第79話 ラスボス戦?
いつも誤字報告ありがとうございます。
時間は掛かったけど、ヒュドラを倒して満足気なバンさん。
ピンチだと思って駆け寄った僕達三人。
さぁ、ここはもちろんハイタッチだよね!
お疲れの様子で座り込んでるバンさんに手を挙げハイタッチを交わすブラッキーさんとホワイティさん。
そして、そのままブレスを浴びたバンさんの様子を確認するブラッキーさんとホワイティさん。
うぐっ……また入り損ねた……。
「キズナ様、今回は助かったぜ」
「え?」
「だがよ、やっぱ俺様にはこのペンダントは似合わねぇ。俺様に似合うデザインのペンダントを頼むぜ」
「あ、魔力膜……」
そうじゃん! ヒュドラ対策のためもあってワッペンとペンダントを用意してたんだよ。
だったら、あの程度のブレスでビビる事なんて無かったんだよ。
あー、心配して損した!
「あー、これね」
「こっちもですね」
ブラッキーさんがペンダントを、ホワイティさんがワッペンを手にして納得する。
「さっきのヒュドラ程度の毒ならどっちかだけでも防げたんだ。焦って損しちゃったね」
「そういえば、このワッペンでもほぼって言ってましたね」
「ヒュドラ程度とか、ほぼとか……ヒュドラ以上の何がいるのやら」
そりゃ、母さんクラスは論外として、暗黒龍とか冥界龍とかいるじゃん! そうそう、ノスフェラトゥの魔眼でもワッペンだけじゃ危ないかもね。
あのクラスの吸血鬼になると、精神干渉が高いから。
「でもこれで、あと十三階層ですね。やっぱり制覇を目指すんですか?」
「当たり前でしょ! もうゴールが見えて来てるんだから、行かなきゃ勿体無いでしょ」
「私は十分やり切ったと思えるんですが、確かに私にも欲目はあります。ただ、これ以上の強さになると、今までのようには行かないでしょう」
おっ!? ようやく出番か!?
「俺様はまだまだ行けるぜ! 次のボスは何なんだ?」
「え?」
あー! メイさんに聞いておけばよかった! でも、前回の時ってジョンくんも一緒だったよね?
そこに気がついたので、独り言のようにジョンくんに向かって尋ねた。
「前回、確かに通ったよねー。次のボスって何だったかなー」
「次のボスは最後のティアマト様だよー。そこまでは罠が酷くなるだけで、ここまでと同じ恐竜地帯だよ。強くて多くなるけど、罠はボクが解除するからキズナ様なら楽勝でしょ?」
当然、ジョンくんの声は三人には聞こえない。妖精の声は本人が相手に届けようとしなければ届かないのだ。
姿の方はもっとハードルが高い。妖精自信が油断をしてても適正が無い限り、その姿を見る事はできない。
「え? 今の声、どこから?」
「私にも聞こえました。ここから更に強くなるとか、罠を解除してくれるとか聞こえました」
「俺様にも聞こえたぜ。これはあれだな。あの精霊達みたいなのがキズナ様の近くにいるんじゃねーのか?」
ジョンくん! マジか! 聞こえないようにしてなかったの!?
でも、なんでバンさんが知って……
あー! そういやバンさんは三人の精霊と会ってたね! ジョンくん、声を切ってなかったのは大失敗だよ。たぶん、僕のパーティメンバーだと思って気を抜いてたんだろう。
どうしようかな、もうバラしちゃってもいいかな。
この三人は信用できると思うし、妖精を見せても滅多な事にはならない、よね?
「ジョンくん、三人に姿を見せてくれる?」
「はーい!」
声と共に姿を見せたジョンくん。
僕にはずっと見えてたんだけど、三人にとってはいきなり姿を現したように見えたはずだ。
「きゃっ」
「ひゃっ」
「むっ!」
三者三様に小さな悲鳴をあげた。
「なにこの子! すっごく可愛いー!」
「メンバーに加える事を提案します!」
「ちっちぇーな。雑魚か」
ブラッキーさんとホワイティさんは小さくて可愛いジョンくんに興味津々だけど、バンさんは戦う前提だったのか、小さくて弱そうなジョンくんを見て興味が無くなったようだ。
「この子はジョンくんです。妖精なので長い時間一緒にいれないんだけど、ジョンくんはダンジョンの妖精なので手伝ってもらってます」
「そうなの? 残念ねぇ」
「期間限定なのですね、残念です……」
「……」
ジョンくんは妖精なので、あまり長く『クロスオーバー』の世界から離れているとこっちの住人になってしまう。
でも、そこまで言う必要は無いので本当のところは黙っている。
「で、ジョンくん、九〇階層のボスって何か分かる?」
「はい、キズナ様! 九〇階層のボスは氷炎龍です!」
「なにこの子! そんな事まで分かるの!?」
「氷炎龍って!? そんなの無理です!」
「ほぉ~、ちびすけ、よく教えてくれた。俺様の子分にしてやるぜ」
「子分って何言ってるの! ジョンくんは私のお供にするのよ!」
「いいえ、そこはブラッキーでも譲れません! 私のお友達になってもらうのです。ね、ジョンくん? 私はホワイティ、名前を呼んでくれますか?」
ジョンくんを中心に思い思いの言葉を並び立てる。氷炎龍という名前に驚いていたホワイティさんもジョンくんの魅力には勝てなかったみたいだ。
ジョンくん、たじたじだ。
「ジョンくんが困ってますよ。それにジョンくんには手伝ってもらってるって言いましたよね? 罠解除はジョンくんにやってもらってるので、忙しくて皆さんと話してる暇は無いんです」
「ジョンくーん! あなたそんな事までできるのね! やっぱり私のお供を」
「そんな優秀なジョンくんの【三叉槍の魔法使い】加入が決定しました。罠を解除した後は、私と同行を希望します!」
「益々俺様の子分に持って来いだ! 俺様は罠解除みたいなチマチマしたのは嫌いだからな!」
どんどんとジョンくんの株が上がって行く。と共に、僕の存在価値が下がって行く気がする。
「だからジョンくんは忙しいんですって。宝箱や魔石の回収もあるんですから」
「魔石の回収は元々私達もやってたんだから手伝うわよ。宝箱の方は罠があるかもだから手伝えないけど」
「はい、ジョンくんと一緒に魔石拾いをやりましょう!」
「またチマチマ拾うのか。そういうのはちびすけに任せるぜ」
「ダメよ! 皆で一緒にやるの!」
「キズナと合流まではバンもやってました。だいぶ楽させてもらいましたので、ここからは私達も手伝います。ね? ジョンくん?」
ジョンくんはいつの間にかホワイティさんに抱かれていた。何もかもが圧倒されて何も言えないでいる。なのにジョンくん株は急上昇。
「えと……それでいいんですか?」
「ええ、いいわよ!」
「当然です。パーティ全員でやる事に意味があるのです」
「ちっ、仕方ねーか」
パーティ全員で、ですか。だったら僕も戦闘に参加させてほしいんだけど。
「じゃあ、行きましょうね。ここからは私の番ね」
「いいえ、まだ私の番は終わっていません」
「何言ってるの! もうずっと貴女が抱いてるじゃない! ね、ジョンくん? ホワイティのところはもう飽きたでしょ? 私のところにいらっしゃい」
「いいえ! ジョンくんは私と行くのです。ブラッキーさんは先頭に行かなきゃいけないでしょ? そんな危険なところにジョンくんは一緒に行けません!」
「ここからはバンが先頭なの! 私は魔術士なんだから後衛よ!」
なんて都合のいい言い訳なんだ、とは言葉に出して言えない。
実際、魔術師は後衛職で間違いないのだから。間違ってるのは普段のブラッキーさんの行動なのだ。
「キズナ様ー……」
「ジョンくん、ごめん。大変だよね、還る?」
小声でジョンくんに問いかけてみた。
コクリと肯くジョンくん。
ブラッキーさんとホワイティさんの攻撃は、僕の予想通りジョンくんには厳しかったようだ。
一つ手前の曲がり角の先にゲートを出してあげる。
ジョンくんは、すかさず身体を見えなくしてゲートに向かって行った。ジョンくんがゲートを潜ると自動的にゲートは消えるだろう。
「あれ? ジョンくん?」
「マイハニーは何処へ行ったのですか?」
急に消えたジョンくんを探し回るブラッキーさんとホワイティさん。
すぐに二人の視線は僕に向き、強い口調で名前を呼ばれた。
「キズナ! 私のジョンくんを何処へやったの!」
「さっさと出しなさい! マイハニーを隠すと容赦はしません!」
意味分かんねー。ジョンくんは誰のものでもねーよ。
「二人からの圧が厳しかったようで、ジョンくんは還っちゃいましたよ」
「帰った!? なんでよ! あんなに可愛がってあげたのに!」
「そんな……私はこれから何を糧に生きて行けばいいのでしょうか」
「どうすればいいのよ!」
「どうすればいいのでしょう」
いや、別に普通にダンジョン探索すればいいと思うよ。
落ち込む二人を後列にし、バンさんが先頭で八一階層へと下りた。
「あん? なんだ、この扉は」
「あっ! これって」
僕達の声を聞いて、さすがにブラッキーさんとホワイティさんも急いで追い付いて来た。
「この扉は何なの?」
「大きな扉ですね。しかも豪奢な造りをしています」
「ノスフェラトゥ様の新城でもこんなのは無ぇぜ。豪華すぎだろ」
「……」
僕が無言でいると、三人が視線を向けて来る。
「キズナは知ってるの?」
「知ってそうですね」
「キズナ様よぉ、隠してねーでさっさと吐け」
「……」
なんなんだろ、この扱いは。僕の立ち位置が分かんないよ。
「たぶん、ラスボス部屋?」
「ラスボスって、今八〇階層のボス部屋から下りて来たばかりじゃない」
「ここは八一階層なのですよね? でしたらボスは関係ないのでは?」
「ラスボスってこたぁ、強い奴がいんだな? だったら話が早えぇ、俺様が行くぜ」
ここはまだ八一階層のはずなんだけど、なんでこの扉がここにあるの? 間違ってないよな?
キズナの困惑が解決する間もなく、バンがさっさと扉を開けて入って行く。
「キズナ、何してるの? 置いて行くわよ!」
「行きますよ」
「え? あ…ちょっちょっとー」
先に入って行く三人を追い掛けるようにキズナも扉に入って行った。
「ほぉ~、ラスボスってだけあって、中々いい部屋じゃねーか」
バンさんの言う通り、高い天井からは何灯ものゴージャスなシャンデリアが吊り下がっており、広々とした部屋の壁にも絵画や装飾品が並べられていた。
床もフカフカ絨毯が敷き詰められており、戦闘を行なう空間には見えない。
「凄い部屋ね」
「ええ……」
ブラッキーさんとホワイティさんも同意見のようだ。
「……のじゃ」
声のした方に皆が注目する。
正面奥にある玉座に誰か座ってるようだ。
天井から下がっている垂れ幕で上半身が見えないが、誰かが座っているのが確認できる。
「お前が最後のボスか。少しは楽しませてくれんだろうな」
「ホワイティ!」
「ええ!」
戦闘態勢に入ったバンを援護するべく魔力を練り始めるブラッキー。ブラッキーの合図でバンに補助魔法を重ねがけして行くホワイティ。
「や――――っと来たのじゃ――――――!!」
「「「え……?」」」
「お主らは邪魔じゃー!」
玉座の主が叫んだと思ったら、脇目も振らずに真っ直ぐに一行に走ってきた。
声の主は、進行の邪魔になる者達に対し、手に持っていた扇子を広げ一閃した。
それだけでバン、ブラッキー、ホワイティの意識が刈り取られ、フカフカの絨毯に倒れ込んだ。
「キズナ様なのじゃー! やっと来たのじゃー!」
「ちょちょっとティアマトさん! ちょっと待って!」
急襲されて抱きついて来た女性は、紛れも無くこのダンジョンのラスボスであるティアマトだった。
前回、扉の前まで来たにも関わらず、撤収してしまったキズナとの再開を心待ちにしすぎての暴走だった。
暫くキズナはティアマトにされるがままの状態だったが、一時間ほどで落ち着いたティアマトに事情説明を求めた。
「キズナ様が悪いのじゃ! さっさと来ればいいものを!」
「えー、僕が悪いの? それっておかしくない?」
「いいや! 前回も帰ってしまうし、今回もキズナ様一人ならもっと早く来れたはずじゃ! もう妾は待ちきれなくてここに部屋を移動させてしまったのじゃ! それもこれもすべてはキズナ様のせいなのじゃ!」
「えー……」
何処に行っても理不尽な扱いしか受けない気がするのは気のせいか?
因みにティアマトさんは、最近まで先生をしてくれてた。
先日来てくれたシャードルさんとシャイニーヌさんもそうだけど、かなりのスパルタだった。
というのも、僕のレベルが低かったからそう思えたんだけどね。
「そういえば!」
ティアマトさんの熱烈な歓迎を受けていて忘れてたけど、倒れた三人は!?
「ティアマトさん、僕の仲間に何したの?」
「なななな何もしておらんのじゃ! 邪魔だったゆえ、少~し殺気の塊をぶつけてやっただけなのじゃ! 死なん程度には加減してやったのじゃぞ?」
なにその、自分は悪くない発言は! あ~あ、三人とも漏らしちゃってるよ。どうすんだよ。
ジョンくんの名前がダンくんになってましたので修正しました。
もう、名前をダンくんにしてジョンくんの方を訂正した方が早かったぐらい多かったのですが、ジョンくんに訂正しています。




