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第97話 合同パーティで戦場へ

いつも誤字報告ありがとうございます


 何故か四人の女性と組む事で冒険者ギルドからの紹介状を貰えた。

 ハナノエさんとラッチさんとは一度面識があるので、ウータエさんとテルーエさんとは簡単に自己紹介を済ませた。

 こちらもセーさんは初めてだったので、外から呼び寄せて紹介をした。


 受付の人の話では、四人の内三人がAランクで、僕がSランクだから紹介状が貰えたみたいだ。セーさんは実力はAランク以上でも、ランクはCだし今回はその他一名みたいな扱いだ。


 Sランクでも二人ならよかったんだけど、一人だとダメだったみたい。

 早くセーさんをSランクにしないといけないかな?

 でも、こういう事ってあまりない気もするし、旅するだけならいらないか。

 今回はイレギュラーだしね。


「ありがとうございます、助かりました。僕とセーさんだけだと許可が下りなかったみたいなので、声を掛けて頂いて本当に助かりました」

「いいのよー、こっちだって足りなかったんだからお互い様!」

「左様、Aランクでも五人でなければ許可が下りなくて困っておったところだ。こちらとしても助かった」

「……」

「やっと帰れるのですね……」


 彼女達はカーシマシープラスワンという四人の女性だけで行動するパーティだ。門へ移動しながら自己紹介も兼ねて話している。

 彼女達も冒険者ギルドで足りない分のメンバーを探してたのだが、あとAランク二人というのはあの場ではハードルが高かったらしく、かと言って他の大人数パーティには入りたくなかったそうだ。

 大人数パーティだと下に組み込まれて自由が利かなくなるか、トップに据えられて皆の面倒を見ないといけなくなる。

 どちらにしても自由に振舞えなくなるのは得策ではないと判断したためだ。

 そこにちょうど現れたキズナに白羽の矢を立てたというのがここまでの流れ。見つけたのはちびっ子魔道士のハナノエだった。


「……ちびっこ違う、私は成人。リーダーで最年長」

「うそ!?」

「残念ながら本当だ。ハナノエは我がパーティのリーダーだ」

「数ヶ月早く生まれただけだけどね。一応、今は同い歳になってるし」


 騎士風の姿のテルーエさん、狩人風の姿のウータエさんがそれぞれフォローしてくれた。


「年齢だけで言うと私が一番年上ですけどね」


「「「えっ!?」」」


 僕だけじゃなく、彼女達メンバー全員が驚いた。

 一番年下……いや、ハナノエさんがいるから二番目に年下だと思ってた…えーと、ラッチさんが最年長だという事実に、つい驚きの声が出てしまった。


「ラッチって年上だったの!?」

「そうだ! 役立たずが年上とは納得がいかん!」

「役立たずって! そりゃあ戦闘では役にたってませんがそれ以外では役に立ってます!」

「……ラッチは買い物が得意」

「そういう認識ですか……買い物じゃなくて計算や書類整理なんかが得意なんですけど」


 料理もそこそこ得意ですよ? 野営料理はあまり得意ではありませんが。と言うラッチさん。


「人それぞれ得手不得手はありますからね。得意な分野で活躍すればいいと思いますよ。それで、みなさんは戦闘要員として行かれるのですか?」


 こういった女性のやり取りは、あまり実が無く話が長い場合が多いので、さっさと話題を本線に戻した。

 ただ、ラッチさんには思いのほか好評な発言だったようで、潤んだ目で僕を拝むように見て来る。そんなに酷い扱いを受けてたんだろうか。

 そんなラッチさんを放置してテルーエさんが答えてくれた。


「いや、我々は戦闘には参加せずローゼンハルツ王国へ戻りたいのだ」

「なんか勇者が来たって連絡が来たのよ。それも私達に相手をしろって内容のね。無視しようと思ったんだけど、送り主が王だから無視できないのよね」


 テルーエさん、ウータエさんが答えてくれた。

 勇者!? あれ? でも勇者はこの国にはいないって、いつだったかハーゲィさんが言ってたような……

 この国じゃなく隣の国にいたの!?


「それで、国に戻る途中なんですね。でも、何故このルートを選んだんですか? 別のルートなら簡単に戻れたんじゃ……」

「砦町の事を言ってる? あっちはちょっとね」

「ふむ、また雑用を頼まれそうだしな。ラッチも今更戻れんだろう」

「いえいえ! 絶対にそんな事はないです! 普通に軍に戻れますってば!」

「……無理。もう冒険者扱いになってる……はず」

「いえいえいえいえ! なってませんから!」


 涙目で大きく主張するラッチさん。

 また脱線しているので話を元に戻す。


「何か事情があったんですね。でも、ここの依頼ってバルバライド王国側の徴兵みたいなもんでしょ? ローデンハルツ王国へ行くって言って通るんですか?」

「そんなの言うわけないでしょ。戦闘でも夜営でも隙があれば抜け出して向こう側へ行くだけよ。なんで冒険者が戦争に狩り出されなきゃいけないのよ」

「戦闘中は無理だな。我が目立ってしまうからな」

「……キズナも意外と抜けてる。冒険者は戦争はしない」

「私も自軍とは戦いたくないです」


 質問には答えてくれたけど、辛辣な答えが返って来たな。

 対人間の戦闘はしない、か。違うな、戦争には参加しないって言ってるんだな。

 しかしラッチさん…あんたここにいていいのか?

 流石に服装は以前と違って軍服ではなくなってるけど、バレたら捕まるんじゃないの? 敵軍の軍人さんでしょ?


 そうだ、そうだよ! ラッチさんってバレたら大変な事になるんじゃないの? 皆、その辺分かってるの?

 全く緊張感の無いカーシマシープラスワンを見てると、こっちの方が緊張してきた。

 その思いに至ってからは、門が近付くにつれて緊張の度合いが増してきた。

 彼女達からは全く緊張感は見られない。当の本人であるラッチさんですら平然としていた。


「キズナ、貴殿がリーダーだ。兵の対応は任せる」

「え? あ…そ、そうですね。わかりました」


 テルーエさんに言われ現実に戻された。確かに一番ランクが高いのは僕だな。

 僕がしっかりしていれば問題ない、はず。と自分に言い聞かせ門兵の前に歩み出た。

 門兵に冒険者ギルドでもらった許可証と依頼書を渡し、人数の確認だけされると簡単に門を通された。

 許可証さえあれば通るのには問題なかったみたいだ。お役所仕事なんだな、と思いはしたが、こちらにとっては好都合。

 ラッチさんが軍人とはバレずに簡単に門を通れた。

 ま、ラッチさんって軍服でも着てない限り軍人だって言っても誰も信じないだろうけどね。


「しかしラッチさんの服装も大分変わりましたね」


 ラッチさんからしてみればここは敵地のど真ん中。同道している僕達も同罪になるわけで、まだ緊張感を保ってないといけないのは分かってるんだけど、門での対応振りを見る限り、気を張り詰めすぎても逆効果だと思い、気を紛らすためもあって気軽に話しかけてみた。


「はい、ランガンの町の道具屋さんが中々いいアクセサリを販売してまして、この装備はそのクツール魔道具屋で購入したんです。オーダーすれば自前の防具にも付与してくれたので、凄く助かりました」


 クツール!? マジツさんとこじゃん!


「そのお陰でようやく六〇階層台の状態異常地帯を抜け出せたんですよ」

「あれはよかった。鎧のような大きなものは出来ぬが、ガントレットなら何とか付与できた。そのお陰もあって踏破できたようなものだ」


 もっと大きな容器にならなかったのか。と愚痴が入るテルーエさん。

 あれって元々アクセサリ用だからね? 鎧ならワッペンとかシールとかに付与して張り付ければよかったのに。


「ポーションにも助けられたわよね」

「おお! 通常ポーションの効果の高さもそうだったが、あの状態異常回復ポーションには大変世話になった。装備の付与だけでは完全に遮断できぬものもあったからな」


 マジツさんとこに納品した付与装置って、本来の十分の一ぐらいの効果しか付与できなかったもんな。

 それでも幾つか重ねて装備する事で効果を上げられるんだけど、それでも二分の一強ぐらいまでか。重複しすぎると効果が薄くなるのが欠点だよね。

 だからもっと効果を上げたかったんだけど、あの規模で魔石も節約したからあれが限界だね。


「……あのポーションはキズナの作品」

「そ、そうなのか!?」

「え、ええ、まぁ。でも、よく分かりましたね」

「……キズナの事はなんでも分かる」

「えっ……」


 ハナノエさんってヤバい系?


「……鑑定すれば作者もわかる」

「あ、そういう……」


 あれ? でも、魔道具もポーションも僕の作ったシステムが作っただけで、僕が作ったわけじゃないんだけど。


「ハナノエさんってポーション工房もクツール魔道具屋も自ら出向いてましたもんね」

「……キズナの匂いがした」

「僕の匂い……?」


 げっ! やっぱりヤバい系じゃないの!?

 ハナノエさんの発言で皆が押し黙ってしまって凄く悪い雰囲気になってしまった。

 ま、もうちょっとで目的地に到着だから少しの我慢だ。


 本来ならブラッキーさん達の事を心配しないといけないんだろうけど、ここに来るまでに何日も掛かったし、町に入ってからは膠着状態が続いてるって話を聞いてるから今の僕に焦りは無い。

 と言っても、久し振りに会うメンバー…この場合は元メンバーになるのかな? ブラッキーさん、ホワイティさん、バンさんと会うのはとても楽しみにはしてる。

 まだ一ヶ月も経ってないはずなんだけど、こっちも色々とあったからね。凄く時間が経った気がするよ。


 町の門を出て、一本道を来ると砦があった。

 ここに来るまでの道の周りは森なんだけど、見回りは万全のようで、森に入った時点で捕まりそうだ。

 ここまで西に来ると強い魔物はいない。何十年かに一度イレギュラーがあるぐらいと聞いている。

 だからなのか、森の中は単独で点在して警邏をしているようだ。何か異常を見つけたら笛でも吹くんだろう。

 僕も探索に慣れて来たからそれぐらいは分かるようになった。当然セーさんには分かっているだろう。ずっと黙ったままだけど。

 何考えてるか分からないけど、歩いてなかったら寝てるんじゃないかと疑いたくなるぐらい静かに気配を消してるよ。


「君達は応援の冒険者か」


 砦の入り口で番をしている兵士が尋ねて来た。


「はい、全員で六名です。Sランク1名とAランク3名がいます」

「おお、それは心強いな。まずは、兵士長のところで登録をして指示を仰いでくれ」


 許可証を見せ、砦に入った。それはもう、簡単すぎるぐらいに。

 だって入り口には一人しかいないんだ。それも、若い新兵が一人だけ。

 ま、前の門の警備が厳重で、道にはいなかったけど周囲の森の中には点在する多くの哨戒兵がいたから、この入り口は簡単な確認程度なんだろうけど、軽く見すぎな感じはする。

 とても戦時中とは思えない警備の甘さだ。


 横に長く広がる厚い壁のような砦の中央にあった入り口に入ると、真っ直ぐの通路があり、三〇メートルほど先にはもう出口が見えていた。あの出口を抜けると戦場かもしれないが、今は全開になってるので向こうの状況も見えている。

 今は戦闘は起こってないようだ。


「む? キズナよ、警戒だ」


 小声で伝えてくるセーさん。

 カーシマシープラスワンの面々にも聞こえてるはずだけど、二列で並んで歩いてるので、後ろのハナノエさんとラッチさんには聞こえたかもしれないけど、小声だったから最後尾のウータエさんとテルーエさんには聞こえなかったかもしれない。


「中は問題ない。となれば外?」


 僕も小声で聞いてみたけど、セーさんは正面の出口を見たまま返事もしない。

 それが答えなんだろう。問題があるのは外。しかも警戒を厳にしているという事。

 分かりにくいけど、これぐらいは先生達との授業でも何度も熟している。戦闘中には言葉のやり取りは最低限にという先生もいたからね。

 まったく話さずアイコンタクトのみでコンビ技をさせられた事もある。セーさんのこの仕草だけで十分に伝わったよ。


「結構いるね。しかも、もう始まったみたいだ」


 出口の向こうへも魔素を介して探索をすると、セーさんの言葉の意味がすぐに分かった。

 相手側の兵士はおよそ二千。横列に展開し、両翼から順に進軍を始めた所だった。

 迎え撃つこちら側は、砦の正面にはあまり兵を置かず、相手の両翼より内側の砦端を厚めに護る布陣だ。

 正面にしか出入り口が無いように見えるが、砦から出ている兵士が戻る手段はあるんだろうか。

 もちろん、砦の上には前面に兵士が詰めている。

 何故、真ん中の守備を薄くしているのか、相手側もそこを狙わないのかは分からないけど、まずは両翼から戦闘の火蓋が切って落とされるみたいだ。


「始まったみたいだね」

「えっ!? 戦闘が始まったのですか?」

「うん、そろそろここにも鬨の声が聞こえて来ると思う。でも、なんであの出口を誰も護ってないんだろう」


 まだ太鼓の音が微かに聞こえるかどうかだし、兵士の怒声もまだ聞こえない。


「んー、何も聞こえませんね」

「……この砦には結界が張ってる。音は入りにくい」


 確かに結界が張ってるね。外ばかり気が行っていて気付かなかった。

 だったら尚更外で戦う兵士の意味が分からない。全員砦で迎え撃てばいいのに。


 出口に着いた頃、両翼の戦端が衝突した。戦闘が始まったのだ。


 こちら側―――バルバライド王国軍の魔法や矢が飛び交う中、相手側―――ローゼンハルツ王国軍が盾を構えながら突撃してくる。

 砦から前に出ている両翼の兵が出口に向かって斜めに後退してくる。

 相手側はそんな後退する兵を無視して真っ直ぐに砦を目指している。というのも、自軍の兵が隣に遅れて突撃して来るので内側には斬り込めない。

 そんな真っ直ぐに突撃して来る敵兵に対して、射程距離内に入ると砦の上に陣取る味方兵から魔法や矢が放たれる。

 意外と持ち堪えてるようだが、敵兵は守備一辺倒で攻撃をして来ない。

 偶に後列に陣取る敵兵から矢が放たれるが、そんな目クラ撃ちが当たるわけがない。フレンドリーファイヤにもなり兼ねないので、放たれる矢も僅かしかない。


 敵兵の進撃は遅々として進まないが、砦からの攻撃は衰える事を知らない。

 それでもジリッジリッと進撃を続ける敵兵。


 じわじわと前進を続けたお陰で、ようやく中央軍も進撃を開始に至った。あくまでも横並びにはならないように進撃を続ける敵軍。

 と、そこへ懐かしい大声が戦地の中央から聞こえて来た。


「ガーハッハッハッハー!! ようやく俺様の出番だな!!」

「違うわよ! まだよ! まずは私が大きいのを一発放ってからでしょ!」

「なに? まだなのか? 早く撃てよ。じゃねーと、俺様が先に片付けちまうぜ!」

「待ちなさいよ! ほんとにもぉ、少しは待ってられないのかしら」

「今回は五日も攻めて来ませんでしたからね。バンも溜まってるのでしょう」

「あ、あいつもう走り出してる! もう! 【マルチ・エクスプロージョン】!」


 まだ遠くにいる中央軍の両サイドに炎の塊が飛んで行き、そして爆炎をあげた。

 無傷の中央にも動揺が走り、その中に単騎でバンさんが突っ込み、更に敵軍が浮き足立っている。

 相変わらずだなぁと思いつつも、ブラッキーさんって魔法が上手くなったよなと感慨に耽っていた。

 【マルチ・エクスプロージョン】をあの距離まで飛ばせるだけでも大したもんだよ。


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