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第67話 会議

いつも誤字報告ありがとうございます。



 奴隷にされてた獣人達、奴隷にされるように囚われていた獣人達。と、二人のエルフ。

 二人のエルフは別だったが、すぐにも砦町へ突撃を開始しようとしてた獣人達を、ヴェルさんの協力もあったが、食事を振舞う事で回避したのであった。


「では、今後の方針を決めます。まず、方針のある方がいれば発表をお願いします」


 食事のあと、皆お昼寝に籠った。もちろん疲れもあっただろう、肉体的にも精神的にも。

 でも、皆が起きる前に方針は決めておかねばならない。獣人がアホであったとしてもだ。

 で、まずは潜入組の六人を起こし、次にトゥーラのお父さんとその参謀を起こして連れて来た。

 ここにいるのは僕とトゥーラを含めて十人だが、進行役をやれるとも思えなかったので、僕が務めている。


 八人掛けのテーブルセットに四人ずつ向かい合って座り、長方形のテーブルの短い方で、よく言うお誕生日席には僕が進行役として座り、向かいにはトゥーラの父親だ。

 僕から見て左側に座るのは参謀、トゥーラ、ヴェルさん、ノスフェラトゥさん。右側にはバイトリさん率いる獣人潜入脳筋部隊の面々が座っている。


 救出作戦の時のようにノープランのまま付き合わされるのは、もう御免だ。

 ある程度の指針は決めておきたい。


「当然、町を襲撃だ! 我ら獣人の恨みを今こそ晴らす!」


 そう宣言したのは予想通りトゥーラの父親の族長。隣で参謀も腕を組んでうんうんと肯いている。

 トゥーラも同意見のようで、父親を羨望の眼差しで見つめている。

 右側に座る獣人達も同様のようだ。


 アカン! 話し合いになれへん! もうこんな脳筋達といるのヤダ。


 ヴェルさんは我関せずのようだし、ノスフェラトゥさんは腕を組んで何か考え込んでる。

 今は、この二人に期待するしかない。期待値はかなり低いけど。


「えー、却下します。他にご意見は?」


 グルン! と七人の獣人の首が一斉にこちらを向いた。ギロっという擬音が聞こえそうなぐらい睨んでくる。

 うん、その程度なら問題ない。先生達の迫力の方が数百倍上だからね。その程度の殺気なんてそよ風程度だよ。

 さっきまでなら兎も角、今は着てるものがゾンビぐらいボロだけど、顔には精気が戻っていて恐ろしさも激減してるからね。さっきのは反則だよ、だって見た目の酷さもあって怯んじゃったけど、今はもう慣れたというのもあるしね。


「このままここに残るというのは如何でしょう」


 おお! ヴェルさん! そういうのを待ってたんですよ!

 内容としては足りないけど、襲撃以外の意見をありがとうございます!


「余としては、獣人達を余の国に取り込みたいと考えておる。が、その前にひとつ。今の長の意見には賛成も反対もない。其方そなたらは町を滅ぼせば満足なのか?」

「……もちろんだ! それ以上の何がある!」


 僕が却下してヴェルさんが代案を出し、ノスフェラトゥに意見を言われ暫し思考が止まった獣人達。

 それでもトゥーラの父親が長の貫禄で一番先に自我を取り戻し反論した。


 こういった会議らしい会議などしないんだろうな。

 通常なら長の鶴の一声で決まるんじゃない? 誰も反対などしないと思ってるからフリーズしちゃうんだね。

 もう脳筋なんて生易しい、こいつらの頭ン中は空っぽなんじゃない? 筋肉すら入ってないだろ!


「町だけでいいのか?」

「は?」

「襲撃するのが町だけでいいのかと聞いておる」

「それはどういう……」

「余は一族の頂点に立った。次は森の制圧か人族領域の制圧かと考えておった。だが、今回の救出作戦で、余は自分の力の無さを思い知った。このままではキズナ様のお傍に仕える事ができぬほどの無能振りを晒した。だから、まずは部下を鍛えるためにも森の制圧をする。そのためには人手が足りぬ。だから其方そなたは余の傘下に入り共に力を付け、そして余の手足となり人族も手中に入れる。どうだ、余の下に来ぬか」

「……」


 おさはノスフェラトゥさんの言葉に戸惑い、そして俯き瞑目し考えた。

 数秒後、その顔を上げ、参謀に目を向けた。

 その視線に参謀が肯き、ノスフェラトゥに問うた。


「それはつまり、我々が貴方の部下になれと言う事ですね。そして部下になって貴方にノスフェラトゥ殿に従い、森の制覇に手を貸せば鍛えられて、その後に人族も滅ぼすという話ですか」


 グルン!


 答える参謀さんに長を含めた五人の獣人の視線が向く。


「……」


 ここは長として答えるとこじゃないの? 何か言えよ!


「概ねその通りだ。余はキズナ様の下僕しもべとしてこのままでは終われぬのだ」


 グルン!


「……」


 五人がノスフェラトゥに向く。しかし長は答えない。


「部下になれば強くなれるそうです」


 グルン!


 ポン! っと五人の獣人が手を叩く。


「最後には人族を滅ぼすそうです」


 ほぅっと相槌をうつ五人の獣人。


「うむ、わかった。部下になれば強くなれて人族の町を滅ぼすのだな。では、ノスフェラトゥ殿の部下になろうではないか」


 したり顔で答えた長。

 あんた今、全然ノスフェラトゥさんの言った言葉の意味が分かってなかったんだな!? それで参謀に通訳させてやっとわかったって……

アホすぎるだろ! なんで同じ言葉を使ってて通訳がいるんだよ!

 もう会議になんねぇ! アホは出てけ!



 問答無用で頭が空洞になってる五人を叩き出し、会議を再開した。

 メンバーは参謀、ヴェルさん、ノスフェラトゥと僕の四人。トゥーラはどっちでもよかったんだけど、眠そうだったから一緒に連れて行ってもらった。


 このメンバーでも不安はある。全然ある、アリすぎ。

 でも、僕の独断で決めてもいいようなものでもないし、決めても誰も従わないと思う。当たり前だけど。

 でも、意見は出せる。進行役をする事で思考誘導もできるだろう。こいつらならね。

ノスフェラトゥさんは僕の意見には耳を貸すし、たぶんヴェルさんも賛同してくれるんじゃないかと思う。

 ノスフェラトゥさんの意見も聞いたし、僕の意見を言ってみよう。まずは気になった部分の確認だ。


「ノスフェラトゥさん、人族の町を滅ぼすんですか?」

「なな! キズナ様と同じ人族を滅ぼすなど、余がするはずがない。そのような事は致さん!」

「おい! ノスフェラトゥ殿! 先程と話が違うようだが」


 僕に言い訳するノスフェラトゥさんに食って掛かる参謀さん。

 確かにそうだよね、僕だってノスフェラトゥさんが同意してるのを聞いたよ。参謀さんのクレームは当然だな。

 でも、人族を滅ぼそうとしてないのが分かって少し安心したよ。


たがわぬ。余は概ねそうだと言ったが、全てを認めたわけでは無い」

「それは詐欺だ! ではノスフェラトゥ殿は俺らを騙したのか!」

「騙してなどおらぬ。余は人族を手中に収めるとは言ったが、滅ぼすとは言っておらぬと言っておるのだ」

「ん? ……意味がわからん。手中に収めるのと滅ぼすの違いが分からんが」

「分からんのなら先程の同意は撤回するのか? 手が足りぬのは誠であるが、敵を身に入れると覇業への障害となる。そのような輩は受け入れられぬが、其方そなたらはどう考える?」


 ん? ん? これは僕にもよく分からない。かなり遠まわしに言ってる?

 確かに手中に収めるには色々あると思う。属国にするのもそうだし、経済で牛耳るのもそうかもしれない。

 宗教でもできるかもしれないし、王を裏で操る事だって出来るかもしれない。

 他にも方法はあるかもしれないけど、ノスフェラトゥさんはどうやって手中に収めるつもりだろう。


「ノスフェラトゥさんはさ、人族を滅ぼさないって言ってるけど、どうやって人族の上に立つつもりなの?」


 参謀さんへのフォローのつもりでノスフェラトゥさんに聞いてみた。

 だって、僕には関係ないもん。僕が関係あるのは、せっかく救助した人達を無闇に突撃して命を散らせたくないだけ。できればここで養生して、しっかりと準備した上で、どこかで幸せに暮らしてほしいだけだ。ノスフェラトゥさんの覇業なんて僕には関係ないもの。


「はっはっは、そんな事は簡単ですぞ、キズナ様。今回の町同様に壁を壊してやればよいのだ。さすれば、人族も余の力を認めて傘下に入るであろう」はっはっはっは


 ……やっぱこの人も脳筋だったよ。

 確かにこの世界の全ての町は高い塀で囲まれている。『クロスオーバー』の世界では無いものだったし、前世の日本でも無いものだ。だけど授業でも習ってたし、知っている。

 それは人族同士の争いのための防御の意味合いもあるけど、一番は魔物からの襲撃に備えるためだ。

 そんな意味のある外壁を壊してしまったら危険じゃないか。


「心配はいりませんぞ。魔物は余の命令には逆らえぬ。森から出るなと命じれば、どんな魔物でも余に従いましょう! 人族の町は森の中にはありませぬからな!」はっはっはっは


 救出作戦から少し塞ぎ気味だったノスフェラトゥさんだけど、何故か調子が良さそうだ。


「だったら、今やってあげればいいんじゃないの? そうすればスタンピードも起こらなかったのに」

「あれは余の失態でありましたな。あれがあったので、今は森から出ぬよう命じております」


 おお! もうやってくれてたんだ。それなら安心だね。


「しかし、この命令は余の縄張りの範囲でしか効果の無いもの。しかも、余の命令は森から出るなというもの、魔物は森からは出ないが森に入って来る者に対しては防衛もするし襲いもする。魔物も生きて行かねばなりませんからな」


 それは当然? なのかな。僕がいた『クロスオーバー』の世界では当然だけど(というか、争い自体が無いんだけど)、魔物の縄張りにさえ入らなければ魔物からは襲って来ないんならいいんじゃないだろうか。


「うん、ノスフェラトゥさんの考えは大体分かったよ。でもね、今すぐに行動するは辞めた方がいいと思うんだ。獣人さん達の体調もそうだけど、服装もボロボロだし武器・防具だって何もないでしょ。まずはヴェルさんの意見を採用してここを拠点にある程度自活できるようになってから行動をした方がいいと思うんだ。幸い、今回の作戦で砦町は外壁が無くなって復興で僕らを追跡するどころじゃないと思うんだ。だったら少しぐらい時間を掛けて体勢を整えた方がいいと思うんだけど、どうだろうか」


 ノスフェラトゥさんは「キズナ様の仰せのままに」とか言ってるし、ヴェルさんは自分の意見が採用されてご満悦の様子だ。ここにいつまでも居座る気は無いけどね。

 参謀さんはうむうむと肯いて考えてる。獣人の中でも少しは脳みそが入ってる人もいるんだね。

 ってか、もうこの人が長をやればいいんじゃない?


 考えが決まったのか、参謀さんが質問をしてきた。


「お前が何故仕切るかは知らんが、いい意見だ。確かに俺達獣人の……」


 ボゴォ! ビシッ!


 参謀さんがまだ話してるのにノスフェラトゥが参謀さんを殴った。

 しかも、ヴェルさんまで妖精に風弾魔法を発動させていた。威力はともかく、発動までまだちょっと遅いね。


 でもなんで?


「キズナ様をお前呼ばわりとは、いい度胸をしておるな」

「私の恩人に対して、何を上の立場で話しているのです? キズナ様のお蔭で救出もされたというのに、本当に獣人というのは身体でしか覚えられないのですね」


 う~ん、それはすぐに手を出す君達にも言えると思うよ? まさにブーメランって言葉がすごく似合ってるよ。僕のためってとこが気になるけど、脳筋達は身体で語り合うんだろうし、この程度なら放っておいてもいいかな。怪我をしてもポーションがあるからね。あ、在庫が切れたんだった、また補充しないとな。


「多少は手荒いのも仕方がないとは思うけど、気絶させちゃったら話し合いもできないからね。もう少し加減してほしいかな」

「「あっ!」」


 もうね、獣人だけじゃなく、この人達が拳で語り合う人種だと納得できたから、あえて手を出すなとは言わないけど、カチンと来たら毎回気絶となると話が進まないからね。


「「申し訳ありません……」」


 ポーションが無いので回復魔法で参謀さんの怪我を癒し、会議を再開させる。


「一体、なにが……」

「先に言っておこう。キズナ様は余の主である。キズナ様への侮辱は悉く余が排除する旨、重々頭に入れておけ」

「キズナ様は私とトゥーラの命の恩人でもあり、師匠でもあります。私もキズナ様への侮辱を見過ごす事はできませんので覚えておいてください」


 覚えてなくとも身体に覚えさせますけどって、ヴェルさん……ちょっと怖いです。

 参謀さん、意識を回復したばかりでキョトンとしてますよ。


「私が手を下さなくてもキズナ様は地龍を単独討伐できるほどの方ですから、話し方にも気を配った方が貴方のためでもあるのですよ?」

「うむ、数万規模のスタンピードも収められましたしな。だが、従者の身としてはキズナ様の手を煩わせる事を無くすのも務め。キズナ様の一番槍としての役目を全うするだけである」


 ノスフェラトゥさんとヴェルさんがいい顔して語っている。

 あの時はさ、レベルが高かったので調子に乗ってたかも。いや、そうでもないか。『クロスオーバー』でも同じことをしてたかも。


「そ、そうなのだな。そこの小僧…いや、ガキ…いや、わっぱ…い、いやその方がノスフェラトゥ殿の主でヴェル殿の恩人である事は理解した。トゥーラ様も助けてくれたのだな、それについては今更かもしれんが例を言おう、ありがとう」


 小僧やガキと言う度に二人から睨まれ何度も言い直す参謀さん。

 理解したと言ったけど、理解はされてないだろうね。でも、キチンとお礼が言えるのはさすがは脳筋集団の纏め役というとこか。柔軟な思考をする人のようだね。


「いえ、僕が勝手にした事ですから、お気になさらずに。それよりも、今後の事についてどう思われますか?」

「うむ、この場で力を溜めるのだな。悪い話ではない。だが、ここには食料も無ければ服も武器も無い。我らは百人からいるのだ、どうやって力を蓄えるのだ」

「それについては提案があります。食材についてはコガネマルと共に森で調達して来てほしいのです。調味料や調理器具については僕が提供します。薪などの燃料と、あと薬草も調達してほしいですね。それぐらいはできるでしょ?」

「そうだな、先程の食事以降、体調はすこぶる良い。他の者も同じだろう。その提案程度なら問題ないだろう」


 体調はいいんだね。ポーションを入れた甲斐があったよ。だったら出発するまでにそう時間は掛からないかな。


「服や武器に関しては、僕が町まで行って調達して来ます。体調が良いんだったら、二~三日休んで出発しましょう。問題は行き先なんですが、冒険者活動をするんならフロントラインの町がお勧めみたいですよ」

「いや、行き先はもう決めてある。ノスフェラトゥ殿を頼る事にする。よろしいかな? ノスフェラトゥ殿」

「うむ、歓迎しよう。このまま森を西へ向かえば余の新城がある。その近くに樹が生えてない平野があるので、そこに家を建てて拠点にすればよい」


 材木は幾らでもあるからなって言ってるけど、家を建てるとこからなの? それは大変だなぁ。


「それは有り難い。我らは力仕事は得意であるし、集落でも自分達に合った家を建て暮らしていた。場所さえ提供してもらえれば助かります」


 家を建てるとこからでいいんだ。小さな集落で暮らしてたんならそれぐらいはお手の物か。獣人は種族によって体の大きさも特徴も違ったりするから自分達で合うように建てる方がいいのかもね。

 だったら、斧や鉈や鋸なんかも購入してきてあげよう。服や武器の調達先は、ここから一番近いドワーフが多く住む鉱山町マインだし、大量購入できるだろう。


「じゃあ、移動中の分の食材なんかもお願いしますね。明日一日コガネマルに付いて狩りに行ってください。倒すのはコガネマルに任せて、運搬と解体と加工をしてくれると後が楽になります」

「我ら獣人はビッグボア程度なら武器など無くとも数人掛かりで倒せる。コガネマルの力を借りる必要など無い」


 おお! それは凄い。それでも囚われてたんだよね。まぁ、これだけアホが揃えば罠にも掛かり放題だったんだろうな。人質効果も高そうに見えるしね。


「じゃあ、明日は食材調達と食品加工にしましょう。僕はその間に町に買出しに行って来ます。ノスフェラトゥさんとヴェルさんも獣人さん達を手伝ってあげてください」


 ようやく話し合いが終わり、今後の見通しがついた。

 ここで療養と出発のために準備を進める。行き先は吸血鬼の縄張りの何も無い平野。

 二日になるか三日になるか、それは準備次第という事で会議が落着した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「……ない」

「こちらではないようですね」

「……次はあっち」

「いえ…そろそろ陽も暮れますので、一度町へ戻りませんか?」

「……次はあっち」

「そう、ですか……」


 森を彷徨うように探索しているハナノエと、強制的に協力させられている砦兵の事務官の女性。

 名前をラッチ・テイカウト、連れ去られるために付けられたような名を持つ女性であった。


「それで何を探してるのでしょうか」


 森の徘徊を始めてから既に二時間、ラッチの心にも十分に余裕が生まれている。


「……おおじじ」

「……」


 質問できるぐらいの余裕もできたし、浮遊魔法にも慣れてきたのだが、回答の意味が全く理解できないでいる。


「そのおおじじというのは、この森にいるんですか?」

「……いる」

「それはどんな特徴をしているのでしょう」

「……黒い…小さい…レベルが低い」

「なんですか、それは! どんな魔物ですか! でもレベルが低いという事は弱いんですよね?」

「……強い……たぶん」

「ええ!? レベルが低くて強いって何なんですか! それって龍なんですか!? もう意味が分かりません!」


 森での探し物、イコール魔物か素材だと思っているラッチと、キズナを探しているハナノエとは会話がズレていた。


「それと、今更ですが、名前をお伺いしてもよろしいですか? 私はラッチ・テイカウトと申します」

「……ハナノエ。ラチ…覚えた」


 本当に今更の自己紹介が行なわれた。森の上空で。


「ラチではありません! 拉致はされましたがラッチです!」

「……次はあっち」

「聞いてくださいよ! ハナノエさんですね、もう陽が暮れますから捜索は明日にしましょうよ!」

「……次はあっち」

「もうお腹も空いて来ましたよね? 私、サンダルバードの美味しいお店を知ってるんです! おごりますから一度帰りましょう!」

「…………もう一声」

「むむむ、ボアの上位種のタイラント・ボアを出すお店を知ってます」

「……帰ろう」

「はぁぁぁ、よかった。でも、そのお店は高いんで折半ですからね?」

「……おごるって言った」

「それはサンダルバードの話ですよ! タイラント・ボアは無理です!」

「……おごり、やった」

「いえいえいえいえ、無理ですから! おごれるほど持ってませんから!」

「……楽しみ」

「ちょちょっと待ってください! おごるなんて無理ですから! ハナノエさん? 聞いてます? せめて半額にしてもらえません?」

「……ゴチ」

「無理ですってば――――!!」


 静かな森にラッチの悲鳴が響き渡る中、ようやく探索を諦め帰途につくのであった。



こっそりと三人娘の修行期間を三ヶ月に変更しています。

ご内密に。。。。

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