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第87話 見られてた

いつも誤字報告ありがとうございます


 獣人村で一晩を過ごした後、僕は再び砂浜にいた。

 獣人達は出来たての村である事や森の奥で立地が悪い事で不自由はしてるけど、ひもじい思いはしてなかった。

 ノスフェラトゥから提供された場所は、修行にも程よいレベルの魔物が居て、倒せばそのまま食料になるし、野菜や野草なんかも程よくある環境のようだった。

 獣人達からも教えてもらったが、カゲゾウさんからも同じ報告を受けたので安心した。

 因みにトゥーラの父である村長はいなかった。何人かを引き連れてノスフェラトゥの城に行って修行中らしい。

 何日かに一度は仕留めた魔物を持って帰って来てるそうだけど、今日はいなかった。


 ノスフェラトゥの弟子になるとか言ってたっけ。違うか、指揮下に入ると言ってただけか。

 でも、あの脳筋達が城にいるんなら修行三昧だと簡単に予想できるよね。

 開拓村にも最低限の戦闘員はいるみたいだし、カゲゾウさんの話では吸血鬼達が時折見張りに来てるみたい。

 いきなり村が壊滅って恐れは無さそうだ。


 カゲゾウさんを『クロスオーバー』に送還し、再び海に来ているのだが、何か昨日と様子が違う。海の生き物達の姿が少ないのだ。

 海藻類は昨日干せなかったので加工できずに収納袋の中のまま。昨晩消費されたのは魚介類のみ。

 だから今日は魚を獲りまくるぞ! って気合を入れて来ているのに魚影が少ない。ほとんど無いと言ってもいい。

 なんでだろうと、海水にも含まれている魔素を辿って探索してみる。空気中にある魔素より自由度は低いけど、水流操作の応用も併用して入り江内だけでも探索してみた。

 ここって入り江になってて波も穏やかなんだよ。他所に行かずに再びここに来たのは、入り江で魚影が豊富だったからでもあるんだけど、これだけ魚影が少ないと原因を知りたくなる。

 昨日、帰った時点ではまだまだ魚影は沢山あったはずだから。


 いた! 絶対にこいつだ!

 入り江の入り口に鎮座する巨大な魔力の塊。もう犯人はこいつで間違いない!

 『犯人はお前だ!』ってやらなくてももう決定している。

 『じっちゃんの名』にかけなくても明らかだ。

 海中に潜っているので姿こそ見えないが、入り江の外側で入り口を塞いでじっと動かないひとつの巨大な魔力。これだけで大体何者なのか分かる。

 海の巨大な魔物だ。


 『クロスオーバー』では海で生きる友達は少なかったけど、それでもいなかったわけじゃない。

 イルカ型のフリッパーさんなんて、僕達と遊ぶために空中遊泳で来てたぐらいだ。


 で、ここにいるのはというと、


「クジラ型? だよね」


 もう少し小さければ鮫型やシャチ型やゾウアザラシ型なんかも候補にあげられたけど、ここまで大きいとクジラ型しか思いつかない。

 あの辺りは、まだそんなに深くないはずだから見えてもおかしくないぐらいの大きさのはずなんだけどな。

 浜辺からじゃ少しでも潜られてしまうと見えないからな。


 プッシューーー!


「あ、潮を吹いた! 間違いないね。だったらこらしめてやるか」


 折角漁業をしようと気合を入れて来たのに全部平らげてしまった魔物だ。ここはお仕置きしかない。食い物の恨みは深いのだ。

 ここで言うお仕置きとは退治だからね。

 彼にも僕の食材になってもらおう。彼女かもしれないけど。

 まずは目が赤いかの確認からなんだけど、潜られてると見えないよね。

 なので、軽~く雷魔法を放ってやろう。水系の魔物は大抵雷魔法が弱点だからね。


 スラ五郎を実体化させて周囲の魔素を同調させる。

 自分の魔力も織り交ぜて更に練り込む。


【サンダー・レイン】!


 軽~くこちらに敵意を持たせて浮上させようと放った雷魔法だった。


 ピシャッ! ゴロゴロゴロゴロバリバリバリバリー! スッドーーーン!!!!


「あれ? なんで?」


 軽く放ったつもりの雷魔法が思いの外、予想以上にデカかった。まだ海面がパリパリパリって静電気が走ってる。

 魔力操作は得意分野なんだけど、なんでなんだろ。


 雷魔法に撃たれた巨大な魔物はプッカーと腹から水面に浮かび上がって来た。

 水流操作を使って浜辺に誘導、砂浜で上がれなくなるまで引き寄せた。

 スラ五郎を使って瞼を開く。


「あー、よかったー、目は赤だったよ。しかもまだ息があるみたいだし、ギリギリ制御が出来てた事にしよう」


 今度は慎重に自分の魔力だけで雷魔法を撃って息の根を止めると、一旦収納し、海岸を眺めた。

 疎らに水面に魚が浮いてたけど、回収するほどではない。と思ったら、なんと入り江の外側に沢山魚が浮いてる!?


「ここなら森の中ほど魔素濃度も無いし行けるかな?」


【クロスオーバー】ケン! レーン! ケルッピ!


「やっと喚んでくれたー!」

「待ちくたびれたよー」

「キズナ様ー!」


 クラーケンの子ケン♂とセイレーンの子レーン♀、それとケルピーの子ケルッピ♂の三人を喚んだ。全員魔物の幼体だ。


「みんな久し振り」

「久し振りすぎるよー!」

「忘れてたんでしょ!」

「キズナ様ー、久し振りだー」


 海に関する魔物の子達を喚んでみた。


「みんな、急で悪いんだけど、あそこに浮かんでる魚を集めて欲しいんだ」


 そう言って沖を指差した。


「なーんだ、そんな事? 簡単簡単」

「うん、まかせてー」

「魚だけでいいの?」


 あ、そうか。海底に他の海の幸もいるかもな。


「じゃあ、ケルッピにこの収納袋を渡すから、獲れるものは入れておいて。死んでるものだけでいいからね。あ、それとあまり小さすぎるのもいらないかな」


 僕の魔法で死んじゃったので最後まで責任として食べないといけないとは思うけど、小魚だったら他の魚達が処理してくれるよね?

 因みに収納袋は試しに作った自作の方だ。

 まぁまぁの収納力があり、今回の分ぐらいなら楽勝だと思う。


「そうだ、ここの魔素濃度って少し濃いみたいだけど、みんな大丈夫?」

「大丈夫だよー。でもなんかピリピリするー」

「このぐらいの魔素なら平気だよ。でも、ピリピリするー」

「もう少し喚んでくれたらもっと濃くても平気なのに。ピッピ達ばっかり喚んでボク達は全然喚んでくれない」


 ケルッピが拗ねてる。やっぱり喚ぶとレベルアップ的な恩恵があるのかな?

 それもあるんだろうけど、僕の考えではその後の戦闘なんかの恩恵の方が高いと思うな。


 三人は手早く沖から魚を集めてきてくれた。

 収納袋の中身を確認してみると、昨日の二倍ぐらい入っている。しかも少し沖の魚もいたのか、二メートル級の何匹か入っていた。


 これはこんど沖へ行って大物漁業だな。


「じゃ、僕は森に行くからまたね」

「えー!」

「もう?」

「まだ一時間もいてないじゃん! もっと遊ぼうよ!」


 確かに、魚を集めてもらうだけで還すのはちょっと可哀想だ。

 森の用もただの好奇心だし急ぐ予定でもない。というか、予定は何も無い。

 だったら、ちょっと遊んであげようか。


「わかった。じゃあ、今日はここであそぼうか」


「「「やったー!」」」


 と、遊ぶのはいいんだけど、海でする事って言ったら泳ぐ?


「だったらさ、さっき沖の方が少し見えたんだけど、なんか強そうな魔物がいたよ?」

「私も見た見た! あれって母さまより強そうだった」

「キズナ様ー、沖は辞めて入り江で遊ぼう」

「そだね」


 強そうな魔物か。さっきのクジラ型はダークバレーヌだ。海の魔物でも大きな部類に入る魔物だ。

 海にはもっと巨大な魔物も多いけど、それでも五〇メートル級の魔物がこんなに陸地に近いところにいるのは珍しい。

 という事は、縄張り争いに負けて流れて来たのか、それともただ単に餌に釣られて来ただけか。

 沖合いに更に大型がいるのなら前者が濃厚か。


 でもなぁ、水の中の探知にはまだ慣れてなくて、遠すぎるから探知できないんだよ。もう少し沖合いに出られればなぁ。

 むぅ…船は無いから誰かを喚んで乗せていってもらう? アリっちゃアリなんだけど、そうすると雷魔法が自爆技になっちゃうからなぁ。


「キズナ様? なに悩んでんの?」

「いや、その強そうな魔物がいると安心して遊べないでしょ? だから追い払うかやっつけるか考えてるんだけど、沖合いまで行けないかなって」

「やっつけるの!? ボクの父さんを喚ぶ?」


 クラーケンのクラーさんか……


「クラーさんで勝てると思う?」

「う~ん、どうかなぁ。わかんないや」

「同じぐらいじゃない? うちの母さまなら勝てると思うけど?」

「無理だよ。セイレーンとは大きさが違いすぎるもん。ボクの母さんなら……」

「同じでしょ! あなたのお母様も大して大きさは変わらないでしょ!」


 そうだね、ケルピーもセイレーンもそんなに変わらないね。


「じゃあ、オババは?」

「今年三〇〇〇歳になったクラーケンの?」

「そう!」


 たしかに強いだろうけど、その報酬がね。


「相手が分かれば対策もできるんだけどな」

「分かればいいの?」

「うん、誰でも苦手な相手っているでしょ?」

「そっか。でもここからじゃ分からないもんね」

「わたし分かるかも」

「え? レーンちゃん分かるの!?」

「ケルッピにも分かるよね。だってこの匂い」

「あっ!? たしかに! レーンすごい! よくわかったね!」


 匂い? 海の中なのに?

 この子達は海に生きる魔物だから海中でも匂いが分かるのかな?

 本当か嘘かは分からないけど、鮫が数キロ先の血の匂いを嗅ぎつけるとか言う話もある。

 魔物であるこの子達なら、もっと敏感なのかもしれない。


「それで何の匂いだったの?」

「えーとね、ケートスだと思う」

「ボクも同じ! この匂いはケートスだよ!」

「あの暴れん坊の?」

「「そう!」」


 海の暴れん坊と言われるケートス。津波を起こしたりするんだよね。

 大きいのだと長さ五〇メートル以上ある長い龍の一種だね。


「う~ん、それだとみんなの親レベルだと難しいか」

「うちの母ちゃんならいい勝負するよ!」

「わたしの母さまだって負けないわよ!」

「ボクの母さんなら絶対勝つよ!」

「そうは言ってもねぇ……」


 負けないかもしれないけど、勝つ事もできないと思う。

 追い払っても、ここが縄張りだったら中々逃げないだろうし、ほとぼりが冷めればまた戻って来るだろうしね。

 この入り江って中々気に入ったし、また来たいと思ってるんだ。だったら安全な場所にしておかないとな。


「よし、決めた!」

「うちの母ちゃんだよね! なんならオババも喚んでもいいよ!」

「違うわよ! わたしの母さまよ!」

「ボクの母さんだって! 絶対そうだよ!」


 みんなには悪いけど、ここは経験値の節約なんだ。


【クロスオーバー】ダーバ!


「おぅ、チビども、オレがお喚びのようだ。悪かったな」


 結局三人の母親を辞めて喚んだのは、サンダーバードのダーバさんだった。

 体調は三メートル弱だが、二人ぐらいは乗せて飛べる鳥型の魔物のダーバさんを選んだ。


「久し振りですダーバさん」

「よ、久し振りだねキズナ様。少しは見てたから状況は分かってる。ケートスを殺ればいいんだな?」

「やるって…まぁそうなんですけど、先に確認はしたいんです」

「だったら、先に弱めでいっとくか?」

「やっぱり考える事は同じですね。さっきはちょっと失敗しちゃいましたけど」

「おぅおぅ見てたぜ。カゲゾウも言ってたが、見違える強くなってたって褒めてたぜ」

「見られてましたか……ってどこで見てたんですか?」

「ん? キズナ様は知らないのか?」


 僕と三人を何度も見返すダーバさん。鳥型だし、なんかニワトリみたいだ。

 ちびっ子三人は額に手をやりアチャーってしてる。

 これって僕には秘密だったようだ。


「とは言ってもよ、キズナ様の周りだけしか見えないんだぜ? それも建物に入られると中は見れないからこっちの食い物も見れねーし。中途半端なんだよ!」


「「「……」」」


 ちょっと逆ギレ気味に言い訳をするダーバさん。

 そんなダーバさんに呆れる僕達。

 ちびっ子三人はジト目でダーバさんを見てる。そんな目ができたんだね、かなりダメージになってると思うよ。

 ダーバさんの逆ギレが全然言い訳になってないからね、当然の報いだと思う。でも、建物の中では見られてないみたいでよかったよ。

 いつから見られてたのか気になるところだけどさ。


「そ、そいじゃオレはちょっと行ってくらぁ」


 気まずくなったダーバさんはそそくさと沖へと飛んで行った。


「ちょちょっと待って! 僕も行くから!」


 慌ててジャンプすると、ダーバさんの背中に飛び乗った。



いやぁ~、暑いですねぇ。

書くよりダラダラと他者作品を読んでます。

このままではイカン! このままでは、またGWのようにいつの間にか休みが終わってるという事態に……

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