躍によって魔王を南の大陸で討伐、封印之王(ふういんおう)メイルトンによって大陸ごと封印した。


勇者達の活躍によって世界に平和が戻った。これが四千年前。


半年前、突然南の大陸の『封印の大門』の向こう側で魔物の暴動が発生。その時、魔族の人、魔人が叫んだ。


「魔王様が復活した」と。


眉唾物だと一笑に付したが、少しずつ『封印の大門』の向こう側に魔物、魔族が集結していて、看過できない状況になったらしい。




「実際、北の大陸に発生する魔物の数も増えました。我々王国領土でも...他の帝国や共和国には強力な戦力がありますが、我々セレンバーグ王国は周りの国家と比べると戦力が乏しいのが現実。」


「だから私たちを召喚したと?」


クラスの代表として羽柴がメリシアスタに質問する。


「図々しいのは百も承知です!ですが、それでも私は罪のない王国民が惨殺されるのを見たくないのです!!」

「...僕たちが帰る方法はわからないのですか?」

「...わかりません」

「そうですか」


そういって羽柴は静かに椅子に腰掛けた。


「おっ、おい!羽柴!そんなのわからねぇじゃねぇか!信用できっかよ!」


案の定、福島が叫ぶ。トウルにとっては、自分たちが帰れないことはある程度予想できていたことだったので別になんとも思わなかったが、周りはそうではないようだ。


「いや、信用できる。みんなもロールとスキルは確認しただろう。僕のロールの一つは[審判]。彼女が嘘を言っていないと分かるんだ」


羽柴のロールは[審判]。さらに、ロールの一つ、といっていたから一つではない、と、こんな時でも情報収集を欠かさないトウル。[研究者]の名は伊達ではないのだ!


「おっ、おう」


羽柴のいつになく真剣な眼差しに押されたのか、福島は黙る。


おい、もっと質問しろよ!そしたら羽柴についてもっと知れるかもしれないだろう!など思っているトウル。この重い空気の中、一人だけ違うことを考えている胆力にトウルは精神力26000さまさまだぜ等と思っていた。


「みんな!ここはこの人たちの言うことを信じてみないか?幸い俺達はこの世界の人たちよりもずっと強いらしい。それなら魔王と戦って世界を救わないか?」


「おっおお!」


羽柴の提案にほぼ全員が力強く返事をする。どうやらこれからのクラスの方針が決まったらしい。


(まあ、別にいいか。訓練ぐらいするだろうし、その時に俺も強くなれればな)


特に異論もないのでトウルも小さく返事をする。こういう場面では空気を読んだ方がいいと前の世界で嫌と言うほど知らされたからだ。


「勇者様方...ありがとうございます!!私たちセレンバーグ王国も微力ながら勇者様方を補佐させていただきます!」


顔を赤くしながらメリシアスタ王女が頭を下げる。主に合わせるように周りの人たちもお辞儀をしていた。


「では!まず我が国自慢のセレンバーグの夕食をお楽しみください!」


王女の声に呼応するように集められた大部屋の扉が一斉に開く。扉の向こう側にいたのはたくさんのメイドとその手にある見るからに豪華な食事。


気になることはまだまだあるが、トウルはとりあえず食事を取ることを優先した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


翌日


「よく来た!勇者諸君!私はセレンバーグ王国騎士団団長!ダーリネル・コーネストだ!早速だが勇者達には自分のロールが何か教えてほしい!」


広い大広場に大きな野太い声が響き渡った。


みんなその声に戸惑いながらも羽柴からダーリネルに自分のジョブを教えていく。


情報収集の時間だぜ!と言わんばかりにトウルは聞き耳を立てた。


『盗み聞きの経験を確認しました。スキルを取得します。...成功。スキル[聞き耳]を取得しました』


スキルを取得した途端、クラスメイトとダーリネルの会話がよく聞こえるようになった。こりゃ便利だなと思いながらトウルは遠慮することなくクラスメイトのステータスを確認していく。


「...[審判]...[剣士]...[炎魔術師]...[土魔術師] ...[槍使い]...[拳闘師]...」


(戦闘系ばかりじゃないか。僕も戦闘系のロールが欲しいよ)


『暗記の経験を確認しました。スキルを取得します。...成功。スキル[暗記]を獲得しました』

『スキル[暗記]を確認しました。役割(ロール)[研究者]が[博士]に進化しました』

上位(ハイ)役割(ロール)を確認しました。役割(ロール)をもう一つ取得できます。検討中...。固体名、トウルの希望と経験に基づき、戦闘系役割(ロール)[投げ師]を取得しました』

『スキル[投擲]を取得しました』

『スキル[解析]を取得しました』


(きたぁあああああああああああ!!!)


トウルの心は歓喜に震えた。冗談抜きで。


[投げ師]。名前から考えて投擲術を使うロールだろう。地味な物だが問題ない。ロールは進化するのだから。研鑽を積み、努力を重ね、常に頭を回す。それだけで強化できるはずだ。


[博士]というロールも気になる。数学者の[演算]でもかなりの性能だったのだ。それがさらに強化されるとは。


「次!君!君の名前とステータスを教えてくれ」


トウルの番がきた。トウルは慌てて興奮した心を沈めてステータスを開く。


三度目のステータスオープン。ロールの進化の影響か、やはり進化していた。



名:トウル カゲヤマ  男性

年齢:17

役割(ロール):ハッカー、プログラマー、泥棒、博士、投げ師

称号:復讐に燃えるもの、異世界からの戦士、神を驚愕させたもの、高みを目指すもの、勝利欲の体現、知識欲の象徴

加護:神からの加護

能力値


筋力:700

体力:800

防御力:1700

魔力:1000

速力:800

知力:2500

精神力:27000


固有スキル(ユニークスキル):ハッキング、プログラミング、気配遮断、言語理解

アクティブスキル:

スリ、逃げ足、鍵開け、投擲、暗記、解析

パッシブスキル:

器用、演算、超思考Lv2、聞き耳


「精神力27000!?嘘じゃないだろうな!?」

「嘘じゃありませんが」


騎士団長が大きな声を出した。やはり27000、同年代の平均の60倍以上の精神力だからだろう。


「ううむ、嘘は言ってはいないか。それに...[博士]、[超思考]と[解析]まで持っているのか。戦闘は[投げ師]があるから前衛がいれば問題なさそうだな...。カゲヤマと言ったかな?おめでとう。君はこの勇者の中でも片手の指に入るほどの実力者だ!」


ダーリネルが大声で叫んだ。途端、トウルに視線が集まる。


だが、それは決して気持ちのいいものでは無い。むしろ逆だ。ヒソヒソとトウルを噂する声が聞こえた。


いくら声を小さくしようともトウルは[聞き耳]を持っているので丸聞こえだ。


「...え?何?あいつが5本の指に入る?草生えるわ」

「むしろ逆に笑えないんですけど。あの騎士団長とかいう人バカなの?」

「あんな雑魚、どうせいつも負け犬なんだよ」


周囲から聞こえる声にダーリネルも何かを察した顔をした。そして深く考え込むような顔をした。


一方トウルは別に気にしていなかった。前の世界ではいつものことだったからだ。


確かに前の世界では負け犬だった。だが、前の世界では、の話だ。この世界でも負け犬を続けるつもりはさらさないし、ならないように努力も重ねる。いつまでも最底辺ではないのだ。


「...まあなんだ。みんなの能力も把握できたからな。早速訓練を始める。まずこちらが指定したペアを作れ」


ペアと聞いてクラスメイトの間で一種の緊張感が生まれる。ペアの相手が当たりかはずれかだ。


当たりとは羽柴や武田、広瀬たちの事で、はずれはトウルのことである。


ダーリネルはそんな緊張感を知らずにペアを作っていく。


「モガミはキョウゴクと。タチバナは、うーんオオトモと」


このクラスは共通の敵を作り出すことでクラスの仲を良くしている。共通の敵がだれかはお分かりいただけるだろう。


その為ペアが発表されてもトラブルが起こることもなかった。


「次は、カゲヤマだな。そうだな...」


周りの視線がトウルに突き刺さる。自覚していた事だが、ここまで嫌われていると流石に傷つくトウルだった。お前らに何かしたか僕!と叫びたくなるが、それを胸の奥にぐっとしまい込んだ。忍耐力に関してはぶっちぎりでトップだろうと自画自賛するトウル。こうしないとやっていけないのだ。



「そうだな。ヒロセと組め。」


瞬間。強烈な圧力がかかってきた。中身は100%、なんでお前みたいな奴がヒロセと、だろう。ペアを決めたのは騎士団長なのだからそちらに文句を言ってほしいとトウルは思う。


全方位からの敵意と殺気に自慢の精神力でらくらく受け流しながらヒロセのほうに向かった。


ヒロセは戸惑っている様子だった。周りの空気が急激に悪くなっていることに驚いているのだろうか。


「よろしく。ヒロセさん」

「えっ、あ、うん。よろしく」


気のせいだろうか。ヒロセの頬に朱が混じった気がする。


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