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第76話 ダンジョンへ

いつも誤字報告ありがとうございます


 ランガン―王都間を強行軍で往復したブラッキーとホワイティは、何とか明け方にランガンの町へと戻って来ていた。

 馬車の中で寝てはいたが、強烈な揺れにちょくちょく目が覚めしっかりと寝る事など出来なかったため、疲労困憊の様相だった。


「ホワイティ、今日は休みたいわね」

「同意します」

「でも、こんなのを貰っておいて、休むなんて言えないわね」

「……同意します」


 ホワイティも睡魔と疲労に負けて返事にも覇気が無い。

 城での鑑定結果で出た『状態異常(全)無効』のワッペン。ローブに貼り付けてある、そのワッペンを見ながら二人で溜息をついた。

 ホワイティも神殿に献上し、大司教様に使って頂くよう進言していた。

 こちらも鑑定士がおり、同じ結果が出ていた。


「でも、なんでキズナは『ほぼ無効』なんて言ったのかしら。城の鑑定士は『完全無効』って言ってたわよ?」

「ええ、神殿でも同じ結果でした」


 二人は合流してから情報の交換は行なっていた。

 そして、『状態異常(全)無効』の情報も交換済みだった。

 だが、何度話し合ってもキズナの言う『ほぼ無効』という嘘情報の真意を掴めないでいた。

 なので、同様のやり取りは何度も繰り返していたのだ。が、依然として結論には辿り着かなかった。


 体力も消耗しているが精神も消耗している。しかし、キズナの言った『ほぼ無効』が気になり、今日ダンジョンに入るかどうかも含めてキズナと待ち合わせをしている冒険者ギルドへと向かうのであった。


「おはようございます……」

「おはようございます……」

「おはようございます……」

「おはよう……」


 四人で覇気の無い挨拶を交わす。


「ブラッキーさん、ホワイティさんも何処か具合が悪そうですね」

「そういうキズナこそ辛そうに見えますが」

「バンは……臭っ! 二日酔いね!」

「うっぷ…声がでけぇ……もう少し小さな声で話してくれ。頭にビンビン来るからよ」


 四人の体調は最悪であった。


「ねぇキズナ? 提案なんだけど、今日は休みにしない?」

「回復魔法でもかけましょうか?」

「いえ、そういうのではないので意味がないですから遠慮しておきます」

「俺様にかけてくれ……うっぷ」


 キズナ、ブラッキー、ホワイティの三人はバンに一瞥をくれるとお互いに肯きあった。


「どう? 私達も体調がいまいちだから休むか、夕方ぐらいからにしたいんだけど」

「次ダンジョンに入ると、何日か連続で入り続けるのですから入るタイミングはいつでも関係ありませんね」

「たしかにそうだけど、僕は何もさせてもらえず付いて行くだけだから別にいいんだけど……」

「おい! お前ら! 俺様を無視すんじゃねぇ! 痛ぇ…大声を出させるんじゃねぇ!」


 頭を抑えて文句を言うバンを無視して話を続ける三人。


「だってキズナに任せると私達の出番が無くなるじゃない。バンだって一人で倒そうとしちゃうし、パーティメンバーなんだから私達のレベルアップに付き合うべきでしょ」

「私もパーティにいい感じで貢献できるようになって来ましたから、今は私達二人を中心に探索を続けたいと思ってます」

「それはいいんですけど、それって僕いります?」

「回復魔法をしてくれねぇんならポーションでもいい! キズナ様! なんかポーションは無ぇのかよ!?」


 相変わらず敬っているのか舐めてるのか分からない口調のバンであった。


「もちろんキズナは必要よ! いらないはずがないでしょ! 何言ってんのよ!」

「キズナは私達の師匠でもあるんです! 付いて来てもらうだけで、私達は安心できるのです!」

「そ、そ~なんですか~?」

「……キズナ様、ポーションくれねぇか……うっぷ」


 バンは限界が近いようだ。

 だが、三人は気にも止めず話を続けている。

 キズナの機嫌を損なうのは本意では無い。

 そもそも彼女達はキズナには感謝してもしきれない恩があると感じている。

 ただ、キズナが頼りない子供に見えるため、心からの感謝を見せるのが恥かしいと思ってるだけなのだ。

 一方のキズナはというと、必要だとか師匠だとか言われて少し舞い上がっていた。


「キ、キズナにはいい所を見せたいだけよ。せっかく魔法も教えてもらってるのに、あなたに披露しないと意味無いでしょ!」

「私も見て頂きたいのですよ、キズナ師匠」

「そ、そ、そ~だったんだ~」

「キズナ様…うぷ、早くくれ…おぷ」


 バンの限界は近そうだ。


「もう少しだけ…せっかく身体異常の対策をしてくれたんだから七〇階層までは見届けてほしいの」

「身体異常攻撃をしてくるって事は、あまりステータスは高くないと予想できますから」

「たしかに一理あるね。わかりました、もう少し付いて行くだけにします。出発は夕方でいいですか?」

「お、おいぃぃっぷ……もうダメだ……」


 キズナ、ブラッキー、ホワイティがそれぞれの収納からすかさずバケツを出し、三人は何も見なかった事にしてそれぞれの宿に戻って行った。

 バンはスッキリさせると、掃除を強要された後、再び酒場に戻って行った。


 宿に戻ったキズナは部屋で落ち着くと、一人考える。


「やっぱり…行かなきゃダメだよなぁ」


 今日ブラッキーから指摘された体調の悪さの原因となった件を考え、溜息を漏らす。

ほぼ徹夜となったための体調不良なのだが、ブラッキー達との待ち合わせだと言って無理やり抜け出して来たのだ。


「そうだ! メメジーさんの工房同様に、誰でも作れる魔法陣を作ればいいんじゃないか?」


 何を作るかと言うと、皆から不評だったペンダントだ。

 ワッペンに関しては【三叉槍の魔法使いトライデント・マジックマスター】のロゴが入っているにも関わらず追加も受け、概ね良い評価だった。

 しかしペンダントはバンさんどころかブラッキー達にも評価が良くなかった。

 そこでキズナは考えた。


「売りに行こう」と。


 そして立ち寄った魔道具屋で捕まった。

 やれ何個卸してくれるのかだの、やれ専属の付与師になってくれだの、継続的に月に何個卸してくれるのかだの、従業員になれだの。

 食材など、ダンジョン用の買出しをした後に立ち寄ったのは昨日の昼前に各自解散となってからだから、二〇時間ぐらい魔道具屋で捕まっていた。


 最終的には、アクセサリを用意するので付与をしてくれってところで解放してもらったんだけど、その付与魔法を教えるか僕が作るかで、かなり細かい金額設定まで提案されていた。

 僕は困るってずっと断ってたのに、どんどん話を進めて行くんだよ。

 教えるのも付与するのもどちらも時間を取られる。

 それは非常に困るので、メメジーさんの工房で作ったように、付与魔法陣を作って、自動で付与できるようにしよう。

 ワッペンの方は少し時間が掛かるし魔法陣を描いて付与するための道具に付与すると結構大きくなってしまうけど、ペンダントの方の膜程度なら余裕だ。

 さくさくっと作っちゃおう。



「ごめんくださーい」

「おお! 来たか来たか! もうぇへんと思うて心配しとったんやで!」

「はぁ……」


 このテンションの高いおじさんが魔道具屋の店主だ。

 名前はクツール・マジツさん。もう、テンションの差が激しすぎて言われるがままになってしまう。

 だから本当は来たくなかったんだけど、メメジーさんともラピリカさんとも知り合いだっていうから来ないわけにはいかなかったのだ。

 だって、押しかけて来られたら二人に迷惑かけちゃうしね。


「もう、これで勘弁してください」


 そう言って頭を下げた。

 話が長引くとクツールさんのテンションが更に上がって何も言えなくなってしまうから、先制攻撃のつもりで先に作ってきたものを出してみた。


「うん? なんやこれは?」


 繁々と出した箱を眺めるクツールさん。

 出した箱というのは、一辺が二〇センチぐらいの立方体で、一方向だけが蓋になっている。

 蓋を上にすると、正面に来るところに魔石を填め込めるようになっていて、箱の中の魔法陣と連動して魔石が動力源となって中の魔法陣を起動させる仕組みになっている。

 魔法陣の効果は付与。付与の内容はペンダントと同じ魔力膜を身体全体に行き渡らせるものだ。

 アクセサリーを箱の中に入れ起動させる。それだけで、アクセサリーに魔力膜効果か付与されるのだ。


「おおおお! ええやんか、ええやんか! これこれ、こういうのを待っとったんや!」


 箱を手に取り回しながら外観を確認し、蓋を開けて中を入念に確認している。


「こら、ええ素材を使ってまんな。なんやろ…見たことある気がするんやけどなぁ……思い出さんわ」

「龍ですね。岩石龍の軟骨を使ってます。加工が楽な割りに魔力の流れがスムーズと言うか、少し増幅する効果があるんです」

「なんやて! 岩石龍やて!? しかも軟骨て……あかん、そらあかんわ。そんなん高すぎて、おっちゃん手が出ぇへんわ」


 本気か冗談か分からない。クツールさん、胡散臭すぎだ。

 これをほぼ一日やられたんだ、会いたくなかった僕の気持ちも分かるだろ?

 ちょっと小太りの関西弁のおっさん、それがクツール・マジツさんだ。


「そや! これリースしてーや。そやな、値段の方は応相談や。で? これなんなんや?」


 知らずに交渉してんのかよ!


 もうずっとこんな調子。はっきり言って疲れる。昨日から精神的に大ダメージを負ってるよ。

 だからブラッキーさん達と合流した時にテンション下げ下げだったんだよ。


 初めは声に出してツッコんでたんだよ? するとこのおっさん、余計にテンションが上がって果てしなくボケるんだ。

 もうどうにかしてほしい。


「……これは…一度見てもらいましょう。その方がわかりやすいと思いますので」


 そう言って、即席で指輪を作って箱の中に入れた。

 メインの宝石部分には魔石を使う。今回は山でタイラント・ボアに負けて死んだシルバーファングの魔石を使った。

 タイラント・ボアの魔石は大きすぎるし質も良い。こんなのに使うのは勿体無い。

 シルバーファングの魔石でも少し大きいんだけど、半分に割って形を整えて良い感じに仕上げた。

 それでも直系一センチぐらいで指輪の宝石としては少し大きめだ。だからペンダントにして直系二センチぐらいで作ったのに不評だったんだよな。だから今回は指輪にしたんだ。


「この指輪を箱に入れ蓋を閉めます」


 クツールさんが注目しているのを確認し、先を進める。


「そして箱の横に埋め込んである起動用の魔石に少しだけ魔力を通します。ほんの少しの魔力で反応しますので、起動時の負担はほとんどありません」


 実際に説明通りに見本を見せる。

 起動したと同時に魔石が光る。


「この起動用の魔石の光が無くなると完成です」


 蓋を開けて指輪を取り出しクツールさんに差し出した。

 クツールさんが指輪を受け取り実際に指に填めていた。


「なんやこれ! 自動的にサイズが合いよる!」

「自動調節も付いてますからね。魔力を流してみてください」

「なんやて……そんなもん付与したら、なんぼになると思とんねん……」


 ブツブツ言いながらも魔力を流して試すクツールさん。

 すると、付与魔法が起動し、クツールさんを覆う防御膜が張られた。


「なんや分からんけど、なんかに護られてる感じがしますなぁ」


 そっか、魔力幕は目に見えないからクツールさんには分からないのか。


「じゃあ、試しに魔法を撃ってみますね」

「え? うわー! なんやなんや!」


 素早く五センチ大の炎をクツールさんにぶつけた。


「はれ? なんともあれへん。今のは何やったんや?」

「問題ないですね。最低でもその大きさの魔石を使ってくださいね」

「は…?」

「その指輪ですよ。付与は完璧でしたので、アクセサリはペンダントでも指輪でもいいですから、使う魔石は最低でも一センチより大きくしてください。それより小さくすると付与に耐えられなくて砕けてしまいますから」

「へ、へぇ……」


 気の無い返事をするクツールさん。

 そんな彼に別れを告げてブラッキーさん達との待ち合わせに備えて、ダンジョンの入り口に向かった。

 今日は朝ギルドで会ったので、現地集合にしたのだ。



 ダンジョンの入り口横で待つ事三〇分。最後のメンバーであるバンさんがやっと登場した。

 ブラッキーさんとホワイティさんは僕が着いてから十分後に来てたよ。


「よぉ、待たせたな。行くとするか」


 別に遅刻では無かったので、そのまま四人でダンジョン入り口に入り、入り口に入ってすぐ横にある転送魔法陣の部屋へと入り、現在の最深層のポイントの六〇階層へと転移した。



「……いた」

「え? どこどこ?」

「うむ、ダンジョンか……あまり気が進まぬな」

「あの…ダンジョンに入るんですか? 私はちょっと……」


 黒ローブ魔道士装備のハナノエと緑の狩人装備のウータエ、白い剣士装備のテルーエだった。

 それと何故か隣国の軍服を纏ったラッチ・テイカウトの姿もあった。


「……問題ない」

「ダンジョンの事をいたとは言わないわよ? あったって言うのよ?」

「全て問題ない。さぁ行こうではないか」

「問題だらけですぅ。私、軍服のままなので、この国では非常に肩身が狭いんですけどぉ。それに事務方である私にダンジョンで何をしろと? そもそも皆さん、ダンジョンを嫌ってましたよね? それ以前に、なんで私がこんなところにいるんですぅ?」


 何気に頑固なハナノエに、普段はお調子者だが、今はハナノエに振り回され気味のウータエと、ほぼ脳筋な騎士道一直線のテルーエ。

そんな三人に、振り回されまくってツッコミ役を一手に引き受けているラッチだった。


「……ダンジョン……」

「……う~ん、嫌だけど、ここにはあの婆はいないもんね!」

「うむ…ダ、ダンジョンは苦手ではない」

「三人とも明らかに動揺してるじゃないですかぁ! ね、ね、まずは町に入って宿を取りましょうよ。ね、ね」


 カーシマシーの三人は指摘された通り、動揺を隠せないでいた。

 三人の視線は泳いでおり、ダンジョンを見ようとしない。

 ダンジョンは確認していて、そのダンジョンに今から挑もうと言葉には出してるが、その足は一向にダンジョンに向いて進まない。


「……大丈夫…行く」

「そ、そうよね、ここには婆もいないし楽勝よね」

「…………よしっ! 行こう!」

「なんで入るだけで言い訳とか気力を振り絞らないといけないようなダンジョンに態々行かなきゃいけないんですかぁ! 私は行きませんからね!」


 ガシッ!


「……行く」


 ガシッ!


「ここまで来て別行動は無いよねー」


 ガシッ!


「我らはまったく動揺していない。妙な事を振れ回られても敵わん。共に行こうではないか」


 ハナノエに右腕を、ウータエに左腕をホールドされ、テルーエに首根っこをロックされたラッチは、そのままダンジョン内にドナドナされて行った。

 因みに、カーシマシーは隣国とはいえ全員Aランクのパーティだ。

 今回はカーシマシープラスワンとしてダンジョン入り口で申請し、無事ダンジョンに入る事ができた。

 ラッチにしてみればいい迷惑であった。


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