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第62話 作戦?

誤字報告ありがとうございます。

二度、頂きましたが、アレはいいものですね。

承認ボタンを押すだけの簡単なやつでした。

ただ、お礼が言えないのが困ります。誰が教えてくれたのかも分かりませんし、こちらからのお礼コメントも出せないシステムでした。

この場を借りてお礼を申し上げます。

誤字報告ありがとうございました。


「ところでヴェルさん、これだけ深い洞窟なら入って来られても簡単には見つからないようには思いますが、入り口に見張りをつけないなんて無用心ではありませんか?」


 洞窟を歩きながら、疑問に思った事を尋ねてみた。


「見張りはつけていますよ? キズナ様でも分かりませんでしたか。うふふ、それは褒めてやらねばなりませんね」ふふふ。


 嬉しそうに微笑むヴェルさん。

 あれ? こんな風に笑う人だったんだ。美人が笑うと更に魅力がアップするよね。でも、意外だった。二日は一緒にいるけど、こんな風に笑ったのを見たのは初めてだ。

 援軍を連れてアジトに戻れたからか、精霊魔法の威力がアップしたからか分からないけど、心に余裕が出来たのかな?

 援軍と言っても僕だけだけどね。


 入り口から入って十分。幾つかの分岐路を経て、ようやく目的の部屋に辿り着いた。

 もう天然の迷路だね。よくこんな場所を見つけたもんだよ。普通なら絶対に迷うね。


「ここがアジトです」


 入り口でも聞いたセリフを言うヴェルさん。確かにどっちでも使う言葉かもしれないけど、ややこしいね。


「遅いのにゃー! 早く早くー! なのにゃ!」


 『にゃ』って言ってる時点でネコだと思うんだけどなぁ。本人が虎だって言うんだから虎獣人と認識しないとダメなのか?

 トゥーラが入り口で待っててくれたようで、僕とヴェルさんを中へと招き入れてくれた。

 このアジトには何度も来てるみたいで、一度も間違える事無く、部屋まで先回りしてたようだ。


 扉は無く、中に入ってみると大きな広い空間があり、その大部屋から幾つかの横穴があるのが確認できた。別の通路が繋がっているのか、それとも小部屋になっているのか分からないけど、ここが終点というわけでは無さそうだ。


「外の見張り以外のメンバーが全員揃ってるようです。紹介します、こちらが……」


 ちょっと待って? 全員? ここにいるので全員なの? 五人しかいないよ? 外にいるという見張りを合わせても七人? 僕とヴェルさんとトゥーラを含めても十人? マジで?


 そんな事を考えてたから紹介された名前が全然入って来なかった。

 五人のうち四人は獣人で、残りの一人は……


「なんでここにいるんだよ!」


 と、思わず我に返ってツッコミを入れてしまった。

 だって、森の奥にある吸血鬼達の主城に帰って玉座に座ってるはずじゃん! 纏め役がここにいちゃダメだろ! 吸血鬼達が反乱するんじゃないの!?


「何をおっしゃるかキズナ様。これからキズナ様が戦争を始められるのならば、まずは余が一番槍として活躍せねばならぬではないか」


 ノスフェラトゥだった。意味が分かんない。

 しかも、態々フードを被って僕に分からないようにしてたのか、それとも今はその格好で行動してるのかは知らないけど、顔を隠してたから気づくのが遅れたよ。

 なんでここにいるかもそうだけど、今言った言葉の意味もそうだ。何故、僕が戦争するってなってる。獣人解放するんだよね?

 先日も始祖の順位決めの覇権争いをやってたんだろ? どんだけ暴れたいんだよ!


「なんで戦争?」

「奴隷解放をするのであらば、戦争であろう」

「うん、そこの意味がわかんない」

「逆に尋ねるが、キズナ様はどうやって奴隷となった獣人を解放しようと考えているのであるか? 囚われてる者達と違って、奴隷となった者を解放するには主人を亡き者とせねばならぬだろう?」

「えっ!? そこは解呪魔法で何とかなるんじゃないの?」

「は? 解呪魔法……?」


 質問返しをされたが、僕には疑問しか残らない質問だ。

話し方はそれでいいと言った覚えがあるのでそっちはいい、契約魔法があるなら解約や解除の魔法があるはずだよね?

 なんで奴隷解放のために人殺しをしないといけないんだか。奴隷化されてるんなら『奴隷の首輪』などの魔道具か契約魔法で拘束されてるだけだろ? だったら、それを解呪してやればいいだけだろ。


「それは儂も聞きたいですな。解呪魔法とは何ですかの?」


それまで黙って聞いていた残り四人の内の一人が尋ねて来た。

 身体も小さいし眉や髭が真っ白だ。かなりのご年配だと見える。

 こんなお爺さんが戦力にはならないんじゃないの? って思うけど、獣人だから何か特殊な能力があったりするんだろうか。

 ま、見た目で言ったら僕も人の事が言えないか。


 いや、でもそこから? いやいやいやいや、それぐらい分かるでしょ!?

 あなた達も冒険者なら契約してるでしょ? あ、この人は冒険者じゃないかも。

でも、どんな事だって契約ってあるよね? 依頼を受ける、達成する、報酬をもらう。これって契約じゃん! ものを頼む、用意する、購入する。これも契約じゃん! その契約を無かった事にするのが解約とか解除でしょ。これが精神の契約になると解呪になるだけだよ。


 自分の中では普通の事だけど、自分の普通と他人の普通が違う時は多々ある。

だったら、相手の普通を先に聞いてみよう。


「解呪魔法を知らないんですか? だったら奴隷にされた者達はどうやったら解放されるんですか」

「軽い奴隷なら拘束具を付けられるだけだがの、重い奴隷、今回のように『奴隷の首輪』を付けられてしまえば主人が死なない限りずっと奴隷のままだの。主人が次の主人となる者に譲渡すれば奴隷のままだしの」


 譲渡ができるのに解除ができない? 余計に意味が分からなくなってきた。


「譲渡ができるんなら解除もできるでしょう。どっちも闇魔法なんですから」


 闇属性の精神魔法に魅了系の隷属魔法と契約魔法がある。それで奴隷として縛ってるだけだと思うんだけど、魔法拘束はできて、その解呪ができないなんてどうなってるんだろ。


「は?」

「え?」


 こいつ何言ってんだ? みたいな顔して見られてしまった。

 こんな簡単な事も分からないの? って僕も声が出てしまった。

 いやいや、さっき反省したところだ。僕の普通が他人の普通では無い、かもしれないって。

 でも、これ以上、どこをどう噛み砕いて説明すれば分かるんだろう。結構、初歩的なところの説明なんだけど。


「絵本で読んだのかの? まだ子供のようだし夢を見るのは構わんが、儂らは今、現実の話をしとるんだがの」

「え? 闇魔法が無い!?」

「何を言うとる。闇魔法はあるが使い手はおらん。世界の常識だろう」


 ええええ!? だったら『奴隷の首輪』はどうやって作られたんだ? 闇魔法の付与じゃないの?


「闇魔法は魔物しか使えん魔法、人間に使える者などおらんのは誰でも知っとるがの。ディードヴェルよ、こんな使えん子供を連れて来ても足手まといであろう。何故連れて来たのかの」

「ヴァイトリさん。このキズナ様は素晴らしい方です、冒険者ランクもAですし地龍も単独で討伐されているのです。足手まといなど有り得ません。私達の強力な手助けになる事は間違いありません。闇魔法についても何かお考えがあるのだと思います」

「地龍だと!」


 地龍というフレーズに大袈裟に反応するヴァイトリさん。

 この年配の人がここのリーダーなのかな? バイトリーダー? 的な? 名前もバイトリさんだしね。あ、ヴァイトリさんか。


「地龍を単独討伐だと!? しかもAランク? こんな成人もしとらん子供が……信じられん、証拠はあるのかの」

「私とトゥーラが助けて頂いた、では少し弱いですか。キズナ様? もし差し支えなければ冒険者カードを提示して頂けないでしょうか」


 ヴェルさんが僕に冒険者カードを出せと言って来る。皆の信用を得ようとしてるのだろう。

 出会ったばかりで僕には信用が皆無だからね。冒険者カードを見せる事で信用が得られるんなら安いものだ。


「なっ! Aランクだと!」

「おお! さすがはキズナ様! 早くもAランクになったのですな。一番槍として余も鼻が高い!」

「むむ、地龍の討伐の履歴も確かにあるの。むー、では闇魔法を使えるというのも強ち嘘でもないのかの。しからば作戦変更もあり、と考えるべきかの」


 作戦があったんだ、そりゃあるか。やっぱりこの少人数でやるつもりだったんだな。無理があると思うんだけど。


「作戦があるんなら聞かせてほしいんですけど」

「そりゃ、お前さんが闇魔法を使えるとなれば変更も止むを得んかの。こっちの旦那が契約の上書きをすると言ってたがの、二重契約など精神が耐え切れんかもしれんからの」

「ふん! 余の血の契約であれば他の契約など消えてなくなるに決まっておろう! 『奴隷の首輪』などに負けるはずがないわ!」


 そんな事を考えてたんだ。この人達…ヴェルさんも含めてノスフェラトゥさんが吸血鬼―――それも始祖って知ってるのかな? 今は進化して吸血鬼王バンパイアロードだったか。

 それより、今のノスフェラトゥさんなら二重契約にならずに契約の上書きができるかもしれないけど、ノスフェラトゥが血の契約しちゃったら、吸血鬼の獣人ができちゃわない? それってダメだよね?


「ノスフェラトゥさん、少し黙ってようか」

「はっ! ……何故に?」

「ヴァイトリさん、隷属化については僕が何とかできると思います。それ以外の作戦について教えてもらってもいいですか?」


 ノスフェラトゥさんはもうスルーでいいよね?


「作戦は簡単だの。砦町に潜入し、同胞を連れ去る。これだけだの」

「んん? えと…どうやって潜入するんですか? 連れ去るって同胞の人たちは『奴隷の首輪』の効果で逃げられないんじゃないですか? よしんば逃げられたとして、どこへ連れて来るんですか? しかもこの少人数で」


 何か考えがあるんだろうか。それにしちゃ、作戦は簡単だと言ってるけど、隷属化されてる人を逃がすのって難しいはずなんだけど。


「少人数だからいいんだの。冒険者のフリをすれば町には簡単に入れるからの。後は見つけた同胞を片っ端から連れ去ればいいんだの」

「『奴隷の首輪』を填められてる人って逃げるなって命令されてるんだよね?」

「うむ、初めは気絶させて運ぼうかとなってたのだがの、この御仁がその場で契約を塗り替えられると言うので塗り替えてから一緒に脱出する事になったのだの」


 ザルというか穴だらけというか、行き当たりバッタリの作戦だよ! 出る時はどうするのさ!


「えと…何人ぐらい解放するんだっけ」

「だいたい百人ぐらいかの」

「その作戦で全員を助けるつもりだったの?」

「そうだの。できるだろ」


 できねーよ! 無理すぎるわ!


「脱出に関しては、余の手勢で砦町を襲撃して注意を逸らしてる間に脱出するという完璧な計画を立てていたのである」

「そして、ここまで連れて来れば彼奴らも手出しできんでの。この洞窟の中は天然の迷路だでの」


 手勢? 確かにここまで逃げ出せば何とかなるかもしれないけど、ここに来るまでが大変なんだよ。

 ノスフェラトゥさんの手勢って…まさか……


「ノスフェラトゥの手勢って……」

「ふむ、余がトップになる前までトップを務めていた者達だ。その下僕なども含めてそれなりに数がおりますぞ」

「数がおりますぞって……その人達って夜しか……」


 他の人がノスフェラトゥさんの正体を知っているかも怪しいのでボカしてみた。


「今回は昼でも問題無い者を集めましたぞ! 数は減ったが逆に実力者揃い。なんなら砦を滅ぼして見せますぞ!」


 それって……いいの? 戦争にならない? 戦争も何も、奴隷にするぐらいなんだから既に敵か。

 いいの…かな?


「それで、いつ決行なんですか? もう少し作戦を煮詰めた方がいいというか、相手の情報が欲しいというか」

「この後すぐに決行します。私が合流すれば手が足りるという事でしたので」

「えっ!?」


 えーと……ヴェルさん? 今何と? このあとすぐに出発?

 いやいやいやいや、それはヴェルさんが援軍を連れて来ればって事じゃん! 結局連れて来れたのは僕だけだよ? 全然手が足りてないじゃん! 無茶にも程があるって!


「それって、無謀にもほどがあるというか……」

「ほれ、行くぞAランクの小僧っこよ」

「キズナ様、余の活躍をしかとご覧じろ」

「キズナ様は後ろから付いて来て下さいね」

「私は入り口の近くでコガネマルといるのにゃー!」


 ノスフェラトゥさんを先頭に、ヴァイトリさんやヴェルさんが続いて出て行く。

 他の獣人さんも続き、僕とトゥーラが最後だ。


 いやいやいやいや、これはダメでしょ! こんな計画とも言えない計画に参加したら、こっちは全滅確実じゃん! 下手したら奴隷にされてる人達もとばっちりを受けて罰を受けるかもしれないじゃん!

 これは何か考えないと。うん、僕が考えないと。こんな脳筋と呼ぶのもおこがましい人達の作戦には乗れないよ! っていうか、誰が考えたの? 本当に話し合いした? 力技でもここまでにはならないよ?


 一応の作戦は聞いた。 

 纏めると、先にここにいる七人(ヴェルさん、僕、ヴァイトリさんを含む獣人さんが四人とノスフェラトゥさん)で砦町に入る。

 僕達が町に入るのを確認したらノスフェラトゥさんの部下達が砦町に襲撃をかける。(何人いるかは聞いてないけど精鋭らしい。現在の自分達の状況を考えると人数的なところは期待できないかもしれない)


 だって、百人の人達を七人で救出できると考えてる計算脳が既に終わってるじゃん!

 脱出先の洞窟は百人でも収容できるかもしれないけど、そこに辿り着くまでの人数の計算ができてないって!

 ダメだ、ここは僕がやらなきゃ。

 先に相手の情報を知りたかったんだけどな。本当に敵対していい相手なのか、一応の確認はしたかったんだよ。

 奴隷にしてるってだけで獣人からは敵認定なんだけど、そこに至るまでの経緯ってのが知りたかったんだよ。

 僕が習った内容だと、人間が勝手に獣人を虐待し始めて、虐殺や奴隷化をしたと大まかな内容は知ってるんだけど、実際の生の声が聞きたかったんだけどな。


 身体能力は獣人の方が上の場合が多いけど、種族間の連携が薄いから各部族単位での抵抗になるから、集団行動で来る人間には負けてしまうんだよ。人間の魔法は多岐に渡るしね。

 その点、獣人は得意分野には強いけど、弱点を突かれると脆いからな。知恵で分があるのも人間だしね。今回の作戦で全容が掴めた気がしないでもない。


 ヴァイトリさん達は全員犬獣人だけど、トゥーラはネコ……虎獣人って事は、囚われて奴隷にされてる獣人は幾種類かいるのかもね。

 ね、情報が無いよね。誰を救うのかも予想しないといけないって、こんなの初めから詰んでるよね。

 だけど、負けたくないから、負けないように僕も出来る限りの事はする。知恵も搾り出す。

 時間は無いけど、僕には友達も多いから何とかなる…はず!



 洞窟を出るとコガネマルが待っていた。

 コガネマルとトゥーラ組はここで待機、周辺を警戒しながら洞窟入り口を死守する役割みたいだ。

 残りの七人は砦町へと向かう。僕は最後尾だ。

 今しかチャンスは無いと思い、クロスオーバーを小声で使った。目立たないように後ろに向かってゲートを出す。


「【クロスオーバー】キラリ!」

「キズナ様ー!」


 嬉しそうに現れたキラリちゃんにお願いをする。


「キラリちゃん、あまり時間が無いからよく聞いてよ」

「うん、なになに? 面白い事?」

「面白くは無いかな。今から砦の中に囚われている人達を助けに行くんだ。百人ぐらいいるらしいから沢山手伝ってくれる人がいるんだ。その人達は『奴隷の首輪』で縛られてるみたいだから思うように動けないだろうし、砦には沢山の敵兵もいるから見つからないようにしたいんだよ」


 前を歩くヴェルさん達には聞こえないように話した。

 キラリちゃんの言葉はここにいる人には聞こえないけど、僕の声は聞こえるからね。

 ヴェルさんは風系の妖精の声が聞こえるみたいなんで、今回はピッピではなくキラリちゃんを喚んだんだ。


「わかったー! たくさん応援がいるのね! 見えないように妖精や精霊の応援がいいわね。隷属契約されてるんなら、カゲールのお父さんお母さんも必要かな? あとは来たい人を喚んじゃえばいいかな?」


 闇系のカゲールくんのお父さんとお母さんか。来てくれるんなら解呪の時間も早く済む。それは助かるな。

 でも、来たい人を喚ぶ? そんなんじゃ、何人も来てくれないんじゃない? たしかに友達は多いと自分でも思ってるけど、人望とか人気があるのかどうか自分では分からないし、十人とかだと足りないんだよ?


「じゃあ、ここのゲートは開けておいてね。そうね、三〇分も開けたままにしてくれれば連れて来るから」

「開けたまま? それはできるけど、来てもらうには僕が喚ばないとダメだけど」

「オート機能にしとけばいいのよ。キズナ様の代わりに私が選定するから、私を代理人にすればいいわ!」


 オート機能? 代理人? そんな機能は知らないんだけど。なんで君達は僕よりスキル【クロスオーバー】に詳しいの? ねぇ、どうして?


 問い詰めたいところではあるけれど、大きな声を出すとバレてしまう。

 前から思ってたんだけど、なんでここまで【クロスオーバー】を隠してるんだろうかと思わなくも無い。

 だけど、今回は妖精フェチのヴェルさんがいる。色々とややこしい事になりそうだから黙ってることにした。

 洞窟の中ではそれどころじゃなかったし時間も無かった。まだノスフェラトゥさんにも教えてないから尚の事ややこしくなりそうだ。言わなくて正解だったよ。


 【クロスオーバー】のゲートをそのままにして、一行の最後尾を付いて行った。

 洞窟から三〇分ちょっと、砦が見えて来た。近すぎず遠すぎず、逃げるにはいい距離かもしれない。


「あれが砦町だの。Aランクの小僧っこは初めてかの?」


 ノスフェラトゥさんと先頭を歩くヴァイトリさんが教えてくれた。

 この世界は何処も初めてだから素直に答えるしかない。

 入門に関しては、他所より少し厳しいが、基本は冒険者カードを提示すれば入れる。手荷物検査が厳しいようだ。特に武器とアイテムには厳しく検査されるみたい。

 よし! ここはようやく『スラ五郎』を自慢できるかもしれない! 今まで棒だ棒だとバカにされ続けて来たが、兵士が多いのなら分かってくれるだろう。


「キズナ様ー! 先に行ってるよー!」

「キズナ様! お久し振りです!」

「キズナ様! 事情は聞いたよ! 僕に任せてね!」

「キズナ様ー! 解放だよねー!」

「我にお任せあれ!」

「お久し振りでございますわね! 手紙をお持ちしましたわ!」

「キズナ様ー!」

「キズナ様!」

「キズナ様!」

 ………………

 …………

 ……


 何人もの『クロスオーバー』の友達が僕の肩を叩いて追い抜いて行く。

 妖精だけじゃなく精霊も混じってる。さっき手紙を渡してくれたのって、カゲールくんのお母さんのお母さんじゃない? あの人って上位精霊じゃなかったか?

 おいおい! キラリちゃん! いったい何人喚んだんだよ! しかも精霊も何人もいるし、中には中位や上位まで! 僕の経験値が無くなっちゃうじゃん! またレベルが下がっちゃうよ!


 ざっと見た限り、妖精だけで百はいそうだ。


 ドゴーーーーーン!!!!

 ドガーーーーーン!!!!

 ズガーーーーーン!!!!

 ボゴーーーーーン!!!!


 僕達が砦町に入る前に爆音が響いた。


「始めたようだの。少し早くは無いかの」

「ふむ、余はここまで派手にやれとは言っておらんのだが。それに少し早い。余たちが町に入ってからという算段だったが」


 爆音自体は予定通りのようだ。陽動の意味での砦攻撃、その間の救出作戦。

 だけど、攻撃の規模が予想していたよりも大きかったようだ。


「そうだの。この砦の防壁には耐衝撃や耐魔法が掛けられておるから、少々の事ではここまで音が響かんはずだがの」


 だそうだ。


「キズナ様ー!」

「あ、キラリちゃん! あんなに喚んじゃったら僕のレベルが! ……あ……」


 ここには皆がいたんだ。事情を知らないと、僕が痛い子に見えちゃうぞ。


「キズナ様? 妖精様がいらっしゃるのですか?」


 事情を知ってる人がいた。ヴェルさんだ。


「はい、少し手伝ってもらおうと思って」

「先ほどから、私の契約妖精が怯えているのですが、その子のせいでしょうか」

「ソウデスネ」


 キラリちゃん自信に怯えてるわけじゃないと思うけど、怯えの原因となってる精霊を喚んだのはキラリちゃんだから、キラリちゃんのせいで間違いはないと思う、うん。


「みんな来たでしょ? 事情も話したからすぐに終わるわよ! 向こうでもムルムルさんたちも手伝ってくれてるから!」

「ムルムルさんも? 達って?」

「向こうで頑張ってるよ! 私はこっちを手伝ってくるねー!」

「え? ちょちょっと! いったい何人喚んだんだよ!」


 周りでは砦兵達が「塀が崩れた! 応援に行け!」「敵襲だ! 戦闘体勢!」「助けてくれー!」「緊急事態だ! 門を閉めるが、閉め切るまでに入れる者は入ってよし!」「敵襲! 敵襲!」「穴を塞げー!」「撤退だ! 無理だ! 逃げろー!」「魔法兵! 魔法兵! 走れー!」「盾兵! こっちだー!」「グリフォンだー! 弩弓用意!」「逃げろー!」「逃げるな! 守れ!」


 もうてんやわんやの大騒ぎとなり、僕達一行はなし崩し的に町へと入った。

 これは予定通りなのだろうか。これだけ戦闘体勢を組まれると、囚われている獣人を助けたとしてもここから出られないんだけど。


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