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第86話 行き過ぎた先にあった

いつも誤字報告ありがとうございます


 カゲゾウさんを無駄に喚び出した後は、獣人村の見張りを任せてカゲールくんと森の奥へと進む。

 途中、魔物とエンカウントするけど、目が赤い事を確認し討伐していく。

 真っ直ぐに進路を取ってるので、進路とズレてる魔物はあえて戦わない。

 こちらを発見して襲ってくるのは対処するけど、態々進路をズラしてまでは戦う必要は無い。


 それでも途中に魔素溜まりがあれば少し道を逸れてでも様子を見るようにはしてる。

 そしてそこには必ず周辺のボスみたいな大物がいた。

 戦闘訓練の意味もあって、僕の経験値の糧になってもらったよ。

 スラ五郎(改)も試せて有意義に経験値になってもらった。

 やっぱり一番楽なのは魔法で倒す方法かな。

 遠くから攻撃できるのは安全だ。近いから危険ってほど強い魔物はいなかったけど、大きい魔物ばかりだったから油断は大敵だしね。結構、経験値を稼がせてもらったはず。

 んー…【鑑定】ほしい……


「カゲールくん、【鑑定】の魔道具ってカゲゾウさんしか持ってないのかな」

「ボクの知ってる限り、そうかな。結構レアらしいよ」

「そっかぁ、またどこかのダンジョンでメイさんに来てもらってジックリ見せてもらうしかないかな」

「え? キズナ様って見せてもらえれば出来るようになるの?」

「全部とは言わないけど、魔法陣が理解できれば出来るようになるかな」

「すごーい! じゃあ、じゃあ、ボクの【影潜えいせん】もできたりするの?」

「どうかなぁ、できるんじゃないかな。だいたい理屈は分かってるからね。でも、使う時が無いかな」

「ええ!? 使う時、いっぱいあるじゃん! 野営の時に寝るのに便利だよ! 移動だって速いしさ」


 う~ん、微妙なんだよね。カゲールくんの【影潜】って完全に遮断するわけじゃないから、ちょっとした弾みで外から侵入されたり、中に捕らえてても強引に脱出されたりするんだよ。

 移動にしたって真っ直ぐ行けるから速いけど、それでも僕の方が速いからね。速さには自信があるんだよ。

 真っ直ぐ行くだけならピッピやキラリちゃんみたいに飛ぶのも同じだし、利点と言えば影の中にたくさん収納しておけるって事ぐらいかな。

 あっ、その収納袋が手に入るまで使えばよかった。ま、今更かな。


「じゃあ、もっと森の奥に行って、魔素のもっと濃い場所を探してみよう。どんなのがいるか楽しみだ」

「えー、キズナ様ってそんなに戦闘好きだったっけ」

「別に好きも嫌いも無いよ、戦う術を教えてもらってるから使ってるだけ」

「だったら何でそんな場所に行くのさ」

「この世界でまだ友達になれる魔物と出会ってないからだよ。魔素が多くある場所ならいるかなと思って」

「えー、いるのかなぁ。でも吸血鬼の人とか友達になったよね?」

「あれは友達じゃないし」


 そう、名付けて眷属になったって感じ。出会いも喧嘩腰だったし。でも、初めから会話が出来たし、もしかしたら友達になれたかもね。

 今でも全員目が赤いから微妙なんだけどな。

 でも、吸血鬼以降、話が出来そうな魔物に出会ってない。だから、まずは一番強い魔物のいそうな魔素の一番濃い場所に行ってみる。

 魔物って長寿命なほど強いし、強い魔物ほど魔素が濃い場所を好むし、そんな強い魔物だったら話が出来るんじゃないかと思うんだよね。

 ま、考えてなかった訳じゃないけど、後付けなんだけどね。

 実際、どんな強いのがいるのか見ておきたいってのが本音だね。

 吸血鬼達の長になったノスフェラトゥさんが未だに怖がって森の奥に行かないのも強い魔物がいるからだろうし、そういう魔物を見てみたいじゃん。


「危ないよね?」

「危ないって言ってもシャードルさんより強いって考えられないよね?」

「そりゃ、大ばあちゃんより強いって言ったら『クロスオーバー』でも何人いるか」

「だったら大丈夫だよ。たぶん」

「大ばあちゃんが基準なの? 根拠がわかんないんだけど」


 あー、カゲールくんは知らないか。僕、シャードルさんに勝ってるんだよね。

 シャードルさんが本気だったかどうかは知らないけど、成人前の卒業試験的な試合で勝ったんだ。

 言いたくないけど、あの時ってレベル一桁だったから。

 ほぼ魔法対戦だったけど、僕って避けるの上手いし魔法精度も高いしね。

 動き回って翻弄してチミチミ削って三日かけて勝利した。

 完勝って感じでは無かったけど、それでも上位精霊に勝ったレベル一桁。いくらでも褒めてくれていいよ。

 僕って褒められて伸びるタイプだから。

 でも、試験モードだったからシャードルさんもずっと笑顔だったし本気じゃなかっただろうけどね。


「いないんならいいよ。それに言ってなかったけど、魔力や気力は何故か見れるようになったから【鑑定】は使えなくてもある程度相手の強さも分かるようになったから」

「そうなの!? そんな事できるの!?」


 こっちはレアな能力だったのか? 僕だって習ってないしね。

 これも母さんに報告されちゃうのかな?


「たぶん、更に森の奥にはもっと強い魔物がいると思うんだ」

「そうだろうね。魔素だってどんどん濃くなってるから僕達クラスだとちょっと厳しいかも」


 あっ、そうか。妖精でも低級だと魔素濃度が濃い場所は厳しいよな。

 という事は、中級以上の人を喚び出すか、単独行動になるのか。

 中級以上だと滞在期間が一週間ぐらいありそうだから、低級クラスを何回も喚ぶよりいいのか?

 いや、メイさんやイダジュウさんを一回喚ぶよりピッピを十回喚んだ方が取られる経験値は低い気がする。


「でも、確か精気の膜で覆えばいいんじゃなかった?」

「そうだけど、膜なんて弱い攻撃を受けただけで破れちゃうから魔素の濃い場所に行く事自体が恐ろしいよ」

「たしかにそうだね」


 深海用潜水服を着て、海底で潜水服に穴が開いたのと同じだ。うん、死んじゃうね。


「じゃあ、明日からは交代で喚ぶのも控えるよ。還ったら言っといてね」

「えー、そんなの言ったら僕が怒られちゃうよ!」

「でも、もう少し奥まで行きたいし。でも、今回はそんなに長くはいないと思うから、その間だけだし」

「うーん…わかった。じゃあ、手紙を書いてよ。直接ボクが言ったら非難轟々だし」

「了解、送還する前に書くようにするよ」

「ありがとう! キズナ様!」


 ヒシっとズボンにしがみついて来るカゲールくん。よっぽど皆に文句を言われるのがイヤだったようだ。


「それで、今日はまだまだ奥に行く予定だけど、まだ大丈夫?」

「それがね、実を言うとこれ以上はちょっと厳しいんだ。今でもちょっと気分が悪くなってる」

「そっか……」


 仕方が無いので、その場で手紙を書き、カゲールくんを送還した。

 もう少しは頑張れるよって言ってくれたけど、森の広さがどれほどあるかも分からないんだ、どんどんと奥へと進みたい。

 カゲールくんを還した後は、周囲の魔素の使用と転移魔法の練習のため、出来るだけ遠くを探索してそこへと転移する。というのを繰り返して森の奥へと進んだ。

 まだ慣れない探索・魔法陣生成・周囲の魔素の利用・起動と順にしないといけないので走った方が速い。

 それでも徐々に慣れて来た事で、起動までの時間が早くなり、探索の距離も伸びた事で走るよりは短時間で遠くまで移動できるようになった。

 帰りは獣人村までだし、位置も把握してるので一足飛びで帰れると思う。


「あれ? 魔素が薄くなってきてない?」


 ある地点を境に、魔素が薄くなってきている気がする。


「もうちょっと行ってみて、違いがハッキリと分かれば一旦戻ろうかな」


 今のところ薄くなって来たかな? ぐらいなので、もしかしたらここから濃くなるかもしれない。

 何度目かの転移の後、やはり薄くなって来たと実感した。


「確実に薄くなって来てるね。真っ直ぐに来たから森の中心とズレてたのかな? でも、この香りは……」


 一番魔素濃度の濃かった場所はある程度覚えている。

 次はその地点から探索すればいいと思うけど、この香りは……


「海の香りだ!」


 この世界に来てから初めての海だ! 海産物大好きだからちょっとテンションが上がる。

 海水塩も確保できるし、魚介類も確保できる。

 今なら収納袋もそうだけど収納魔法もある。いくらでも確保しておけるんだ。

 醤油はまだ無いけど、大豆は森で確保してあるから後で作れる。ワサビも少量は森で確保できたし、生えてた場所も覚えてる。

 これはいよいよ期待が高まる。


「やっぱ川魚より海の魚だよね! 海に行くしかないって!」


 そう決めた途端、潮の香りのする方へと向かって走り出していた。



「海だ―――!!」


 『クロスオーバー』の世界にいた時も合わせて久し振りの海だ!

 海って、なんで見てるだけでテンションが上がって来るんだろ。

 海、最高ー!


 まずはお決まりの波打ち際でのバシャバシャで遊ぶ。

 うん、普通に海だ。海草も流れてきてるし、ウニもちょこちょこ見える。なまこもいるな。

 砂浜にも何か埋まってそうだし、今日は漁だな。


 魔素の周囲探索をし、人がいない事を確認した。

 ここに来るまでにも人とはすれ違ってないし、周囲に人がいた形跡なんて何も無い。

 船も無ければ家も無い。人が手を入れたと思われるものは何も無かった。


「という事で、まずは魚か?」


 素っ裸になり海へと突撃した。ちょっと冷たいけど大丈夫だ、凍えるほどではない。

 沖へと向かって泳ぐけど、魚影がいっぱいで、少し泳ぐだけで大漁になった。

 銛? 銛なんて持ってないよ。スラ五郎で一突きだ。

 魚を突いては収納、ウニを突いては収納、偶に海草を確保、再び魚を突いては収納。

 一時間もしない内に、一年では食べきれないほど獲ってやった。


「うん、大漁大漁! 次は塩か。塩の精製ってにがりもゲットできて二度美味しいんだよね」


 土魔法で大きな大きなタライを作ってそこに海水を並々と確保する。

 後は魔力操作の応用で水流操作をして、錬金の応用で撹拌・分離・精製までを熟す。

 海水塩とにがりとミネラルたっぷりの水がゲットできた。

 そうなんだ。この方法だと美味しい水までゲットできるんだ。蒸発させないからね。


 タライのまま美味しい水も収納し、同じ大きさのタライをもう一つ作って海水を入れて収納する。

 海草や干し魚を作るのって海水に限るからね。

 ところてんの原料の天草を干す時は真水がいいんだけど、昆布や一夜干しなんかは海水で干した方が好みだ。塩加減の調整がいらなくていい塩梅になるんだよ。


「でも、いい場所に辿り着いたよな。この場所を覚えておけばまた来れるな」


 一度行った場所自体は思い出せば転移で一瞬だ。だけど、場所を思い出さなければ当たり前だけど行けない。

 なので、雑貨屋で買ったメモに森の先の海って書いておいた。


「紙も質が悪いんだよな。今度、作ろうかな」


 紙と言っても真っ白な紙じゃない。わら半紙みたいな色で材質はもっと悪い。ちょっと強く書くとすぐに穴が開く。

 でも、これでもマシな方で、他だと羊皮紙か魔物の皮で作られた魔皮紙か樹の皮を薄く削った樹皮紙しかない。

 どれもインクを付け過ぎると文字が滲むし、わら半紙もどき以外は折り曲げると型が付いて折り目になった部分だと何が書いてあったのか分からなくなる。

 一度雑貨屋のクツールさんに相談だな。


 海での目的も果たしたので獣人村に戻るかな。


「流石にここまで遠いと獣人村まで探知できないけど、感覚的にイメージできるから行けそうだな。でも、人がいるかどうかまでは分かんないから先に石を投げ入れてから、その石の後に続けばいいか」


 大漁だった海産物にホクホクとなって油断はしていた。油断はしていたが、慎重にはなっていた。

 なんせ人がいたら殺してしまう可能性だってあるのだから。


 もう何度も試して起動までは瞬時にできるようになった。

 魔法陣に石ころを投げ入れ何も戻って来てないのだけは確認し、そのまま魔法陣に入る。

 すると海岸だった風景が一瞬で森の中に変わる。


「!!」

「あ、どうでしたか?」


 イメージ通りカゲゾウさんの近くに転移できたようだ。

 だけど、カゲゾウさんは急に現れた僕に驚いている。なので、何事も無かったように声をかけた。


「キ、キズナ様でしたか。今、何処から現れたのですか?」

「ちょっと最近覚えた魔法でね。で、獣人さん達の様子はどうでしたか?」

「それは……」


 カゲゾウさんが何故か言い淀んでいたので、魔素を使った周囲探索をすると…


「キズナ様!」


 背後には大勢の人がいて、すぐに僕だと判断して駆け寄って来るトゥーラがいた。

 殺気が無かったから分からなかったよ。ってか、カゲゾウさんはこんな人が大勢いるところで何してたの!? 見張りにしてもこんなに近いとバレるだろ!


 ボフーン!


 トゥーラが僕のお腹にダイビングして来た。

 しっかりと受け止めてやると、その背後から巨大な影もダイビングして来た。


「いやいやいやいや、コガネマルは無理だから! 無理無理ムリむり! 待て! マテ! まて! 待ってー!」


 ギリでコガネマルが踏み止まってくれたお蔭で事無きを得たのだけど、その後僕の匂いを嗅ぎまくるコガネマルに魚を察知され、一匹出したところで海で獲って来たとバレ、獣人達に振舞う事態になってしまった。

 だってコガネマルって僕だけには話が出来るんだもん! 内緒だよって念押ししたけどその場で食べるもんだからバレバレだったよ。


 そうなると結果は見えている。底なしの胃袋を持った脳筋共だ、僕の一年分ぐらいの海産物なんて一晩で消える。


 がー! また獲りに行かないといけないか! だからバレたくなかったんだよ!

魚を持ってなくても料理とか雑用をさせられる気がしてたからね。

ちくしょう! 明日も漁業だな。


今年の夏も暑そうで、盆休みはニートになる予定。

という事は、書く事に没頭できそうですが、またGWの時のように他者の作品を読み漁って終わらないようにしないと。

いい加減に『衛星魔法は~』も再開して、できれば最終回まで持って行きたいところです。

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