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第59話 ブラックラピリカさん


「価格が決まりました」


 作業員への指示を終え、査定を終えたラピリカさんが大男の獣人と共に戻って来た。


「白金貨三〇枚。そうでしたね」

「はい! お嬢のおっしゃる通りでございますです! 勉強させて頂きましたです!」


 白金貨二〇枚は下らないとメメジーさんも言ってたけど、三〇枚って増えすぎだよね。

 大男の獣人さんの態度もおかしいし勉強したとも言っている。ラピリカさんが何かやったのかな?


「予想より多い金額でしたね。ところでラピリカさん、その隣の方は知り合いなんですか?」

「はい、頑張りましたから。この大男の事は気にしないでください」


 買い取り金額が多かったのはラピリカさんが頑張ってくれた結果なんだね。

 ドヤ顔してるのもちょっとどうかと思うけど、隣の人を紹介して欲しいんだけど。きっと迷惑をかけてると思うからさ。


「お嬢、そんな事言わずに紹介してください」

「もう二度と会う事も無いでしょうし、紹介などいらないでしょう」

「そんな事は…無いよな? お前ら冒険者だろ? だったら解体主任の俺とは今後も付き合うはずだ。デスマントールって名前を覚えておいた方が得だぜ」

「あなたの名前などどうでもいいのです。キズナ様は解体も素晴らしい腕前なのですから」


 デスマントールって解体作業主任が、僕達に自分の有用性を売り込んで来たのにラピリカさんに一蹴された。

 僕の解体技術をラピリカさんが褒めてくれたけど、本職の前で褒めるほど素晴らしくは無いと思いますよ? 普通でよければ解体できますが。

だけど、ここの人達よりは早く上手はでき…そうみたいです。

 でも、お嬢って呼ぶのってメメジーさんもだよね。昔からの知り合いなのかな?


「じゃあ、なんで地龍を持ち込んで来たんだよ。解体が上手いんならこいつにやらせれば……いいんじゃないでございますかです!」


 途中でラピリカさんからの殺気ある視線に気付き、言葉使いが変になるデスマントールさん。


「今回は時間が無かったことと、あなた達の腕を見る事。それと、買い取り査定額がどうとでもなる事。この三点でそのまま持ち込むことに決めたのです。何か異存がありますか?」

「いえ! ありません! です!」

「それに、この町だとすぐに素材を欲しがる輩が多くいますよね。ランガンの町からだと輸送費も追加されるから割高になってしまいます。この町で売る方がいいに決まってますから」

「お嬢……ありがとうごぜえますだ、です」


 もう言葉が分からなくなってるね。グチャグチャだよ。

 買い取り金をこの場で受け取り、一人白金貨六枚ずつに分けた。メメジーさんの分はラピリカさんに後で渡してもらうようにした。

 分配金をもらったらヴェルさんはもう用が無い。ここで、二人とはお別れだ。

 当初の予定通り、ヴェルさんとトゥーラは別行動となった。

 僕は例の如く、ラピリカさんにマスタールームへと連れて行かれた。



「お久し振りです、ブラックスミスさん」

「おーラピリカ、久し振りだな。下でトールを苛めてたと聞いたが、地龍を持ち込んだだと? 腕は鈍ってないって事か。何人で組んだ。犠牲は?」


 偉そうに話す人がこの町の冒険者ギルドのギルマスだな。ブラックスミスさんって言うんだな。

 どう見てもドワーフだよね? 背も僕より少し低いけど、幅は僕の三人分ぐらいあるし、髭ボーボーだもん。これでドワーフじゃないって言われる方が驚きだ。


「誰も犠牲になんてなっていませんよ。怪我人も無し。途中の盗賊団も壊滅させて、地龍も討伐。これで、この冒険者ギルドでの憂いは消えたのでは無いですか?」

「ぎ、犠牲者ゼロ……怪我人も無しだと? ラピリカが嘘を言う必要も無いとは思うが、本当なのか。片手間のように盗賊団の壊滅というのも聞こえたようだが」

「はい! すべてうちのホープであるキズナ様の活躍です!」


 ラピリカさんの報告を信じられないとばかりに狼狽えるブラックスミスさんに対して、ドヤ顔のラピリカさん。

 さっきもだけど、なんでラピリカさんがドヤ顔になるんだろうね。


「確認も終えてるのだな」

「はい、ブラックスミスさん」

「……さっきから他人行儀な呼び方だな。下でもそうしてたのか?」

「解体作業主任の大男ですね。あの大きさでネコの獣人というのも笑えますが」


 こっちがネコだったか! ネコ科の大型獣の獣人だと思ってたよ。

 コガネマルが大型獣でデスマントールさんがネコだったのな。『クロスオーバー』では見かけない成長だよ。この世界って意外と難しい。


「おいおい、昔の仲間に辛辣すぎるだろ。そんな話し方をするって事は、何かあるんだな?」

「さすがはブラックスミスさん、話が早くて助かります」

「わかったから、その呼び方を辞めてくれ! むず痒くなってくるから今まで通りに呼んでくれ。大概の事は聞いてやるから!」

「……仕方ありません。では『鉄槌の赤鬼』と」

「それはもっと辞めろ! だいたいお嬢が俺をそんな呼び名で呼んだ事なんて無いだろ! スミーでいいじゃないか!」


 ラピリカさんの黒い部分が出まくってるよ。でも『鉄槌の赤鬼』か。ドワーフだから鉄槌は分かるんだけど、赤鬼が分からないね。

 黒髪だし、肌の色は日焼けというか窯焼けで色黒に近いと思うけど。


「ちょっと酒場で暴れただけだろ!」

「ちょっと? ですか。酒場を何度半壊させたと思ってるんですか」

「まぁ、なんだ。若気の至りってやつだ」


 酒場で暴れるって事は、酔って顔が赤かったという意味で赤鬼? だろうね。

 そんな人でもギルドマスターになれるんだね。


「そんな事より頼みがあるんだろ? 俺の黒歴史はさっさと忘れて、それだけ言ってくれればいいんだよ」

「はい、スミーさん」


 普段通りの呼び方に変えたからか、ギルマスの顔から安堵感が見えた。

 これはラピリカさんの交渉術なんですかね? そうだとしたら、僕の先生たちより黒いかもしれない。


「こちらのキズナ様ですが、うちのホープなんです」

「それはさっきも聞いたな」

「現在はBランクなんですが、まだ冒険者に登録して三ヶ月も経っていないのに既にBランクなのです。実績としては申し分なく…いえ、評価としては不足ではありましたが、登録期間や年齢を考慮すると致し方ない部分もありました。しかも、キズナ様は薬草やポーションの知識に関しても博識なのです。スカウト能力も高く、教え方も教官以上。最高の人材なのです」


 なんだろ。褒められまくるって、こんなに居心地が悪いもんなんだね。

 母さんにはこれぐらい普通に褒められてたけど、他人からだと凄く恥かしいよ。


「そこの赤い顔した坊主がか?」

「はい、そんな純情なキズナ様も魅力的だと思いませんか?」

「俺は男には興味ないからな。だが、可愛いとは思うぞ」

「当然です、キズナ様なのですから。そんなキズナ様を実績通りのランクにと思っているのです」

「なんだ、俺が推薦枠に連名すればいいんだな? だったら、こんなまどろっこしい事などせずに、普通にお嬢が推薦すれば連名してやったぞ?」

「……」


 えーと……ラピリカさんが無言になってるけど、やりすぎたって反省でもしてるのかな?


「……エスです」

「ん?」

「……Sランクの推薦だとしても連名してくれましたか?」

「Sだと!? この坊主がか!?」


 ここまでの話と勉強で習った事を合わせると、Bランクから上のランクに上がる際には実績だけじゃなく、ギルマスの推薦がいるはずだ。

 しかも、Aランクの上のSランクともなると、何人もの推薦が必要だったはずだ。

 それに推薦したギルマスも、ランクを上げた冒険者が何か違反をした場合は連帯責任とまでは行かないまでも、何らかのペナルティはあったはずだ。減俸とか。


「当然です、うちのホープなのですから」


 何が当然なのかは分からないけど、自信満々で言い切るラピリカさん。


「ちょっと坊主、お前の冒険者カードを見せてくれるか」

「え……」


 それって討伐履歴を確認するって事だよね? 結構ヤバいと思うんだよ。討伐した種類や数が履歴として残ってるんだから。

 ラピリカさんを見ると、爛々とした瞳でウズウズしてるし、スミーさんと言われたギルマスは早く出せと手を出してくるし。

 答えは分かってるよ。逆らえないって事だね。


 渋々冒険者カードをスミーさんに渡すと、スミーさんは自分の机に戻り、冒険者カードを魔道具にセットして魔道具に一体となってる水晶玉を覗き込む。

 冒険者カードには近々の履歴は見れるんだけど、二〇項目までしか見れない。

 討伐した種類が同じであれば数が累積されて行くけど、間に別の種類が入れば次項目となるので、項目数が増えて行く。

 前回の『初心者の森』で行なった【結界殲滅陣】では時系列があまり変わらなかったので累積になってたみたいだけど、種類は結構なものだった。

 累積された数字も相当なものだったけどね。

 で、今回は、一番最新の履歴が地龍だ。隠し様が無い。しかも、魔道具を使っての過去履歴の数々を確認されれば、この世界でやって来た事が丸裸にされてしまう。


「はぁ~!? 最深階層が一〇二だぁ~?」


 あ、そういうのも出ちゃうんだった。


「なんなんだ! この討伐数と魔物ランクはよー! こんなのSランクでもパーティレベル…いや複合パーティレベルだろ!」

「それ以上だと認識しています」

「それ以上~!? それは言いすぎ……でもないのか? お嬢……ひとつ聞いていいか」

「はい、なんなりと」

「この小僧…いや、キズナがこの戦績を収めるにあたり、被害者は何人だ」

「ゼロです」

「!!!!」

「誰一人、怪我人も含め死者は出ていません。あ、怪我はしていませんが装備が全壊した者は一人いましたが」


 それってハーゲィさんの事だよね? 【結界殲滅陣】の只中にいたんだから上級な装備でも耐えられなかったと思うよ。あれが聖属性じゃなかったらと思うと、今更ながらゾッとするよ。


「わかった。ではあと一人の推薦人だな。それと後見人か」

「それについては手配済みです。フロントラインのギルマス、ビリーさんにお願いして来ました。地龍の件をハッキリさせればいいという条件で先に署名をもらっています。地龍は討伐されたのですから何も問題ありません。後見人はメメジー様です」


 いつの間にそんな交渉までしてたんだろ。フロントラインのマスタールームではそんな話までしなかったと思うんだけど。

 夕食に呼ばれてたみたいだから、その時に話したのかもね。


「いつもながら手回しがいいな。後見人があのジジィって、よくあの偏屈が後見人になったもんだな」

「メメジー様はキズナ様のお弟子さんですから」

「弟子だとー!?」

「はい、これは周知の事実ですし、メメジー様からの押しかけ弟子でもあるのです。ですから、メメジー様の許可を頂かなくともキズナ様の後見人欄に署名するのはメメジー様にとっては誉れでもありますから」


 という事は、メメジーさんの許可は取ってないんだね。


「一応、メメジー様には許可を取っていますので、ご安心ください」


 取ってんのかよ! だったら疑わしい言い方しなくていいよね!


「分かった。この実績に文句は無いし、そこまで根回ししてるんなら後のフォローも問題ないか。俺も署名に応じよう」


 えーと…僕としては一つぐらい意見を聞いて頂きたいところではあるんですが、勝手に進む感じなんですね。

 Sランクですか……面倒事が多そうだね、っていうか、Sランク!? 誰の話を……って僕しかいないよね!

それは僕も望む所なのでいいんだけど、そんなに簡単にSランクになれるもんなの!?


「あー、一応聞いとくが、キズナのレベルはいくつなんだ?」

「「……」」


 レベル一〇〇〇超えって聞いてるんだけど、言っちゃってもいいのかな?


「三……いえ、五…ぐらい、ですか?」

「何言ってるんだお嬢。お前さんが得意のやつだろ、レベル鑑定は。それに、何故俺に聞く! 俺が知るわけないだろ」


 そういやそうだった。ラピリカさんにレベル診断してもらった水晶玉では、ちょびっとしかバーが上がってなかったんだっけ。

 あれの意味も分からないけど、その後友達にレベル七〇〇以上はあるって言われてるし、その後も地龍を倒してるんだ、レベル一〇〇〇は行ってると思うんだよね。ちょっと希望的観測も入ってるけどさ。


―――実際の現在のキズナのレベルは二〇三四、HPを含めたステータス値は八桁超え、MPに至っては十一桁に届きそうになっていた。

 既にこの世界の生物でキズナに敵う者はいなかった。

 だが、キズナにその事を知る術は無く、見た目が幼く手加減が異常に上手いキズナでは自覚も難しかった。

 因みにダンジョン最下層に潜んでいたボスは、キズナの最終の教師でもあり、ステータスだけなら現在のキズナと対等であった。それは彼の者がこの世界の住民ではないのだから。


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