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第70話 弟子入り拒否

いつも誤字報告ありがとうございます


 小さかった頃、妖精達って僕のイメージ通りいたずら好きって感じだったと思う。

 いたずら妖精、正にそんな感じだったな。

 特にピッピ、毎日会うたびに髪の毛を引っ張って来たり、何か物を隠してみたり移動させてみたり、そんな事をしてた気がする。

 それで僕が困ってると『きゃははははははー』って喜んでて。

 あー、懐かしいなぁ。


 キャハハハハハハー


 そうそう、そんな感じで妖精の友達が増える毎に笑い声も増えて行ったなぁ。


 キャハハハハハハー


 キラリちゃんが増え、テンちゃんが増え、ポットちゃんやパンくんが増えて笑い声も大きくなって行ったな。

 でも、カゲールくんはそんなに今ほど笑ってなかったし、引っ込み思案のウーリンや寡黙な方のノムヤンはそんなに大声では笑ってなかったか。


 キャッハー!


 それがどうだろう。僕の『スラスマッシュ』が余程気に入ってくれたのか、みんなで大声で笑ってるよ。

 もしかしてバカにされてる? やっぱ大失敗か? でも、ホント楽しそうだなぁ。


 キャハハハハハハー


 いかんいかん、現実に戻ろう。

 スラスマッシュごっこをやってる妖精達は置いといて、周りを確認する。

 岩石龍は倒したな。先に収納袋に入れておこう。収納袋に入れば生きてない確認になるので、先にやっておく。

 後は死屍累々と吹き飛ばされて倒れてる獣人達の確認だ。命に別状は無いと妖精達は言ってたけど、元々がボロを着てるので手酷くやられた感が凄い。


 【エリアハイヒール】!


 一人一人見るのは面倒だったので、範囲魔法で一気に治した。

 聖属性も特に苦手な属性では無いんだけど、どちらかというと水属性のウォーターヒールの方が得意だ。でも、獣人って水属性が苦手な種族もいたと思うから、あえて聖属性で治した。

 あとは……あそこで呆けてる三人だな。


 今の【エリアハイヒール】の効果範囲に入ってたから、もし怪我をしてたとしても今の出治っただろう。

 なのに、ボロボロの服が治った感を出してくれてない。まだ瀕死じゃないのかと疑ってしまうぐらいだ。


「小僧!」


 パシッ! ゲシッ!


 獣人達を回復魔法で身体は回復はさせたけど、気絶状態からは脱していない。未だに伸びたままだ。

 獣人って身体だけは丈夫だからこのまま放っておいてもいいとは思うんだけど、集めて回った方がいいのかな。


「くっ、そこのガキ!」


 バシッ! ゲシッ!


 それより、見たところ食材集めが岩石龍のせいで難航してたと思うんだ。だったら、食材集めに向かうか。

 いや、さっきのタイラント・ボアの残りで今夜の分ぐらいなら十分か。

 あと、野菜が少々あればいいかな?


「キ…キズ……キズナ!」


 ビシーッ! ゲシッ! バシン!


 タイラント・ボアの肉ね。だったら焼肉か? 昨夜も今朝も焼肉だったんだ、だったらスープか?

 ここじゃ調理場も無いから大したものはできないし、やっぱその二拓になるよな。

 今日は町で色々買って来たし、炒め物ってのもありだな。炒め物なら味も色々変えられるし、一緒に炒めるもので全然違うメニューになるしな。そうだ、揚げ物ってのもいいな。

 こうやって考えると結構メニューがあるな。う~ん、どれにしよう。


「むー…キ、キズナ様……」


 ビシーッ! ゲシゲシッ! バシンッ!


「キズナ様!! いい加減にこっちを向いてくれー! 俺様がもたねー!」

「ん?」


 さっきから僕の熟考を邪魔してるのは誰? せっかく考えが纏まりかけてるのに。

 って思って声の主を見てみると、トゥーラの親父だった。獣人村の村長むらおさとも言う。


「ようやく向いてくれたか小僧!」


 ズビシーッ! ゲシゲシッ! バシンッ!


「くっ、キズナ様……」


 ヴェルさんから後頭部への張り手を食らい、トゥーラからは脛を蹴られ、コガネマルには尻尾で背中を殴打されていた音だった。

 どうも、僕の事をキズナ様と呼ばないと発動されるコラボだったみたいだ。

 コガネマルには関係無さそうだけど、二人の事が楽しそうに見えたんだろうな。初めは見てたんだろうけど、たぶん楽しそうに見えて途中から参戦してる気がする。


「ところで、岩石龍はどうなったんだ?」

「キズナ様がやっつけたのにゃ! 見てないのかにゃ?」

「スラスマッシュ……」

「えっ!?」


 ありえないヴェルさんの言葉に口を押さえて固まってしまった。

 なんで知ってんの? 僕は言ってないよ? あの距離で聞こえてた? いやいや、そもそも妖精の声って聞こえてないよね?

 あっ! ピッピか! ピッピは風妖精だから、ヴェルさんには見えてるんだった。もしかして声も聞こえちゃった?


「それより先にお礼を言うのにゃ! キズナ様! ありがとうございますのにゃ!」


 ゲシゲシ! バシンッ!


「お、おお、ありがとう……」


 さっきは朦朧としてたんだろうな。僕に対してお礼を言えと言われてもピンと来てないもん。

 でもトゥーラ…そういうのは口に出して言ってあげればいいと思うんだ。態々脛を蹴らなくてもいいと思うんだよ。

 コガネマルも遊びのつもりで追従しちゃってるから。


「い、いえ、どういたしまして。ところで、どうして岩石龍との戦闘になってたんですか?」

「それは、うちのお父様が言い出したのが切っ掛けなのにゃ。今日は岩石龍の肉祭りだーって言ったのにゃ。そしたらみんなが涎を垂らして突撃したのにゃ」


 ……バカなの? いや、ここはさすがに脳筋と褒めるところだろうか。

 いやいや、全然褒められねーからな! バカすぎだろ! 阿呆ぅだアホすぎる!


「それで全員返り討ちにあったんだ」

「そうなのにゃ。キズナ様が来るのがもう少し遅ければ全滅してたのにゃ」


 ホントにな。この状況を見れば分かるよ。

 僕も出発に少し手間取ってたけど、技名を言いたくないばかりに手間取ったけど、それでも間に合ってよかったよ。


「でも、ノスフェラトゥさんがいれば岩石龍ぐらい倒せるでしょ」

「ノスフェラトゥさんは手下のところに行ってるのにゃ」


 そういえば姿が見えないね。手下って、ムルムルさん達と砦町の塀を壊して回ってた吸血鬼達かな?


「そうなんだ。だったら魔物じゃなく手堅く鹿や猪や兎を狩ってればいいのに」


 そうは言っても脳筋集団だ。向かって行く一択だったんだろうな。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! さっきの岩石龍は!」

「だからキズナ様が倒したって言ってるのにゃ!」

「スラスマッシュ……」

「ぐはっ……」


 やっぱり聞かれてたんだ。完全にバレてる。


「本当なのか……で、あるならば」

「あるならば?」

「俺様を弟子にしやがれ!」

「「「はぁ~?」」」


 偉そうな言葉とは裏腹に、デッカイ身体を小さく折りたたんで土下座する長。

 何言ってんだ? この人は。僕に弟子入り? そんなのありえないって! 何をとちくるってんだよ!


「私にも、スラスマッシュの伝授を」


 この人何言ってんの? ちょっと頭に入って来ない。

 いきなりの土下座で弟子入り志願した長の隣にヴェルさんまで土下座して頼んでくる。

 そこに、意識を取り戻した獣人達がゾロゾロと集まり出して、事情を知って長に倣って後ろに土下座の山が出来た。

 そもそも獣人って強い種でも弱い種でも力上位がそのまま序列になる。その辺は魔物と同じだな。

 で、自分達がまったく敵わなかった岩石龍を僕が仕留めたもんだから、僕を上位と認めたみたいだ。


「そろそろ返事をくれ。足が痺れてきた」


 知らねーよ! 僕が土下座させてるわけじゃないんだから勝手に立てばいいんだよ!


「僕は弟子なんか取ってませんし、取れるほど余裕もありません。ノスフェラトゥさんに弟子入りすればいいじゃないですか」


 僕は忙しいんだよ! 早く剣を長剣にして『クロスオーバー』の世界に帰りたいんだよ。

 ノスフェラトゥさんなら協力体制を築こうとしてたみたいだし、弟子入りするには丁度いいんじゃない? 実力もあるよ?


「ノスフェラトゥ殿の配下に加わるのは吝かではない。だが、本当に彼奴は強いのか? 俺様は俺様より強い者でなければ弟子にはならん! 配下と弟子は別物だ!」


 んー、微妙に分かりにくいけど、配下になるのは獣人全員の住処の確保のためであって、弟子では無いと言いたいのだろうか。

 確かに獣人達は精霊達に直接救助されてノスフェラトゥさんの実力は知らないんだろうけど、そういうのって実力者だったら結構分かったりするもんじゃないの? 僕にはわかんないけど。そういう意味でも僕は実力者の域には達してないんだろうね。


「う~ん、ノスフェラトゥさんって強いよ? 吸血鬼のトップの更にトップの人だから」

「なっ!? 本当か!」

「うん、ホントホント。元は十二位だったらしいんだけど、最近ナンバーワンになったそうだよ」

「なんと!? 吸血鬼のトップの更に上とは始祖のナンバーワンという事か!? あのノスフェラトゥ殿がまさかそんな方だったとは……まったくそうは見えんかったが」


 それ、本人の前で言っちゃダメなやつね。それに、見た目で言ったら僕の方が弱そうだと思うんだけど。なんか言っててへこみそうになるのは何故だろう。


「だからね、ノスフェラトゥさんの弟子になればいいんだよ。ノスフェラトゥさんの紹介してくれる土地に行くんだし、一緒に何かするんだよね? だったら一石二鳥じゃない」

「そうだな…たしかにそうだ! よし! 皆の者! 我らはノスフェラトゥ殿の傘下に下るぞ!」

「「「おおおお!!」」」


 言うが早いか、獣人達は長を先頭に駆け足で洞窟に戻って行った。

 さっきまで瀕死の人もいただろうに。獣人って元気だね。って…あれ? まだいたの?


「ヴェルさんは行かないの?」

「はい、私はスラスマッシュを伝授して頂くまでここを動きません」

「……やっぱり聞こえてた?」

「はい、しっかりと」


 あちゃー、やっぱりかー。ピッピの声が聞こえてたかー。


「でもね、ヴェルさんのメイン武器って何なの? 見てたから分かると思うけど、棍で叩くだけの技だよ?」

「先程の棒ですね。あれを私も用意すればご教授頂けるのでしょうか」

「棒じゃないし! 棍だし! 僕のスラ五郎を棒なんて言う人には何も教えないから!」

「すっ、すみません! コンです、まさしくコンでした!」


 僕の勢いに押されて、慌てて訂正するヴェルさん。

 棍って何かも分かってないくせによく言うよ。

 ま、実際、棍と棒で棍棒って混ぜこぜで言うけど、棍って広がりがあるじゃん! 三節棍とは八節棍とか、ヌンチャクも双節棍とか両節棍とか言うし、棒術より多様性があるじゃん!

 でも、シャードルさんとシャイニーヌさんに変な機能を付けられたから、もうスラ五郎を棍と呼んでいいかも怪しくなってんだけどね。

 伸びるとか鞭になるとかハンカチが出て来るとか魔法媒体になるとか、もう棍じゃねーし! って感じではあるけど、その機能さえ使わなければ棍なんだよ! そういうのも纏めてスラ五郎でいいじゃん! あれ? 棍は何処に行った?


「……わかりました。教えてもいいですよ」

「本当ですか!?」

「はい、でも一つだけ条件があります」

「はい! どんな条件でも飲みます!」


 嬉しそうにグイッと前に出てくるヴェルさん。

 近い近い! そんなに嬉しいの?


「技名を誰にも言わない広めない。これが条件です」

「そんな……」


 え? そんなに技名を言いたかったの?

 でも、これだけは絶対条件だから僕だって譲れない。

 ブラックな歴史的なものは封印するに限る!


「わかりました! 心の中でだけ叫ぶ事にします! ですから、是非ご教授ください!」


 やっぱり心の中ででも叫びたいのかい!


「じゃ、じゃあ、これを持って」


 と、手に持ってたスラ五郎を差し出した。


 ズンッ!


「きゃっ!」


 受け取ろうとしたヴェルさんだったが、手に持とうとした途端、スラ五郎が手から落ちて地面にめり込んだ。


「なななななんですか! 重すぎます! 一体これ何キロあるんですか!」


 そういえばギュウギュウに圧縮して圧縮して更に圧縮して作ったもんな。

 レベル700オーバーの時に単純な力任せで地龍を思いっ切りぶっ叩いても歪まないんだから相当な質量はあると思う。

 今も超硬い岩石龍を叩いたけど傷も付いてない。レア金属も少し入ってるしね。


「やっぱり重いかな?」


 そう言ってつま先にスラ五郎を引っ掛けてヒョイと浮かせて手に持った。


「ななななななんでそんな事ができるんですか!」

「なんでって、これぐらい誰でもできるよね?」

「その辺の棒なら出来ますが、そんな重い棒でなんて誰にもできません!」


 一度レベルが上がってから下がっても、僕の場合はステータスが上昇率の割りに下降率が超低いからレベルが上がる前のレベル1より下がってからのレベル1の方が強いって言われたな。

 だからかもしれないけど、今の僕のレベルは一体いくつなんだろ。

 鑑定とまでは言わないけど、自分のステータスぐらいは知りたいな。


「それができないとスラスマッシュはできないのですか?」

「シッ! 声が大きいよ」

「す、すみません」

「答えだけど、基本はそうだね。このスラ五郎が持てないとその技はできないね」


 ただ単純にスラ五郎を振り回してるだけなんだから、スラ五郎が重くて持てない時点でスラスマッシュはできないね。

 いや、一応棍術は習ってるんだよ? だけどフィニッシュの一撃なんて端を持って思いっきり叩きつけるだけなんだ。

 乱戦になったり、同格の対人戦なら技も使うけど、こっちの世界に来てからそういう目に合った事ないから見せ場も無いんだよね。


「そう…ですか……」


 ガックリと残念がるヴェルさん。


「だけど、ヴェルさんって後衛職なんだよね? だったら棍より杖の方がいいんじゃないの?」

「いえ、私は短剣術と弓術が得意です。精霊魔法のお蔭で弓の命中率は上がってますし、素早さも上がる短剣術とは相性がいいんです」

「だったら何で」

「私も必殺技が欲しかったんです……」


 そっちか! それで必殺技を身に着けて叫びたいの? ヴェルさんってそっち側の人だったんだ。


「じゃあ、編み出せばいいんだよ。必殺技なんてそんなもんだよ」

「えっ!? 編み出すんですか? 私が……?」

「そうそう、一撃で倒せればそれが必殺技って事でしょ? ヴェルさんなら精霊魔法で出来るようになるんじゃない?」

「私が…自分で…編み出す……必殺技を?」


 なんだっていいんだよ。昔のライダーなんてキックしてるだけで必殺技だったじゃん!

 パンチ飛ばしてるだけのロボットもいたし、刀で斬ってるだけのライオンもいたじゃん!

 ようは、一撃必殺でそれっぽい名前にすればいいんだよ。

 僕のだってスラ五郎を振り回してるだけだからね。


「そう、僕の見立てでは妖精が鍵を握ってると思うんだ。そうだろ?」


 そう言っていつもヴェルさんに付き纏ってる風妖精に目を向けると、ツーンとそっぽを向かれた。

 一応、リアクションはしてくれるようになったんだよな。でも、未だに好意的な態度は示してくれない。

 まぁ、その内慣れてくるかな?


「風妖精が? そうなのかしら」

「たぶんね。そして一撃必殺の技ができれば名前を付ければいいんだよ。ヴェルさんだけのオリジナル必殺技って格好よくない?」

「! それ! 素敵です! 分かりました! スラスマッシュは諦めて、サイクロン・カッターにします!」


 サイクロン・カッターって……もう技名が付いてるよ。

 即興で考えたにしては中々いいじゃん。スラスマッシュよりいいかも、ベタっぽいけど。どんな技かは知らないけどね。


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